呪われた狐は少女と共に〜賢者と呼ばれた俺は少女の従魔です〜

第41話 助太刀に来ただけだ！

アンデットたちと戦闘を始めてかなりの時間が経った。

アンデットの数はかなり減らせたが、新しいアンデットが数体。 しかも、新たなアンデットはデュラハンとレイスの二種類だけだった。

「クソ、面倒なやつばっか増やしやがって」

デュラハンたちにだんだんと追い詰められて行き、背中にトンと何かとぶつかるような感覚があった。

「ロゼか。 そっちはどうだ？」

「この短剣のお陰でギリギリ耐えられているって感じかな」

「そうか。 だったら、かわるか？」

ニヤッと不敵な笑みをうかべながらロゼにそう言った。

「いいの？」

「あぁ、いいぜ。 もう一個の短剣を使うけどな」

「じゃ、じゃあ、お願い！」

「おう。 デュラハン相手には魔法を使ってもいいからな」

そう言って俺は、レイスたちの目の前に出た。

「さあ、勝負だ。 どっちが強いか見せてやる」

収納袋から紫色の刃をした短剣を二本、先ほどの短剣と入れ替えるように取り出した。

この短剣は、レイスなどの実体のない存在によく効く効果が付与されている。

俺は、レイスの攻撃を短剣で受け流しながらレイスに少しずつ攻撃を与えていった。

短剣には、『魔力吸収』も付与されているため、レイスに攻撃を与えるほど魔力が回復していった。

その度、ロゼが使用した魔力を俺が吸収した魔力で補うようにどんどん魔力がロゼに渡って行く。

いつもは俺がロゼの魔力を持って行くが、今回は逆になっている。

さらにレイスに一撃、二撃とダメージを与えレイスを倒した。

「ふぅ、まずは一体。 さぁ、次はどいつだ？」

カチャリと、短剣を少し持ち上げたことで音が鳴ったことで、レイスたちへ少しだけ挑発になった。

「ヒュオオオオオ！！」

「お次は三体同時か」

一体目のレイスの攻撃を飛びながらの回転でかわしながら三体同時に綺麗にダメージを与えた。

「よし！ 一回目で決まった！」

レイスたちが怯んだところをさらに一撃、二撃と決めた。

くっそー、アリシアだったら、この程度の相手一撃でここにいるレイスどもを一掃できるのになぁ。

勝手に一人で悲観していると、後方から何かが風を切る音が聞こえた。

「んっ！ あっぶねぇ、なんでいきなり大剣が……チッ、冒険者か！」

大剣が少し頬に擦り、ロゼが対峙していたデュラハンに刺さった。

しかも、大剣を投げたのは敵対をしている冒険者たちだった。

「今お前たちとやり合ってる暇はねぇんだよ！」

森の奥から現れた冒険者たちに向かってそう言った。

多分だが、一番先頭にいる二メートルほどの背丈を持つスキンヘッドの屈強な男が大剣を投げたのだろう。

「安心しろ！ 俺たちはお前たちの助太刀に来ただけだ！」

「ッ！？ 本当か！ それなら助かる！」

俺はそう言い、俺はステップ回避をしながら冒険者たちのそばまで来た。

ロゼも、瞬動を使いながらこちらに来た。

「おう、嬢ちゃん二人は本命のところに行け。 ここのギルドマスターを助けてくれたお礼みたいなもんだ」

「ギルドマスター？ 知らないがわかった！ 助かる」

俺はそう言って、ロゼの手を持ってカルディが消えていった方向へと走っていった。

もちろん、止めろと命令されているアンデットたちは、俺たちの行く手を阻むように立ちふさがった。

「テメェら！ 二人の行く手を止めさせるな！」

「「「おぉお！！」」」

立ちふさがったアンデットたちを俺たちが通りやすいようにアンデットたちの相手になっていた。

それでも、冒険者たちの間を抜けてきたアンデットが数体立ちふさがった。 それを、数本の矢がアンデットに刺さった。

驚いた俺が、後ろを振り返るとそこには、弓を持ったアカギが立っていた。

あんにゃろう。 自分の魔眼のこと知ってたな。 そのついでに俺たちが味方か敵かの確認までもやっていたのかよ。 あいつがギルドマスターで間違い無いだろうな。

そのアカギは手を肩ぐらいまでの位置に持ってきて手を振っていた。

これは、騙してすみません、という意味と頑張ってくださいという意味が込められていそうだな。

俺たちは、アンデットたちの包囲網を抜け、カルディのいる場所へと走っている。

カルディの場所は、ロゼがわかっているため、ロゼの案内で進んでいた。

そして、俺たちはカルディがいる少し開けた場所にきた。

「ここは……」

俺はカルディのいた場所をグルリと一周見渡した。

ここは、カルディと最初に会った場所だった。

「悪趣味なことだな」

『悪趣味ではないと思うのですが？』

「けっ、まぁいい。 来たぞ！ カルディ！」

カルディに向けて短剣を構えた。

だが、俺はカルディを見た途端に震えが止まらなくなってしまった。 これは、いつものことと割り切って、俺は目の前にいるカルディを見据えた。

「大丈夫。 私たちなら勝てるよ」

ロゼに、 ポンと、肩に手を乗せられ少し気持ち的に落ち着けた。

「そうだな。 ありがとう、落ち着けた」

不思議なことに恐怖よりも安心感のほうが勝り、震えが止まっていた。

『ふふっ、面白いですね。 他の者の力を借りてここまで来れたというのにあなたたちなら私に勝てる。 ですか、不快極まりませんね」

カルディからブワッとプレッシャーが襲いかかってきた。