第38話 逃げるぞ、ロゼ
「それじゃあ、探しに行くか」
ボス部屋のものをすべて綺麗にした。 ロゼはというと
俺は、短剣を二本腰にさした。
「何を探しに行くの?」
「何って
というわけで迷宮の外に出て来たのだが、どこに行くかあてがなかった。
「
『グレンが前に魔物を狩っていた場所です』
「あぁ、あそこか」
思い当たる場所が一つありそこに向かって歩き出した。
俺が魔物を狩っていた場所とは、少し開けた場所で
そこに着くと、少し肉がただれた俺が立っていた。
「やっぱり、俺か」
隣にいるロゼだけにしか聞こえないぐらいの音量で呟いたが俺の身体を持つ何者はがこちらを振り向いた。
今ので気づくのかよ! クソッ!
「ロゼ! 戦闘準備!」
「うん!」
俺は腰から二本の短剣を抜き構えた。
だが、俺の身体を持つ何者かはこちらを向いたまま身動き一つしなかった。
俺はこれを好機と感じ走り出した。
「なっ!?」
俺が走り出した直後に俺は何かに引っかかり身動きが取れなくなった。
俺の動きを止めたのは蜘蛛の糸のようなものだった。
『お前がグレンか?』
俺の身体を持つ何者かがそう聞いてきた。
この時の俺は何について聞かれたのか一瞬わからなかった。
この時の俺の思考を支配したのは、こいつに触れられれば俺という存在が消えてしまう。 そう感じてしまった。
『お前がグレンか?』
「あぁ! そうだよ!」
『やはりか……やはり
俺の身体を持つ何者がそう言うと、片手を持ち上げて俺の身体に触れようとした。
「や、やめろ! 俺に触れるな!」
「『
俺が手から逃げるように暴れているとその後ろからロゼからの援護射撃が来た。
『ムッ』
俺の身体を持つ何者かは二歩ほど下がって手をかざしてロゼの放った
「ロゼ、助かった」
俺はそう言いながらも震える腕を押さえつけた。
「コンちゃんは、あいつを知ってるの?」
あいつが俺に言っていたことをすべて聞いていたロゼがそう聞いた。
「知らない。 でも、あいつに対する恐怖だけはこの身体が覚えているみたいだ」
俺はあいつを知らないがあいつは俺を知っている。 そして、この身体はあいつを恐怖している。 あと一歩でも進めば恐怖で身体が言うことをきかなくなるなるだろう。
「クソッ! 逃げるぞ、ロゼ」
『逃げるのだな。 ならば、名前と少々特殊な魔物を置いていってやろう。 私はカルディ。 姫様自らが戻って来られるのを心より楽しみにしておりますゆえ……」
カルディと名乗ってその場から消え、その場所には下半身が蜘蛛、上半身が人の女性の姿をした魔物が残されていた。
「アラクネか!」
「クシャァ!」
アラクネは逃げる俺たちを追いかけ出した。
「あいつをやらないとすぐにカルディにバレる!」
「じゃあ任せて! コンちゃんに教えてもらった魔法でいくから! 燃えろ。 燃えろ。 火は原初の始まりを示すもの。 その火が炎に変わるとき、炎が全てを覆い尽くすだろう」
一言一句噛みしめるように唱えた。
「焔魔法『原初の灯火』」
式句を唱えるとアラクネがボウッ! と燃えた。
「クシャァ?」
どうした? と言ったように小首を傾げるアラクネ。
少々特殊どころじゃねぇじゃねぇか! アラクネは虫系の魔物。 火属性の魔法で十分に倒せる魔物なのに火を効かなくしたらほぼ無敵だぞ。
「しょうがないね。 じゃあ少しだけ!」
ロゼがそう言うとロゼの周りに大量の魔力が循環し出した。
「お、おい。 何する気だ」
「見てて。 『精霊魔術』森の怒り」
ロゼがそう唱えるとこの森全体が震え出した。
そして、目の前にいるアラクネを森が呑み込んだ。
「なんなんだ。 今のは」
今の説明不可能な現象を見るとさっきまでの震えが収まっていた。
「倒したよ!」
「ありがとな、ロゼ」
「ふふ、いいよ。 コンちゃん」
だが、カルディと戦うことになると俺は役に立たない。 ロゼ一人で戦ってもらうことになる。 クソ! 誰でもいい誰か一人でもいればいいのに。
あれこれ考えているうちに俺たちは迷宮に戻ってきていた。
今回わかったことは、あいつに触れられると俺が俺ではなくなるということぐらいだった。
「クソが! どうすればいい!」
迷宮の壁をガッと殴った。
殴ったところからは血が出てきたが関係なしにさらに壁を殴った。
「一旦ミルドのところに戻るか? いや、でもゼァーラを見捨てることになる。 それだけは出来ない。 それは俺を見捨てるのと一緒だ」
「ねぇ、コンちゃん」
「ッ! なんだ?」
後ろから声を掛けられて驚いたがロゼとわかっているので聞き返した。
「今回は、私に任せてくれない?」
「なっ、何を言ってんだ?」
俺はロゼが正気なのか疑った。
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