第五話 オアシス
「あー! あそこにオアシスがあるよ」
コロンが叫んだ。さっきまでなにもない砂漠だったのに、今見ると水を湛えたオアシスがある。水場を囲んでヤシの木のような高い木が周りに並んでいる。
「よし、あそこで水を汲んでこよう、エリス、お前も空になった瓶をもってこい」
俺たちは空瓶を抱えて、オアシスに向かった。
「なんか、嫌な予感がするな」
コロンがポツリと言ったが、あまりに喉が渇きすぎていて、耳に入らなかった。
オアシスは青々とした水を湛えている。俺は暑いし喉が渇ききっていたので、勢いよくダイブした。
「うぎゃ! 何だこりゃ砂じゃないか!」
投影されたホログラム映像のように、見た目と実際は違った。俺は熱い砂にダイブして、体を打ちつけてしまった。すると、その時、頭上から笑い声が聞こえた。
「ぷぷぷ、引っかかった引っかかった!」
そこには小さい少女が浮かんでいた。羽が生えている、耳が尖っている。エルフだ。RPGではおなじみの種族。
「おいこら! 悪戯が過ぎるわよ!」
「あら、これは女神様・・・どうしてこんなところに」
「私の名前はエリス、戦いの神よ。これからドラゴン討伐に行くの」
「俺の名前は山崎ワタル、あそこのスライムはコロンだ。時間がないんだ、悪戯のことは忘れるから水を出してくれないか?」
「分かったわ、いいリアクションで面白かったから、魔法で本物のオアシスを作ってあげる。そうそう、自己紹介がまだだったわね、私はサマンサよ」
サマンサはそう言うと、何やら訳のわからない呪文を唱えた。
すると、さっきまでの幻のオアシスが本物のオアシスに変わった。俺は水面に口を付けてたっぷりと水を飲んだ。喉が乾ききっていたのでめちゃくちゃ美味しかった。
「ありがとう、助かったよ」
俺たちは水を汲んで、馬車に積み込んだ。
「よかったら私も連れて行ってくれない? 砂漠はつまらないのよ」
「それは嬉しい。魔法が使えるし、戦力になりそうだ」
俺はみんなに同意を求めた。異論はなさそうだ。
「そうだ、せっかくのオアシスなんだし、ちょっと遊んでいきましょうよ」
「いいわね! ここは暑いし水浴びでもしましょう!」
サマンサは嬉しそうに、エリスに同調した。
「ボクはいいよ。水嫌いだし」
コロンはどうしても水が苦手らしい。体が水に溶けてしまうのか?
「早くしてくれよ、俺は見張っているから」
これはアニメで言うところの水着回ってやつか? 異世界に来て、やっといい思いができるぞと、ほくそ笑んだ。男はいつでもどんな時でもエロいものだ。
二人はそんな考えには関係なく、着替えを始めた。おっと、全部脱いだぞ、流石にこれはマズイかなと、横を向いてチラチラと様子をうかがった。
「キャー! サマンサ! 水を掛けるのは止めてよー! もう!」
「だって、エリスさん、胸が大きくて羨ましすぎるー!」
裸なのに大事なところがぼやけている。天然のモザイクって感じ。これが神の所業ってことか・・・。
それにしても、幼女体型のサマンサはともかく、エリスは見事なプロポーションだ。美術の教科書に載っていたビーナス像のようだ。出るべきところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいる。ボンキュボンとはこのことだと思った。思わず、凝視してしまった。
「あ! ワタル! 今、いやらしい目で私を見ていたでしょう? 許さないわよ、女神として天罰を与えます」
マズイことになった、見つかってしまった。エリスはそう言うとこっちに向かってくる。
「ホント、男って汚らわしいわね」
楽しそうにサマンサは同調した。女同士はすぐ結託する、助けてくれる気はないらしい。
「こうしてくれるわ」
エリスは意外に力が強い。俺は首を掴まれて、水に投げ込まれてしまった。でも、悔いはない、いいものを見せてもらったから。
その後、新たな仲間を加えて俺達は出発した。目指すはドラゴンの住むダンジョンだ。
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