第9話 俺の弟子だからな!
「ちょっと待ってくれ!」
ロゼの肩を掴んだ勇者がそう言った。
「な、何ですか」
「どうして、俺たちのパーティーに加わるのが嫌なんだ?」
「ど、どうしてと言われても……」
チラチラっとこっちを見ているが、加わるのが嫌な理由に俺を使えばいいのにとも思ってしまう。
「あの、そのですね。 私には、師匠が居ますのでその人と話をして決めようと思っていますので」
助言しようかと悩んでいたが、ロゼが先に俺の望んだ答えを言った。
ナイス! いいぞ、このまま一人で全部やってくれたらいいけど。
「そいつは、ここにいる賢者の弟子よりもすごいのか?」
「ええ、多分。 と言うより、絶対に」
うんうん、賢者の弟子よりも賢者の方が上だよな。 俺は、賢者って思ってないけども。
「そいつの名前は」
「グレン。 と言います。 とある山奥に住んでいて、たまに町に顔を出す程度らしいですよ」
たまに町に顔を出すってところは、意外とあってんだよなぁ。 町に顔を出す時って、だいたい道具屋に売ってあるものを作るのがめんどくさくなった時ぐらいだもんな。
「グレン? 誰だそいつは。 そんな奴より、こっちにいる賢者の弟子の方が何倍も良いだろ!?」
「いえ、あの人は鬼ですけど、優しいですよ? 魔法について色々知ってますし、魔法以外の戦い方も大切だって、しょっちゅう言われてますけど、それでもです」
うー、そんなに俺のことを想ってくれているのか、いい弟子を俺は持った。 はじめての弟子がロゼで本当に良かったぁ。
「そうか、ならば勝負だ! 俺たちが勝てば、あんたは俺のパーティーに、あんたが勝てば、なんでも一つだけ何か叶えてやるよ!」
空気読めや! 今の話の流れ諦めるところだろ? 普通ならね。 本当にクソガキだな、この勇者は。
「ど、どうする? どうにか頑張ってみたけど、これが限界だったよ」
俺にだけ、聞こえるような大きさで、さっきの困った顔よりもさらに困っているような顔で俺の考えを聞こうとしていた。
『勝負は一対一で、俺も入れるようにしてくれればいいよ』
俺は、ロゼにだけ聞こえる声でそう答えた。 それを聞いたロゼは、どこか安堵したような表情になり、クソガキ勇者に向き直った。
「でしたら、一対一での決闘方式で行きましょう。 あと、この子もありでいいですか?」
「いいぜ、そのぐらい俺にとってはハンデだ。 なぜなら、ミルドのおっちゃんのところで
ピッカーと、太陽の光によって反射して光っている黄金を見てあることがわかった。
あーあ、ちゃっかり自分の剣を自慢してやがる。 それにしても、ミルドのおっちゃんか……おっちゃんって言うことは、あれ
クソガキ勇者が、鞘から抜いたものが、
「でしたら、冒険者ギルドの訓練場を使いましょう」
と言い、一足先に歩き出したロゼだった。
「ね、ねぇ、コンちゃん、アレに勝てるの?」
『ん? あれって勇者のこと? 勝てるだろ、ああいう剣の弱点はわかってるし』
「ほ、本当! 良かったぁ」
ホッと、胸を撫で下ろしたロゼを現実に戻すかのように、『話を聞け』と言った。
「何?」
『お前には、今から
「ちょ、ちょっと待って!
『大丈夫だ。 地属性の魔法なら、
それに加えて、ある魔法の発展系を
「ごめんなさい。 待たせてしまって」
「いや、いいぜ! 今の俺は、機嫌がいいからな!」
『ロゼ、さっき言ったとおりにすれば勝てるぞ』
まだ、不安がっているロゼの表情を見て、少し苦笑をしながら、最後にこう言った。
『お前なら出来る。 俺の弟子だからな!』
ロゼの肩から飛び降り、クソガキ勇者に向かって威嚇した。
「ふん、獣風情が。 俺に勝てるわけねぇだろ」
その無駄口がいつまで叩けるか見ものだな。 と言ってやりたいが、そう言うと後の方が大変だ。
大変って言うのは、俺が知恵ある魔物だと、ロゼに催眠系の魔法をかけているのではないかと疑われてしまうからだ。
もちろん、従魔契約を結んでいたとしてもだ。
「えぇ、では、この勝負の審判をします。 賢者の弟子、アーミラです。 この勝負は、気絶または降参を認めるまで勝負を行うというのでよろしいですか? あ、あと、相手を殺すのはもちろんなしです」
「はい」
「わかってらぁ」
二人とも、頷き武器を構えた。
「それでは行きます。 始め!!」
「ウォォォオ!!」
クソガキ勇者は、速攻で勝負を決めに来た。
もちろん、それを対策していないほど、バカではない。
「キュ(
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