第2話 何じゃこりゃ?

俺は倦怠感とともに目を覚ました。

何が起きたんだ? 確か、ボスのドロップ品の一つを手に取ってから、何があったんだ?


とりあえず俺は、起き上がろうとしたが、起き上がれなかった。


は? なんだ? なんで起き上がれないんだ?


「キュ、キュ〜」


うわっ!? なんだこの声、……何で俺は四足歩行になったんだ? ええぃ! 水魔法『水鏡』

俺は水魔法で、鏡を作った。


「キュキュ!?(何じゃこれ!?)」


鏡に映ったのは、九本の尻尾を持つ妖狐だった。

毛並みは茶色っぽい薄茶色で、瞳は瑠璃色だった。


なにかの魔物になったような気がしたが、よりにもよって、妖狐しかも希少種の九尾かよ〜、九尾は魔力量が多くて、魔力強化系の装備に向いてるって言われるしなぁ。


と、俺は考えていたが、一つの解決法を思いついた。


そうだ! 魔法で、幻覚系があったはずだ。 その魔法さえ使えれば、人の姿を使えるかも。

ものは試しだ! やってみる!


「キュキュキュ〜(幻覚魔法『変化』)」


思い浮かべたのは、人としての俺、賢者と呼ばれていたグレンとしての姿だ。

だが、魔法の効果は、俺が思い描いたような効果を発揮しなかった。


「キュ?(何か変わったか?)」


先ほどまで、出していた鏡でもう一度自分の姿を見ると、九本あった尻尾が一本に減っているだけだった。


「キュ〜(そんなに変わってねぇ)」


一本になった尻尾を鏡越しで見ながら悲しみにくれていた。

すると、突然体全体に先ほどの倦怠感を上回る倦怠感が襲ってきた。


くそ! 魔力切れか、この程度の魔法を使っただけで、魔力切れを起こすなんて、どれだけ弱体化しているんだ?


そう思っている間も、倦怠感が重くのしかかり目の前がチカチカし出した。


ヤバイ、倒れる。 とりあえず、どこかに隠れねぇと。


動きにくい体を隠れやすくバレにくいとこにたどり着くなり、目の前が真っ暗になった。


♦︎


次に俺が目を覚ましたのは、朝日が昇った時だった。 実際に見たわけではないが、感覚でわかる。


腹減った、次元空間は絶対に使えないだろうから、別の方法で食料を確保しないといけねぇか。


俺は、食料を探しに森の中をさまよい出した。


「キュ〜(腹減った)」


森の中は平和と言っても過言ではないほどに何もなかった。

きのみでもあるかと思ったが、一つも落ちていなかった。


「キュ!?(何か匂う!?)」


地面からいい匂いが漂うところまで来た。

人だったら、臭わないが妖狐の特性など全てを持っているこの姿だからこそ臭ったのだろう。


「キュー!(ここだな!)」


俺は匂いのする地面を前足で掘り出した。

地中から出てきたのは、きのみだった。


ヤバイな、ここなにかの縄張りだったのかも、でも、今は誰もいないから、きのみを少しもらってトンズラすればバレない! はず!


そして、俺はきのみを数個くわえてその場から離れた。

人の姿なら縄張りの主人を倒せただろうに……と、ちょっぴり残念だったが。


ここまで来れば問題ないだろう。 それじゃあ、きのみを食べようか! 火で焼きたいところだけど、魔力切れをすぐに起こすからあまり使えないんだよな。


そう考えながらも俺はバリバリときのみを食べていた。


食べたらすぐに移動しないと、魔物に見つかってもアウトだし、人に見つかるのはもっとアウトだからなぁどうしよう、ホントに。


それでも、とりあえず移動しないことには、始まらないという結論に至り移動することにした。


「きゃあぁぁ!」


きのみを食べ終えて、移動しようというところで甲高い悲鳴が聞こえた。


チッ、めんどくさいタイミングで、でも、助けないわけにはいかないしな。


俺は、自分が妖狐になっていることなど忘れて悲鳴が聞こえた方へ走り出していた。


「キュー!(大丈夫か!)」


悲鳴の元にたどり着くと、大きな猪に襲われかけている少女がいた。


やべぇ、大丈夫じゃねぇ。


「キュー! キュー!(ファイア! ウィンド!)」


とっさに魔法を猪に向かって放ったが、決め切ることが出来なかった。

それに、猪のターゲットが、少女から俺に向きひとまずは安心だが、俺が危なかった。


「キュキュ!(来やがれ!)」


猪が突進の構えに入った時に後ろの少女のメイスが猪の頭にクリーンヒットした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る