第15話 賢者のお弟子さん!?

「えっ?」

「コ、コンちゃん! 見ちゃダメ!」


ソイッと、部屋の外に投げ出され、扉をバタンッ! と閉められた。


仕方なしだなこれは、そもそもあの人、蒼の特徴に似ていたんだよなぁ、今更気づいたけど……


しばらくすると、ロゼがひょこっと顔を出しこちらを手招きしていた。 準備が整ったのだろう。


「とりあえず服だけはきてもらったから」


ロゼはそう言い俺を部屋の中へと招き入れた。


「えっと、ごめんなさい? なのかしら」

「うん。 あ、ごめんね。 私はロゼ! よろしくお願いします」

「唐突だね……。 ロゼ、さんね。 私は明科蒼でいいかな?」

「えっ!?」


驚くのはいいが、驚きながらこっちを見るのだけはやめてくれ、目を開いているのが少し怖く感じるからな?


「え、失礼しました! まさか、アオイ様とは思わず失礼なことをしでかしてしまい誠に申し訳ありません!」

「頭下げなくていいから。 それに、私は様と呼ばれるほどすごくないから……」


頬をポリポリと掻きながら、居心地悪そうに視線を泳がせた。


「アオイ様は、ユイさんと同じことをおっしゃるのですね」

「ユイちゃんに会ったの!? ユイちゃんはどうだった、最近会えてないからさ」

「えー、えーっと、あのそのですね」


蒼は結衣と名前を出した途端にグイグイと行き、ロゼが困ってこちら側を見ているが、俺はやれやれと首を振るだけにとどめた。


「ユイさんは元気でしたよ。 あと、アオイ様のことは、会ってみたらわかると言われましたので教えください!」

「私について話すことはないよ。 私はこの世界では落ちこぼれだから……」


そう言った蒼の顔は、陰りが見え自信のない顔だった。


これは、本当にヤバいかもしれない……。 この子は、魔道士じゃなくてあっち側の系統に属する子、まだ俺が使える方だからいいけど、使えなかったら教えることもできないから危なかったな。


「私が言えるのはここまで、また明日私のことは学院でね」


先ほどのような顔はなく、だが、どこか引きずったような雰囲気を残して部屋の奥へと消えていった。


「ど、どうしよう……」

『あー、そうだな、俺がここに来るまでにやっていたやつを教えるからある程度できるようにしてくれ』

「え、そういう意味じゃないんだけどな……」


ロゼは、どこか困ったような顔を作り、耳をつねってきた。


『痛い、痛いから』

「コンちゃんがいけないんだもん」


ふんだ! と、ロゼはそっぽを向いてしまった。


『はぁ、今、蒼のこと考えても意味がないだろ? 向こうは話す気なんてないんだから。 なら、この余った時間を成長するための時間に使えばいいんだよ』


俺は、お前の考えはわかるんだよ! と言わんばかりにドヤ顔をしてそう言ってやった。


「なんかムカつくー」


ロゼは、そう言って俺の頬を人差し指でグリグリとやってきた。


『よひぃ、やふほ』

「何言ってるかわからない」


ロゼのせいで何か言っているかわからなくなっているのにと、少しイラッときたので指を軽めに噛んでやった。


「イッタ! 怒ったの?」

『少しな、でももうそんなことはいいからやるぞ』

「はーい」


噛まれた指を抑えながらそう言った。



「ねぇ、何やっているの?」

「えーっと、これはですね。 師匠からこれをやれって言われてやっているんですよ」


寝室のベットは同じ部屋であるため、蒼もロゼが何をやっているか気になり、そう聞いてきた。


「えっとですね、無色の魔力を固めたものを壊さないようにお手玉をするみたいです」

「何言ってるかわかんないや」

「最初はみんなそうですよ、師匠が特別なだけですから」


苦笑いを浮かべながらロゼは蒼にそう言った。


「師匠……そう、師匠ね。 ねぇ、賢者って知ってる?」

「ひぃやぁ!!」


奇妙な悲鳴をあげて魔力玉をパァンと破裂させた。


「どうしたの? 賢者って名前ぐらい魔道士なら普通知っているはずよね?」


ニィイと、悪そうな笑みを浮かべてロゼのベットの上に登ってきた。


「賢者と知り合いなの?」

「えぇっと、賢者様とは知り合いというか、師匠っていうかなんていうか……」

「えっ!? 師匠!? 賢者のお弟子さん!? でも、そっか、賢者の弟子なんだぁ」


ロゼに仲間意識があったのが、消え失せたかのように、自分のベットに戻って毛布を深くかぶってしまった。


「さて、コンちゃん、こっちも寝ようね」


そう言って、ロゼは毛布を被り眠った。

俺は蒼との会話を思い出し、一人考え事をしていた。


蒼のあの賢者の弟子って言った時の全てが消え失せたかのようなあの顔、賢者に対するなにかが蒼との間にあった、それしか考えられないんだが、もしそれが俺に関係あることなら俺は蒼が一人前になるまで面倒を見てやる。 ロゼと蒼、同時に二人の弟子を作るのはかなりきついだろうな。


俺は、おかしくなって行く思考に苦笑しながらロゼのベットの下へと潜り込んで行った。


「ロゼちゃんもなんだ」


そう聞こえた気がしたが、聞いてはいけない言葉だったと感じ俺はそれを聞かなかったことにして、眠りについた。

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