第44話 本当にグレンなの?
俺たちは、その日ゼァーラの冒険者ギルドに泊まった。
森の方は、
早くミルドのところに行って、変化系の魔道具を作ってもらわないといけないな。
「いつもは俺の方が後に起きるのになぁ」
隣で寝ているロゼの頭を撫でならがら、ポツリとそう呟いた。
「俺とお前の間にパスがあるからな。 あの空間であったことでも夢に出てきたんじゃねぇかな」
頭を撫でながらそうしていると、突然ロゼがパチッと目を開けた。
「お、おはよう。 ロゼ」
「おはよう、コンちゃん。 で、何しているの?」
「頭を撫でてる」
ふ〜ん、といった様子で起き上がると周りを見渡し始めた。
「ここどこ?」
「冒険者ギルドだ」
そう言うと、寝ているところから降りた。
「用事は済んだんだよね?」
「まぁ一応な」
ポリポリと頬を掻いた。
用事って言っても俺の用は、俺自身の体を探しに来たわけだが俺の体はカルディに使われているため、今取り返すことも出来ない。
「それじゃあ、戻ろうよ。 アリシアさんにアオイも帰ってきていると思うよ?」
「そう、だな」
俺がそう頷いたところで、扉をノックされる音が部屋に響いた。
「話は聞かせてもらいましたよ」
「アカギ……」
扉の前にはアカギが立っていた。
話を聞いていた、と言ったが、いつから聞いていたんだ?
「ミルドさんに会いにいくのでしたら、送っていきますよ?」
「いきなりだな。 一体、どういう風の吹きまわしだ?」
「いえ、ただ武器の調整に行くついでですよ」
アカギはそう言うと、手に持っていた魔道具を使ってゲートを開いていた。
「どうです? 一緒に行きませんか?」
「わかった、付いて行こう」
俺とロゼは、アカギが開いたゲートをくぐった。
くぐった先にあったのは、ミルドの工房が立ち並らんでいる風景だった。
「嫌〜だ! 俺はグレンを探しに行くんだ! は〜な〜せ〜!」
「離すわけないわよ。 あんたは、グレンが帰ってくるのを待つ側なんだから」
ゲートからアカギが出てきてすぐに、子供染みた言い分と聴き馴染んだ声が聞こえた。
俺は、頭を抱えたくなる衝動を抑えながら、目の前に来た男女二人にこう言った。
「何したんだよお前らは」
「「誰? あんたは」」
俺の姿を見た二人の感想がこれだ。
見たことない姿だとしても、結構わかりやすいはずなんだけどな〜。
「俺だよ、俺。 グレン・マーカー。 または、コンちゃんだ」
「はぁ? 何言ってんのよ? グレンは今、九尾の妖狐になっているはずよ」
「ちょっと待て、アリシア。 グレンが九尾の妖狐だって? おかしいだろ、グレンは人間だぞ? 魔物なわけないだろ」
たしかにそうだけども、アリシアも今の俺のことを教えておいて欲しいんだけどな。
「おはようございます、アリシアさん。 この方はどちら様ですか?」
「「ミルドだよ」」
俺とアリシアの声が綺麗にハモった。
この冴えない緑色の髪をした青年がミルド、この国で一番すごい鍛治師だ。
背はアリシアと同じぐらいの背をしている。
「え!? ミルドさんってお爺さんのイメージがあったんだけど……」
「それよりも、こいつがグレンなわけないだろ!?」
ミルドは俺を指を指しながらミルドが叫び散らしていた。
「うるさい!」
ゴチン! と、ミルドの脳天に拳が突き刺さった。
「たくっ、相変わらずだなお前は。 アリシアに逆らったらどうなるかってお前が一番わかってるはずなのにな」
ほれほれと、ミルドの頬を人差し指でグリグリとしているが、嫌がっている様子がなかった。
ん? いつもならやめろって言って俺の指を折りに来てたのに今回は、顔をそらすようにしていた。
「ねぇ、ロゼ。 あれが本当にグレンなの?」
「え、はい。 コンちゃんです」
「えー、本当に本物のグレンなの? 異常なまでの破壊力を有しているんだけどね」
外野が少しうるさいが気にせずにグリグリしているとミルドが俺の手を包み込むように握ってきた。
「お嬢さん、あまり大人をいじめないでください」
「な、何が大人だ! ふざけてんじゃねぇよ!」
握られた手を俺の方に引きつけて、膝蹴りを顔面に当てた。
「あー、スッゲーイライラしたー」
「あ、これはグレンで間違い無いわね。 あんなに綺麗に膝蹴りができるものじゃ無いからね」
「お前もうるさい! 人を見てバカにしないといけないのかな!?」
俺はミルドにお嬢さん扱いをされて怒ってしまっていた。 ただ、俺の膝蹴りは妖狐になる前に比べると全くダメージが入っていないだろうけど……。
「イッテェ! 何してくれたんだよ! お前、グレンだな! グレンみたいな膝蹴りをぶちかましてくるやつはお前ぐらいしかいないからな」
ハハハと笑っているが、グレンみたいな膝蹴りという意味がわからない。 昔は俺たちの方が頭悪かったのに今じゃあこいつの方が頭おかしいように感じるのは気のせいでは無いだろうな。
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