第36話 何者ですか
ゼァーラに着いた俺たちを待ち受けていたのは、街がボロボロの廃屋やボコボコに隆起した街道が目の前にはあった。
『何があったんだ』
獣の街として栄えていた時は、獣人や人間が街道を行き交っていてものすごく活気溢れる街となっていたのが今は見る影も無くなっていた。
『くそッ! とりあえず冒険者ギルドに行くぞ』
「う、うん」
俺はロゼの肩に乗ったまま俺たちは冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに入った俺たちを出迎えたのは異様な殺気と復讐心の混ざった視線だった。
これは、ロゼに向けられたものではなく俺に向けられたもののようだ。 つまり、ゼァーラは魔物にやられたということになるが、ここには迷宮ぐらいしかないはずだ。 なのに、俺を目の敵にするのは少し違うはずなのにここにいる冒険者は全員そのような目で俺を見ている。
しかも、ここにいるほとんどが歴戦の冒険者のように見えた。
『伝言板に書き込みをするぞ』
ロゼはコクッと頷き伝言板の方へと歩き出した。
ザッとその前を獣人と人の数名が行く手に塞がった。
「おい、ちょっと待てよ」
「な、何ですか?」
「お前、魔王軍のもんか?」
「どういう意味ですか?」
ロゼは本当に何を言っているのかわからないと言ったように聞き返していた。
「とぼけんな! お前が! 妖狐を連れている時点でお前は魔王軍のもんだろ!? あの森から出てきた魔物たちと一緒のもんだろ!?」
後半の方は叫ぶようになっていたが、一つ気になることがあった。 あの森とはここの近くにある見えない森
「お前たちが生み出したんだろうが! 今まで近づけもしなかった場所に森を生み出したのはーー」
「え?……コンちゃん!?」
森を生み出した。 そう聞いた途端に俺はロゼの肩を飛び降り走っていた。
その後ろを走りながらついてくるロゼと冒険者たち。
俺が居なくなって得をするのは誰か。 それは、人じゃない、魔王軍だ。 何故! 何故!! 今の今まで気づかなかったのか! 俺以外の人はどうでもいいのか!? 違うだろ!? あの時、あの場所で俺は決めただろ! 俺は救える存在は全て救うと! それを忘れているなんてなんてざまだ! これで、賢者と呼ばれて良いわけはないだろうが!
俺は俺自身を罵倒しながらも街の中を走っていた。
「コンちゃん! どうしたの!」
『ッ!? ロゼか! 状況が変わった。 今すぐに
「わかった! じゃあ、道案内お願いね!」
ロゼはそう言うと俺を抱き抱えて最大スピードで走り出した。
『ウオッ!』
「しっかり捕まっててよ! 振り落とされないように!」
そう言われて俺はロゼに抱き抱えられている腕にしっかりしがみついた。
♦︎
「ここ?」
『あぁ、本来なら結界が張ってあって入ることも視認することも出来ないが、今は結界が壊されている』
俺とロゼは森の中に足を踏み入れた。
森は魔力で満ち溢れていてすぐに魔力酔いしそうなほどだった。
『
『何者ですか』
俺たちの背後にものすごいプレッシャーを受けた。
ロゼは振り向いたら殺されるほどのプレッシャーを感じているだろうが、俺はそのプレッシャーに違和感を感じた。
『何者ですか』
『グレン・マーカー』
『ッ! 本物ですか?』
俺がそう言うと
『あぁ、本物だ。 この森に何があった』
『あなたに裏切られたのですよ、グレン。 いえ、あなたの身体を持った何者かにですか』
『そうなのか』
やはり、ここには俺の身体があったようだ。 だが、俺の身体には何かが住み着きゼァーラとここを今のような惨状に変えたと言うことだろう。
『えぇ、今までにいた。
『嘘だろ!?』
『それで、その子は?』
『ロゼ、俺の弟子だ』
『そうですか』
そして、ロゼの肩に触れると
「ね、ねぇ、コンちゃん。 私の中に暖かくて包み込まれるような魔力が入り込むような感覚があるんだけど」
『あ、うんそうだな』
「すごい! 魔力が溢れてくるよ! それに、何でかな? あの木とあの花にものすごい嫌悪感があるんだけど」
『んじゃあ、あの木を燃やしてみろよ』
「え、いいの?」
ロゼは困惑した様子で聞き返してきた。
『聞くよりも見たほうが早いからな』
「じゃ、じゃあ行くよ」
そう言うとロゼは火属性の魔法を木に向けて放った。
『ギュエエエ!!』
「えっ!?」
『トレント、木に擬態する魔物だ。 で、あの花の方はアルラウネ、こっちも擬態系の魔物だ』
これはすべて魔物に変えられてしまった
今回の背後に魔王軍の幹部がいるだろうが……。
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