第4話僕と彼女の始まりの問題

うっかりしていた。

心の声が漏れていた。

八兵衛もびっくりなうっかり度合いだ。

セルフサトラレしてしまっていた。


どうした、僕。

人畜無害で、どこにでもいそうで、どこにいても問題にならない。

それが僕の個性でありウリではなかったのか?


「ごめんなさいっ!」


「いや、別に謝らなくても」


それより、と猫撫さんは言葉を続ける。

その癒し系ボイスで。


今度は心中のみで語る。

同じミスは二度は犯さない。

これも僕の心情の一つ。

だけれど、今語るべきは僕の心情ではなく、彼女の言葉だ。

猫撫さんの声で紡がれる話だ。


「私に話って何ですか?」


さっきよりは文末が少しフランクになった気がする。

僕の可愛げのあるうっかりで場が和んだのかもしれない。

だけれど、それでは意味がない。

彼女との物語を進ませなければ。

こうして、僕の心情が滔々と流れる物語など愚作中の愚作。


お話を進めないといけない。

僕のためにも、

みんなのためにも。


世界は僕を中心に回っている、とは思わないけれど僕が世界の一部であることも事実だ。

だから、僕のためになることは同時に世界のためにもなる。

規模が違うだけで、その解答を不正解にすることはできない。


「猫撫さんに相談があるんだ」


「相談?」


「より正しくは、『お願い』かな」


聞き返す彼女に、僕は言葉を続ける。

僕のことをまともに写していないその瞳に向けて、

僕のことなんてどうでもいいから、早く帰りたいと思う彼女に向けて。


「普通って、何かな?」


日頃から疑問に思う事柄の一つを投げかけた。

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