第18話 あっという間だったね
「やっと、邪魔者がいなくなったわい」
オーランジュがこの教室から出て行って、この教室内の沈黙を破ったのはオルバリオだった。
いやいや、さっきの蒼の発言といいお前ら、タッグでも組んでいたのか? そのぐらい息の合ったコンビだったぞ。
「ほれ、ロゼくん自己紹介」
「この状態でですか!?」
「うむ」
オルバリオの発言で思わず唖然としてたロゼにそう言った。
「えーっと、ロゼです。 七大属性の魔法は初級まですべて使えます。 得意な属性は土属性です。 未熟な者ですけども、師匠に恵まれて
緊張した面持ちでそう言うと、クラスメイトとなる(蒼以外)人たちが唖然とした表情をしていた。
「「「
「え、はい」
「はい、お主らは言及がしたいかもしれんが、ここはひとつ魔法の実技といかんか?」
「「「賛成です! 学院長!!」」」
オルバリオが、余計なことを言いそれに賛同する生徒たちを見て俺はげんなりするだけであった。
「えっと、大丈夫?」
『多分な、多分大丈夫なはずだ』
耳打ちでロゼが心配してそう言ってきた。
『
「わかった」
ロゼにそう忠告して俺はロゼの肩から降りた。
「それでは訓練棟に行くかの」
俺たちは、訓練棟に行くクラスメイトたちの少し離れた後ろの方にいた。
ロゼが
ロゼが俺と会った時も一人だったからな。 本来なら、新人はパーティーを組んで冒険者活動を行うはずなんだけどな。 ロゼはあの日一人だった、これはつまり何か大きな闇があるのだろうが、まだそれを暴く時ではない……
俺は一人でそんなことを考えながらロゼを見上げながら横を歩いていた。
「着いたぞ、訓練棟じゃ。 まずは誰からやってみるのじゃ?」
訓練棟とは名ばかりのもので、屋内に草原、荒地などのフィールドが設置されていて他にも障害物が設置されている障害物エリアなどがあった。
オルバリオは、周りを見渡して誰からやるかを聞くと真っ先に手をあげる人物がいた。
「はい! 私、やります!」
手を挙げたのはロゼだった。
『ロゼ! 何も最初にやる意味がないだろ!?』
「いいじゃん別に。 最初にやるか後からやるかの違いなんだもん」
ロゼは俺のためにかがみこみそう言った。
『はぁ、まぁいいか、
「はーい」
そう返事をしてオルバリオの元に行った。
「ロゼくん。 最初だが大丈夫かね?」
「大丈夫です!」
「そうかそうか、ならば最大の魔法を見せてあげなさい」
そう言われてロゼは、魔力制御をしっかりと行い、今最大で使える魔法、中級魔法を使った。
「『
ゴゴゴッ!と地ならしが起こり大きな剣山が出来た。
おお! また一段と威力と規模が大きくなってやがる。 魔力制御の特訓法を教えて二日しか経ってないのに、そこまで成長できること自体がすごいぜ。 あとは、蒼か。 蒼が落ちこぼれ、よくわからないが、これであいつがどういう系統なのかがわかるだろうな。
ロゼが俺の隣まで戻ってきたところで、俺はロゼの肩に乗り蒼の番が来るまで待っていた。
「最後は、蒼じゃな……」
オルバリオは、語尾が段々と小さく申し訳なさそうになっていっていた。
これはどういう意味だ? 蒼が落ちこぼれっていうのは間違っていなかったのか?
「行きます。 『水球』」
ポフンッと、音をたてて発動すらしなかった。
今のは!? クソッ! 確信が持てねぇ、もう一度だけ見れればわかるってのに……
『ロゼ、蒼にもう一度だけお願いしてくれ』
「え? え、え?」
何を言ってんの? と言った表情を向けられた。
『いいから』
「はーい、わかりましたよ、師匠」
嫌味抜群で言われてイラッとしなかったといえば嘘になるが、今はそんなことはどうでもいいと思えるほどだった。
「蒼さん。 もう一度だけ魔法を使ってみてくれませんか?」
「嫌よ」
「そう言わずに、やってやればよかろう。 蒼殿」
思わぬ援護射撃が入り無言で頷くことしかできなくなった蒼は、コクリと頷いた。
「『水球』」
再びポフンッと音をたてて失敗した。
だが、これで知りたいことは知ることができた。 あとは、どうするかだが、どうしようか……。
そうこう考えている間に放課後を迎えてしまった。
「あっという間だったね」
『あぁ、そうだな』
上の空のような返事を返してしまうほど、考え事の方に集中していた。
「コンちゃん、今日はずっと考え事をしているよね?」
『ん? あぁ、蒼の系統がわかったのはいいが、それをどう説明するかが悩ましいことだったからな』
「え!? 蒼様の系統がわかったの!? さっき、なんで魔法が発動しないのか不思議だったんだよね」
そうこう言い合っているうちに寮の部屋に着いた。
そして、寮の部屋に入るとロゼの真横を拳が通り抜けていった。
「ねぇ、あなた。 さっきのはどういうつもりよ」
蒼はロゼに怒り心頭のご様子だった。
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