第5話Q.普通とは何か

普通。

それは周りと同じこと。

平均的であること。

常識的であること。


目立つこともなく、

場を乱すこともなく、

迷惑をかけることもなく。


普通に生きて、

普通に死ぬ。


それが僕の願いの一つ。

いや、違う。

僕の家族の願いの一つ。


普通の家族に生まれた、

普通じゃない僕の家族の願いの一つ。


「そんなことを聞いて、どうするの?」


彼女は、僕に理由を尋ねる。

声は変わらず、癒しとともに鼓膜を揺らした。


「それはーー」


「普通な人に、なりたいの?」


僕の言葉が届くよりも先に、彼女の言葉が僕に届いた。


「実はーー」


「それは狗飼くん、あなたの願いではないよね。あなたの周りの、あなたじゃない人たちの願い」


またもや、僕が答えるよりも先に彼女の言葉が展開される。


「狗飼くんが普通になろうとなるまいと、私としてはどうでもいいことなんだけれど」


そう言って、猫撫さんはそこで言葉を止めた。


「とりあえず、私の意見を伝えておくね」


少しためて、そう付け加えた。

人差し指をピンと立てて、

誰かが何かを諭すように。

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