第10話 獣風情が!

クソガキ勇者は、壁に激突しかけたところで止まった。


「クソ! なんだこれ、何にも見えねぇぞ!」


勇者の視界が戻るまであと十秒弱。 それまでに狙いをすまして、視界が戻るのを待つ。


「よし! 見えるようになったぞ!」

「キュ!(閃光フラッシュ)」


この魔法は、光属性魔法で、闇属性魔法との合わせ技でよく使う。 いい例が今のような感じだ。 アンクで相手の視界を奪い、回復したタイミングで再び視界を奪う、この二つの合わせ技ある程度強い魔物にも有効だ。


「次は光か!」


勇者がそう言うのと同時に、とある魔法を構成する。 これが決まれば、勇者に多大な精神ダメージを負わせられるはずだ。


「ーーッ! 獣風情が! 俺の邪魔をするなぁ!! 輝く光の斬撃フォトンスラッシュ!!」

『『迫り来る二つの岩弾ダブルスマッシュ』』


勇者が輝く光の斬撃フォトンスラッシュを発動し、振るタイミングで、迫り来る二つの岩弾ダブルスマッシュ黄金の剣カリバーンに向けて発動した。

俺の発動した魔法は、左右から一つずつの岩弾が、黄金の剣の腹を殴るような形で決まった。 岩弾が決まると、バリィン! と大きい音を立てて黄金の剣が刃先を残して砕けた。


「なッ!?」


やっぱりな、あいつの粗悪品ニセモノ。 剣の腹が壊れやすい、あいつの癖だ。


「クソ! なんでこいつが壊れるんだよ!」

「キュ、キュキュキュー(それがニセモノ、あいつの失敗作だからだよ)」

「バカにしやがって!」


勇者は、壊れた剣の柄を投げ捨て拳を構えた。


お? やるか、拳はねぇけどやるのか?


人としての身体があれば、シャドウボクシングをしていただろう。


「食らいやがれ!」


大きく振りかぶって、大声を出して、いい例が一つもない、力任せの拳をふるった。

まぁ、当たることはないんだけど。 それじゃあ、一つ俺の固有魔法オリジナルととある系統のものを使ってせましょうかね。


『『水鏡』、『付加術エンチャント反射』』


ボソボソと、つぶやくような声で言ったので、聞こえていないだろう。

水鏡、この姿になった時も使った魔法。 汎用性の高い固有魔法でもある。 一応、操作可能である。

その水鏡を目の前に出し、さらにも一個、これ単体だけでも勝てるけど、人体に影響が大きいからなぁ。


「ちょこまかと避けたんじゃねぇよ!!」


勇者は、透けている水鏡を思いっきり殴った。

すると、思いっきり殴ったダメージと衝撃がそのまま自分に返ってきたような感じで、飛ばされた。


『おぉ!! スゲェぞ! ロゼの嬢ちゃんの従魔! 勇者様を一人で圧倒してやがる!』


と、外野がうるさく騒いでいるのが鮮明に聞こえ出した。


「チッ、今のはカウンター系の技か。 だったら、こっちに!」


と言って、魔力を練っているため、未だに一歩も動いていないロゼに向かって走り出した。


クソ! ロゼの方を狙いやがって、あと発動出来る魔法は、中級一発か初級五発だけか……


「キュー!(ここから先は行かせん!)」

「邪魔だ!」


勇者は、俺をロゼの方に蹴り飛ばした。

多少痛くても、耐えられないほどではないからな!


「コンちゃん! 大丈夫!?」

『いいからお前は集中しろ!』

「わかった」


あと二秒も待てば、ここまで来るだろう。 というより、あそこから広範囲の魔法をぶっ放すかもしれないしな。


色々な思考をしていたが、勇者はそのまま突っ込むように迫り来ていた。


一つ目の初級魔法! これであとは四。 これが失敗したら負けだ!


「うおぉぉぉ!!」

「キュ!(今!)」


猪のように突進をしてくる勇者にバックステップで、猪狩りのをロゼのようにした。


「うぉ!」


見事に地面を踏み抜き、勇者は落ちていった。

これで数秒の時間稼ぎができた。


『ロゼ、あとどのくらいだ!』

「あと少し、もう少しだけだから!」


もう一回、最初にした魔法をやってみるか? でも、あれは二回目以降はほとんどかからないからな。


クソ! どうすればいい!

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