第19話 奇跡?

蒼に問い詰められて、プルプルと震えているロゼの肩から降りてしばらくの間見守ることにした。


「え、えーっと」


チラッと、こちらに助けを求めるような視線を向けてきた。


もう少し見るから無理だ。 という意味で首を横に振った。


「えっとね。 師匠が蒼様の魔法を見たいって言ってね。 それで、その……」

「どうしたのよ? はっきり言いなさいよ」


そろそろ止めに入らないといけないな。


『俺が言ったんだ。 蒼さん』

「えっ!?」


蒼が驚きこちらを見た時に、ロゼはぺたんと腰を抜かしてしまった。


「あなたは何故、ロゼにあのようなことを言うように言ったのですか!」

『簡単だ。 お前の系統が知りたいからやってもらっただけだ』

「で、その知りたい系統とやらはしれたんですか?」


どうでも良さげに蒼は言った。


『あぁ、知れたさ。 君が魔術系統であることと、今までやっていたことが無駄だったってことがわかったことかな?』

「う、嘘?」


蒼はその場に崩れ落ちてしまった。

その間に俺はロゼの近くに寄った。


『大丈夫か?』

「大丈夫だけど、やりすぎじゃない?」

『お前を傷つけようとしたからだよ。 因果応報ってやつだ』

「それ絶対違う」


ロゼに呆れるように肩をすくめられた。


俺が人であれば引き起こしているが今は狐なので引き起こすほどの力と背がない。


『起き上がれるか?』

「うん。 もう大丈夫」


ゆっくりと起き上がり、こちらにてを差し出してきた。


「ねぇ、コンちゃん。 蒼様をどうするの?」

『一応、魔術を教えてミルドに会いに行く。 そのあと、勇者にあいつを渡して、その後に、と樹精霊ドライアドに会いに行く、というより俺の身体を取りに行く予定だ』

「弟子にはするんだ……」


ハハハ、と呆れた笑みを浮かべながら頬をかいていた。


『は? 何言ってんだ? 俺以外に魔術を教えられるやつがいるんだったら、いいぜ? でも、俺しか魔術使えるやつがいないだろ?』

「はい! その前に、魔術って何ですか!」

『あぁ、そう言えば言うの忘れてたな。 んじゃあ、説明するから、あれ、どうにかしてくれ』


アゴでブツブツ何か呟いている蒼を指した。


「うん、わかったよ」


ロゼは快く快諾してくれた。 そして、ロゼが少し離れた蒼のもとに行き手を差し伸べるとその手を払われた。


「どうせ! どうせ! あんたも! 心の中で笑っているんでしょ!」

「ううん、笑ってないよ? それより、過去を見るんじゃなくて今を見ようよ? 過去はもう戻らない、今と未来はあるんだから、いくらでも取り返せるよ」


そう言うロゼは、過去に囚われているようにも見えたし、自分に言い聞かせるようにも見えた。


「そんなこと言っても! 取り返せないよ!」

『取り返せないって思うんだったら、やってみろよ? それで出来なかったら仕方ない。 でもな、やる前から諦めているやつはいつまで経っても、その程度止まりになるんだぜ? 知ってたか?』


ものすごく呆れたように言った。 何故、ウジウジしているかがわからないからでもあるが……


「うっ……いいわよ! やればいいんでしょ! やれば!」

『物分かりが良くていいな。 というわけで、魔術系統とその他の系統の違いについて教えてやる。 興味がなかったら、寝ててもいいからな?』


そう前置きをして語り始めた。


『まずは、この国で最も浸透しているのが、魔法。 他は、魔術、呪術の二つ。 呪術は、魔族や知性のある魔物が使うことが多いな。 俺は対象外だぞ?』


知性のある魔物と言った時にロゼにえ!? という顔をされたので一応違うと訂正を入れておいた。


『こほん、次は魔術だが、魔術は魔法と違って奇跡に近いものは起こさないんだ』

「奇跡?」


ロゼが、奇跡という言葉に反応をしてくれた。 ほんとうにこれはありがたい。


『あぁ、奇跡っていうのは、魔法を使うと水が現れるだろ? それに関して疑問に思ったことはあったか、蒼』

「最初だけね。 どうやって水を出していたりしているのかな? 程度にしか感じなかったけど……」


一人だけ気まずそうに蒼は答えた。


『うん、それでいい。 そういう疑問に思うことが大切だ。 話を戻して、魔法は、とある制約があるから魔法は奇跡を扱える。 でも、魔術にはその制約がない、だから魔法は発動しない。 で、ここからが本題で、魔術はその制約を突破が可能な系統なんだ。 制約っていうのがだな、世界の理を書き換えること、ていうのが制約だ。 だから、簡単に言えば、魔法では、時間の操作をすることは許されない。 でも、魔術ならば、時間を操作することが許されている。 こんな風に得て不得手があるから』

「ちょっと待って! 魔術の方が結論的には強いの?」


魔術の系統と診断された蒼が最もな質問を投げかけてきた。


『いいや、魔術は特定の条件下でないと魔法のようなことはできないから、一概に魔術が強いとは言えないってわけだ』

「ふーん、そうなんだ」


蒼は、納得すると部屋から出ようとした。


『ちょっと待て! まだ、呪術の説明をしていない!』

「もう夜だからいつかね。 いつか。 あ、そうだ、魔術教えてよ。 お願い」

『はじめっからそのつもりだからいいけど。 そっちが素なんだな……』

「えぇ、そうよ」


少し魔術について話すと角が取れたような感じを感じた。




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