第5話 それぞれの道④

 ジェイさんとフレッドも頑張がんばってくれてはいるものの、三人だけでは手に負えない。

「お願い、起きて。」

 もう一度、ランドルフを揺さぶってみたが、相変わらず、反応はなかった。

「もう、ランランったら、肝心な時に。」

 元々は自分が原因だったことも忘れて、セルマはぼやいた。


 ひとまず、ランドルフを引きずって物陰に隠れた。

「次から次へと、まったく、どうしろって言うのよ。」

(セルマさん。)

 セルマが頭を抱えていると、声がした。

「マデリン?」

 マデリンがセルマの側に立っていた。

(杖です。)

 彼女が言った。杖というのが、自分が手にしているスコップのことだと思いいたるのに、少しばかり時間がかかった。

(礼拝堂の絵を覚えていますか?)

 セルマの脳裏に数日前に見た騎士の絵が浮かんだ。

(その杖には秘めた力があると言われています。それを使えば、何とかなるかも知れません。)


「使うったって、どうやって?」

 セルマの問いにマデリンは首を振った。

(私にもわかりません。ただ、奇跡の呪文と関係あるようです。)

 王立墓地七不思議その七『奇跡の呪文』墓地が危機に陥った時、天に謎の言葉が現れ、唱えると奇跡が起きる、と言われている。そんなもの、今思い出したところで、どうにもならない。


 ガチャガチャと音を立てて、何かが近づいてくる音がした。セルマはそっと、隠れ場所から顔を出して見た。兵士の一人がこちらへ逃げてくるところだった。

「わあぁ、誰か助けてくれ。」

 彼の後ろを、ぐるぐる回る緑の何かが追っていた。


「ちょっと、やだ。こっちに来ないでよ。」

 セルマがあっちへ行けと手を振ると、兵士は来いと言われたと勘違いして、こちらの方に向かって走ってきた。後ろから緑の独楽こまが追いかけてくる。

「お願い、力があるなら何とかしてよ。」

 セルマはスコップに向かって叫んだ。

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