呪われた狐は少女と共に〜賢者と呼ばれた俺は少女の従魔です〜
狐火キュウ
勇者編
第1話 とある男の最後
「ふん、そんなくだらんことのために俺を呼んだのか」
男は静かに怒っていた。
「ま、待ってくれ! 其方の力が必要なんじゃ! 其方が居れば、勇者様のステータスアップにも繋がるのじゃから!」
「だから断ると言っているのだ、俺がお前たちの下につけと言っているようなものではないか。 貴様らの下につくよりも、魔王の元に行ったほうがまだマシだ!」
ドゴン! と、扉が吹っ飛ぶ音がした。
男にとっては、軽く閉めただけのため気にしてはいない、というより、腹いせが出来てラッキーといった感じだった。
「クソッ! こっちが下手に出ているからと言って、調子に乗りやがって!」
男がつい先ほどまで話していた相手は、男の悪態をついていた。
「フンッ、全部丸聞こえだってんだ成金野郎が、俺の魔法が分からねぇから無理なんだよ」
男は、悪態をついていた者の話し声を遠見の魔法で見ていた。
「はぁ、久し振りに森にでも行ってみるか」
このやるせない気分を払拭するため、森へと転移して行った。
♦︎
「おお! やっぱり森は良いなぁ! 自給自足の生活が出来るし、綺麗だし、本当に良いよなぁ! 森って」
大きく伸びをして、森の中を歩き出した。
『また、来たのですか』
「
『良いですが、たまには魔力を抑えてください。 あなたの魔力は、膨大すぎていちいち見にこないといけなくなるので』
「それは、悪いな、次から気をつける」
『本当にやめてくださいよ、森が怖がりますから』
そう、樹精霊はそう言って去って行った。
「さて、一狩り行きますか」
♦︎
口に煙草を咥えながら、死体の山の頂上に座っていた。
『魔物退治ありがとうございました』
「良いってことよ。 それよりも、何でこんなにも魔物が増えてんだ?」
『それは、魔王の軍勢が近くまでやってきているからでしょうか……』
「そうか、そうなんだな」
男はふぅ〜と、葉巻状の煙草の煙と共に深いため息をついた。
『すみませんが、ここで煙草を吸うのは、やめてもらえませんか?』
「えっ、なんでだ?」
『単に臭いからです』
「良いじゃねぇか、別に森を燃やそうとか思ってねぇんだからよ」
『はぁ〜、しょうがありませんね、私たちの見えない範囲でお願いします』
「おう、わかっーーって、おい! それはもう、ここでは吸うなと言ってるのと同じじゃねぇか!?」
『言質いただきました』
そう言うと、スゥーと消えるように消えていった。
「まぁ、しゃあねぇか」
そう言って、男は煙草の火を消して、立ち上がった。
「どこか行く前にこれを片付けねぇとぜってー怒られるだろうな」
男は死体の山に右手を当てて、何か呟いた。
すると死体がすべて消えてしまった。
「掃除完了。 もう少しフラつくか」
男はしばらくの間、森の中を歩いていた。
「お!
半径1メートルほどの大きさの洞窟の入り口が目の前に現れた。
そもそも
「まだ出来て間もないけど、放っておくわけには行かねぇしなぁ」
「入ってみて、安全確認をしないといけないな」
そう言って男は洞窟の中に消えていった。
洞窟内はまだ出来て新しかった。
つまり、
他にも洞窟内が暗いことや生き物の気配がないなどからも分かることでもある。
「洞窟内部をざっとみた感じだとこれは、まだ出来て数十分しか経ってないってことになるか」
男の言う数十分前は、ちょうど男が魔物を狩っている時間帯のことだ。
「マジで数十分しか経ってないな、これ」
しばらく歩いた先にあったのは、ボスがいると表されている部屋の前だった。
「さて、
部屋に入った途端に男は魔法の連発をした。
ボスの姿を見ることなく消し飛んだことには、ボスに同情を禁じ得ないだろう。
「さて、ボスドロップだけみて今日は帰るか」
これが男の命運を分けた行動だろう。
最初に男が手にしたのは、禍々しいオーラを放ったオーブだった。
「なんだこれは?」
男がオーブを目の高さまで持ち上げると突然オーブが光り出した。
「うおっ!?」
そして、男の意識はそこで途切れた。
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