第34話 あんた誰?
次の日を迎えた俺たちはミルドがいると思われる一番大きい工房に訪れていた。
「ここがミルドさんの工房ですか?」
「う〜ん、厳密に言うと違うけどここはミルドの工房よ」
ロゼの言葉に少し悩みながらもアリシアはそう言った。
「げっ!」
後ろからそう聞こえたので振り返ると勇者と聖女、そして、賢者の弟子を名乗っていたものがいた。
「最悪のタイミングね」
アリシアは頭を抱えながらも俺をロゼの肩から自分の肩に乗せ変えた。
「ねぇ、昨日見なかったのが二人ほどいるけど何者なの?」
『賢者の弟子らしい』
アリシアは小声で二人について聞いてきたので二人の肩書きだけを伝えた。
「賢者の弟子って、あんたロゼと蒼以外に弟子を取っていたの?」
『ロゼと蒼以外に弟子を持ったことなんてないし身に覚えもない。 それに魔力量を見れば分かると思うんだが?』
「そうよね、多少魔力が多い程度の子だからねぇ。 あんたが魔力量を増やさないなんてことしないものね」
あんたのことはわかりきっていると言わんばかりの対応に何故と思ったがパーティを組んだ時に分かったのだろうと切り捨てた。
「じゃあ中に入りましょうか」
「ま、待て!」
いざ工房内に入ろうとした時に勇者が止めに入った。
「何か用?」
「俺は勇者だぞ!」
「知ってるけどどうしたの?」
暴君にでもなる気かお前は? 勇者なのは知っているが勇者だからどうしたと言うことにもなるからな?
「昨日お前は俺に名乗らずに消えた。 何者なのかぐらい名乗れ!」
あぁ、そう言うことか。 自分に勝ったロゼと蒼に慕われているからさぞ有名な二つ名持ちなのだろうと思ったんだな。 それに、自分の二つ名が『勇者』だからアリシアの二つ名を聞いて自分の二つ名の方が格上だと示したいんだろうな。 でも、残念。 アリシアの二つ名は俺と同格だからな。
「私? あぁ、そう言うこと。 通り名もってことね。 私はアリシア。 『剣姫』アリシアよ」
「ッ!?」
はい残念。 アリシアは『剣姫』お前は『勇者』、賢者と剣姫は、二人でこの国の危機を救った英雄でお前はまだ何も出来ていない。
「『剣姫』知らない? 勇者の育成をしてくれないかって国王に
うわぁ、スッゲェ嫌らしい言い方をしたぞ。 勇者を育成しようとしていた相手だから何も言えないだろうしな。
「さぁ改めて行こっか。 ロゼ、蒼」
「「は、はい」」
ミルドの工房に入ると杖をついた爺さんがやってきた。
「ようこそ、ミルドの工房へ。 私めは、当代のミルドでございます」
「あんた誰?」
ミルドと名乗った爺さんに向けてアリシアはそう言った。
「私たちはミルドに会いに来たの。 あんたみたいなガキに用があるわけじゃないの」
「私めは当代のミルドです。 あなたがおっしゃっているミルドとは何代前の方でしょうか?」
「だーかーらー! ミルドはあんたみたいにヨボヨボの爺さんじゃないの! 私とグレン、ミルドは産まれてこのかた二百年以上生きてますから!」
あぁ、言っちまった……。 ロゼにも蒼にもまだ言ってないのに、そもそも俺かアリシアが来ればミルドもすぐに分かるのに今回は偽ミルド(ミルドの弟子)が出てきた。 つまり、今はミルドが居ないのかもしれないな。
「申し訳ありません。 あなたは『剣姫』ですね。 今は我が師は『賢者』を探しに行くと言って居られませぬ。 また日を改めていただく訳にはいかないでしょうか」
アリシアが剣姫だと分かるといきなり対応が変わったな。 ミルドからアリシアが来るかもしれないと聞いていたのかもしれないな。
それに、俺を探しに行く? 俺が消えたことに気づいていたのか?あいつが? ……そう言えば、前に来たとき装備品を三ヶ月後に取りに来るって言ってから、もう半年くらい経ってるな。 てことは、俺の家に行こうとしているか。
「で、ミルドはいつ帰って来るって?」
「わかりません。 でも、もしかしたら帰ってこないかもしれないと一言だけ……」
「あぁ、もう! なんで、うちの男は失踪グセがあるのかしら!」
それに関してはすまない。 失踪したくてしたわけじゃないし、ミルドも俺が日頃どんなところに行くのかもわかっているだろうから、ここで二手に分かれるか。
『とりあえず外に出るぞ』
「わかったわ」
そう言って外に出ると、再び勇者が前に立ち塞がって来たがスルーして俺たちはアリシアの家に戻った。
「で、グレン。 ミルドがいる場所の大体の目星はついているのよね?」
『あぁ、まぁ一応な』
「で、どこにいるの?」
『俺の家か
「あんたの家ってどこ?」
『雷帝の庭園。 一年中雷が降る雷地帯だ』
「面倒なところに……」
アリシアは諦めたように肩を竦めた。
「わかったわ。 私と蒼は雷帝の庭園に、グレンとロゼは
『あぁ、俺の家に
そう言って俺たちはアリシアの家を後にした。
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