第58話 はいぃぃ!?
王城を出た俺たちはギルドに向かっていた。
テツたちだが、王城から出てくるのを見られていたかもしれないのと服装が珍しいから貴族と思われてはいけないため、すぐに服装を変えるために服屋により服を変えさせた。
着ていた服だが、俺が次元収納でテツたちの服を保管している。
「少しいいですか、グレンさん」
「なんだ、エセ神父」
「なんですか? エセ神父とは?」
「テツの記憶の中にあった」
テツの記憶を見た時にテツの名前以外の記憶も見えた時に知った言葉の一つが『エセ神父』こいつに対してだけよく活躍してくれる言葉だと思う。
「そうですか。 え〜っと、グレンさんは勇者様方を連れてきましたが、召喚の間に勇者がいないのがわかれば一大事ですよ」
「大丈夫だろ。 あそこに置き手紙を残してきた。 『勇者を預かる。 二月後に戻る、それまで勇者お披露目はなしだ』ってな」
「ハハッ、それはまた国王陛下が大変ですね」
「まあな」
後ろで真新しい服と珍しい街並みに目を奪われているテツたちに小さな笑みを浮かべながら俺たちはギルドを目指して歩いていた。
♦︎
しばらくしてギルドに着くと俺はテツたちを先頭にギルドの中に入れた。
カランカランとドアを開いた時に鳴る音とともに中にいた屈強な冒険者たちがギロっとこちらを見てきた。
多分俺たちが入らなかったらカモにでもされていただろうが、俺とアリシアが後ろに続いているのを見て全員一気に目を逸らした。
「びびられたな、俺たち」
「仕方がないけどね。 私たち有名人だし」
俺とアリシアは二人で小さく笑い合いながらそう言い、一度身構えていたテツたちは冒険者たちがいきなり顔を逸らしたことに対して首を傾げていた。 『聖者』だが、こいつは完全に呆れていた。
俺はアリシアと話すのをやめ、立ち尽くしているテツたちを置いてギルドの中へと入っていった。
テツとすれ違う時にテツの肩を叩いて、ついてこいと右手で合図したことでついてきた。
「身構えすぎだ。 まぁ、俺たちが先に入った方が良かったかもしれねえけど」
顔を少しだけ後ろを振り返って俺はテツたちに向かってそう言った。
そのあと俺たちはギルドの奥にある冒険者登録所に来た。
「お前ら今から冒険者な」
「「「は、はぁ」」」
三人ともいきなりそう言われて不思議そうな顔でそう返事した。
「? どうしたんだ?」
「いえ、冒険者ギルドに来たら登録以外何があるのかな? と思っただけです」
「あー、そうか、それもそうだよな」
俺は少し小恥ずかしくなり、小さく頭をかいた。
その後、テツたちの冒険者登録の手伝いとして『聖者』を残して俺とアリシアは冒険者登録所の近くにあるクエスト依頼所に少し用を済ませに来た。
「『賢者』様、『剣姫』様、どのような依頼でございますか?」
「あー、あそこにいる今、冒険者登録している奴らな。 そいつらのために依頼を出したいんだ」
受付にいた人はなぜ俺たちがあの三人組を? といったように首を傾げていた。
この受付に実はあの三人は勇者です。 と言っても、は?と言われて終わりだろう。 もしくは、俺の頭がおかしくなったと心配されるかだが。
「で、だ。 依頼内容だが、俺たちがあの三人を鍛えるという依頼だ」
「はいぃぃ!?」
ガタッと座っていた椅子から立ち上がり俺の目を真っ直ぐ見据えた。
「『賢者』様! それは何がなんでもあり得ません! 不特定の相手ならまだしも、特定の相手を贔屓する事はダメです!」
「はぁぁ、どうしてだよ」
またどうせ、面倒な事だろうなと思いながらも受付に聞き返した。
「特定の相手を贔屓する、それは、贔屓している相手は他の冒険者からの反感を買います」
「へぇ〜、それはいいな。 じゃあ、これで依頼を出してくれ」
そう言って俺は金貨二枚を腰下げ用のポーチの中から金貨を二枚取り出した。
ただ、稽古をつけてやるというだけで達成報酬が金貨二枚、冒険者にとっては危ない冒険に出なくても安全にかつ良い生活を送れるほどの金額だ。 まぁ、ただ単にあの三人のための出費も込めた金貨二枚だから最終的には俺の懐に帰ってくるんだけどな。
「どうした? 早く依頼を作ってくれよ?」
「は、はいぃ!」
俺から金貨二枚を受け取った受付は裏に消えて行き、ちょうど三人の登録が済んだ時に受付は戻ってきた。
「依頼は依頼ボードに貼っておきます」
「いや、いい。 俺が貰う、どうせあの三人と一緒に行動するんだからな」
「は、はぁ」
もう驚かなくなった受付を後にしてテツたちの元に向かった。 最後に「修練場借りる」と一言付け加えて。
テツたちはできたばかりの木のギルドカードを見ながら談笑していた。
テツたちの三人を見ていると五十年前に俺たちが初めて冒険者登録をした時を思い出す。
まぁ、今は全く関係ない事なんだけどね。
「うし、冒険者登録できたみたいだな。 おめでとう、テツ、友希、一郎」
「へへ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう」
三者一様ではあったけど、三人とも嬉しがっているのは間違っていないと思う。
俺はその三人の頭を撫でた。
「それじゃあ、次は依頼だな。 で、これが最初の依頼な」
「あぁ、さっき受付の人が叫んでたやつね」
「あぁ、そうだな。 じゃあ、内容も知ってるな、着いてこい」
俺は地下へと続く階段を先導しながら降りていった。
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