第一章 第四節
では、わたしたちはなんと言おうか。恵みが増し加わるために、罪にとどまるべきであろうか──ローマの信徒への手紙 6章1節
────────────────────
パストゥールは事切れる寸前、シャルロットの無事を祈っていた。それは絶望という漆黒の感情に染められた彼の魂が
──人間の本質は、私のように実に救い難い…その存在を信じてすらいない者に対しても救いを求める…
突然の絶対的な暴力によって、彼自身の安らかな死は果たされそうにない…
──しかし、このシャルロットの無事を願うこの想いはどうしようもなく無垢だ…
たとえどのようなかたちであってもその願いが聞き届けられることがパストゥールにとっての最後の神頼みであった。
そして、最期に彼は神の姿の一片を見る…
「テオ様…」
それはまるで、
──── 聖母…マリア…
あなただったのだ…
◇◇◇◇◇
「シャルロット!見てご覧!素晴らしい素材だよぉ!」
テオは珍しく興奮を抑えられずにいた。何千回、何万回と繰り返してきた…途中、自らの過ちで大きな痛手を負ったこともあった…けれども今日この日、テオの素材集めはまた1つの進展を遂げた。
『賢者の石』の素材は無垢なる魂により
テオに素材と呼ばれるものは
テオは少し前までエリクサーとダークマターを血抜きした人体という有機体で包むことで『賢者の石』を錬成しようと躍起になっていた時期があった。しかしながら、ジャンヌ=ダルクでのある種の失敗を経て、その手法には少し懲りてしまったところもあった。
そんなテオが今現在、熱中しているのは…エリクサーを核にして、大量のアゾットを核膜に見立て、ダークマターを核と核膜の間に核質として満たすという手法である。これによって、より高密度なエリクサーとダークマターを内包した有機体が完成し…『賢者の石』が顕現する。
──と、テオは信じている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます