第16話 私はどうすればいいのですか?
俺が起きた時にはもう二人とも制服に着替えていた。
「おはようコンちゃん」
「おはようございます、コンさん」
ロゼの制服姿は初めて見たが、青に深い緑色の制服はなかなか似合っていてとてもよい印象だった。
一方の蒼の方はというと、またあのガラスを二つかけていた。
「あのアオイ様のかけているものはなんなのですか?」
「あーこれ、これはメガネって言って遠くのものを見やすくしたり、近くのものをよりはっきりとさせたりする道具なの」
昨日までのような陰りの見えた表情が嘘のような笑みを浮かべてロゼにそう言った。
「かけてみてもいい?」
「いいよ! でも、少し度が強いから気をつけてね?」
さっとメガネを取るとロゼに差し出してそう言った。
「ありがとう。 では、さっそく」
ロゼがメガネをかけると、クラッと立ちくらみがしたようにふらっと上体が揺れて、メガネをとって目をゴシゴシとしていた。
「何これ? こんなのつけているんですか……」
「あはは、やっぱりだが強いかったんだね。 でも、初めてメガネをかけたのなら正常な反応だから大丈夫だよ?」
そう笑いながら蒼はロゼからメガネを返してもらいメガネをかけ直した。
「ふぅ、やっぱりメガネがあるほうが落ち着くなぁ」
そこにはやはり昨日のようなことはなく、外行きの表情をしているかのようにも見えた。
蒼はなにかを無理するかのような顔を今日は良くしているな。 まるで、そう自分の才能を見て絶望してもらうのが嫌な人のような感じの感覚すら覚えるな……いや、違うか、昨日あいつは自分のことを落ちこぼれって言ってたな。 つまり、魔法に何か欠点があるのかもしれないな。
蒼の欠点が何かを見つけ今後の課題にすべく意気込んだ。
その時二人は。
「ねぇ、その紋章、私と同じクラスだよね? もしよかったら教室まで案内するよ?」
「えっと、その前に教員室ってとこに行かないといけないみたいだから、そこに案内してくれる?」
「いいよ。 教員室だったら、前を通るからそこまで案内するよ」
蒼はニコニコっとした笑みで部屋から出るように促してきた。
「コンちゃん行くよ」
ロゼがこちらに腕を出してきたので、そこから登りいつもの定位置へと移動した。
「そのこんさんはロゼさんの肩が好きみたいですね」
「まぁ、そうかな、あはは」
ロゼは引きつった笑みを蒼に返した。
俺がロゼの肩に乗るのは単純にここからだと指示が出しやすいからであって、肩が好きだというわけではない。
「それじゃあ行こっか」
蒼がそう言って俺たちは寮を出た。
寮を出たって言っても、寮から出ている渡り廊下を通って隣の棟に入っていっただけなんだけどな……
「ここが、教員室だからここまでだね」
隣の棟に入ってすぐに教員室があった。 ていうか、この棟に入ってすぐの部屋じゃない!? 通るところにあるって間違いじゃないけど、もう少し遠くだと思うよね!?普通さ。
「ありがとうございます! あと、また教室で!」
ロゼは深々とお辞儀をして蒼に感謝していた。 それを蒼は、手を振って足早に教室に向かっていった。
「入ろっか」
『そうだな、そろそろ入らないと怒られるだけだろうしな』
ロゼは、教員室の扉をノックして中に入った。
「んまぁ! けがわらしい獣を連れてここに入ってくるなんてなんて非常識な子でしょう!」
入るや否や、近くを座っていた老婆がそんなことをほざいた。
「やめておきなさい。 オーランジュ殿、彼女は今日からここに通うロゼくんじゃからな」
オーランジュと呼ばれた老婆を戒めるように、なにやらの呪文と並列にオルバリオはそう言い放った。
呪文が完成するとオーランジュに樹木の根っこが縛るように巻きついた。
「学院長! なぜですか! なぜ、けがわらしい獣を連れている小娘を由緒正しいこの学院に入れないといけないのですか!」
おぉ、老婆すげぇ。 拘束系の魔法で拘束されながらも学院長に刃向かえるって凄えな。 賞賛に値するわ。
「ホッホッホ、彼女、というより君のいう、けがわらしい獣がこの学院を変えてくれると思っているからじゃよ」
この一連すら楽しいと思っているのか、本当に愉快そうに笑う学院長だった。
いや、変えるのは蒼だけだろうし、あと、本来なら俺は弟子を取らないよ? あの時のようなことにはなって欲しくないからね?
「それにオーランジュ殿よ。 この子は君のクラスに編入する予定じゃよ? 今のうちに仲良くしとかんと、今年で解雇という可能性もありえるのじゃからな」
「それはあり得ませんよ学院長。 ワタクシのこの学院に対する活躍は学院長も目を見張るほどでしょう?」
そんなはずはないと大げさに驚きながら老婆はそう言った。
これは何かな? 自分のアピールポイントを売り込むチャンスか何かと勘違いしているのかな? そんなわけないだろ? オルバリオの顔をしっかり見ろよ、かなり怒ってそうな顔をしているぞ? 大丈夫か、婆さん。
事実、オルバリオは何か裏がありそうな笑みを浮かべて、ロゼ……というより俺と老婆を見比べていた。
「あの、私はどうすればいいのですか?」
ロゼが困ったように言った。
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