第40話 死者の行進

迷宮に戻ってきた俺たちを待ち受けていたのは重い空気だった。

俺たちはカルディにとてつもない力の差を見せつけられた後なのだから。


「えっと、あの……ありがとうございます。 助けていただいて」

「あ、うん。 そうだな。 こっちこそ悪かった、俺たちの私情に巻き込んでしまって」

「いえ、こちらこそすみません。 魔王軍だとか言ってしまって……」


ん? 魔王軍? あぁ、あの時のことか別に大丈夫だぜ? 俺たちは実際には被害が大きかったってわけじゃなかったから。


赤毛の少年は、アカギというらしく、ロゼよりも少し大きいぐらいの差だった。

しかも、アカギは自覚していないがアカギは魔眼を持っている。 魔眼は、天性的なもので生まれながら所持している特殊な魔力の塊だと思っても良い。


「なぁ、アカギ。 眼に違和感とかないか?」

「いえ、ないですよ?」

「どんな小さいことでも良い、それでもないか?」


俺はアカギにそう聞いた。


「えっと、それでしたら、少々見え過ぎるぐらいですかね?」


見え過ぎる? そうか、千里眼か。 魔道士とかよりも弓師アーチャーのほうが向いているタイプだな。 でもな、こいつの武器を見る限りじゃ生粋の剣士タイプだから、眼の力を完全にコントロール出来ていないってわけだな。


「なぁ、街に戻ったら街にいる冒険者にここを離れろって言ってくれないかな? 多分、人も住めなくなるぐらいの荒地になると思うから……」


俺はアカギを見上げながらそう言うと、アカギは頬を赤く染めながら、「はい」と交代してくれた。


俺はそこで何故頬を染める? と疑問に思ったが、ゴホンとわざとらしく咳をするロゼにアカギとの距離を広げられた。


「お楽しみのところ悪いけど、これからどうするの?」

「こいつを送った後、カルディを倒す! 予定は少し変わったけどこれだけは変わらない」


俺はそう言い、迷宮の外へと歩き出した。


「どうした? 行くぞ」

「はいはい、それじゃあ行こう」


俺たちは迷宮の外へと出てきた。 だが、外に出て待ち受けていたのは誰かに見られている感覚と嵐の前の静けさを感じていた。


「チッ、あいついつでも見ているぞってか」


俺は悪態をつきながらアカギに向き直った。


「お前はこの森から出たらすぐに走れよ」


俺はそう言った。


俺たちは森の中を走っている。 もうすぐで、この森を抜ける。 アカギを森から出したらすぐにカルディが来る。

森の中を走っていて気づいたのは、魔物に一体も合わないということだ。 アルラウネやトレント、アンデットにすら遭遇することがなかった。


「着いたぞ。 走れよ」


俺はそう言って背中を押してアカギを走らせた。


「ほう、逃げなのか」

「逃げられるわけないだろ? てか、逃がす気さらさらないだろ?」

「当たり前だ」

「だったら、やるしかないだろ?」


そう言って俺とロゼは短剣を構えた。


「こいつらに勝てたらな。 『死者の行進アンデット・パレード』」


カルディはそう言って地面に手を当てた。

すると、カルディを中心に地面に電撃が走り、地面がボコボコと隆起し始めた。


「な、なんだ?」

「グギャギャ」


地面から現れたのは、アンデットだった。 レイスやゾンビを中心にゴーストやスケルトン、大型のアンデットで言えば首なし騎士デュラハンやリッチが現れた。


死霊術士ネクロマンサーか!」

死霊術士ネクロマンサー? その程度と一緒にしないでください。 私は姫様を守る剣であり盾でもある。 死んだら意味がないのですよ! つまり、私はノーライフキングです!」


ノーライフキング、吸血鬼の上位者だということ以外知らないが、ガビュードはどうなる。 どう見てもガビュードのほうが魔力量やその他の面でも勝っているがノーライフキング。 ガビュードの上位に位置する存在。

一言で言えば、超面倒くさい。


「ロゼ、お前はリッチたちを頼む」


ロゼはコクリと無言で頷いた。

リッチは、魔力の塊を依り代にしてこの世に留まっている。 つまり、魔力を削っていけば死ぬってわけだ。

これは、ロゼがアリシアからもらった短剣『吸魔の短剣』と相性がいい。

一方で、俺の短剣は『身体能力強化』と『斬鉄』の二つしか付与していない、つまり、魔力を切ることができないため、俺とリッチの相性は今は最悪に近い。


「来いよ。 お前たちはメインの前の前座だ」


一つ挑発を入れて俺は木々の間を抜けるように移動しながら近づいていった。


「セイッ!」


ガァン! と、デュラハンの鎧に短剣の一撃が弾かれた。


「なっ! 早すぎるだろ。 お前が一番遠かったはずだろ!」


俺はそう怒鳴りながらも短剣を持つ手は止まらない。


「このやろ」


全ての攻撃を弾かれようとも、デュラハンに修復の時間も与えないように連撃を繰り返していた。


クソッ、全然刃が通られねぇ。 でも、いける! 必ず勝てる!


刃が通らないからと諦めることなく連撃をやり続けているとバキッと音がなった。


「ハァァ!」


バキッとヒビが入ったところに一撃を入れた。

一撃を入れたことで、そこから鎧が壊れ中までも一撃が入った。


「よっしゃ! これで勝った」

「ゴォォォ!」

「うわっ! 取り巻きを忘れてた!」


再び短剣を構え直して取り巻きを切り刻んだ。

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