第4話 薔薇の王妃②

「ところでセルマ。」

 ランドルフの姿を見てレイは言った。

「あの子、王子様に似てない?」

 セルマは笑い出した。

「まさかのまさか、だって肖像画と違うじゃない。」

 確かに髪と瞳の色は同じだが、描かれていた王子はもっと、背が高くかつ聡明で気品があったはずだ。

「セルマ、ああいう絵って多少は美化してあるものなんだよ。」

「え、ひどい、あれお見合いにも使うんでしょ。詐欺じゃない。」

「大丈夫、相手も修正しているならお互い様だよ。」


「何を話しているのだ?」

 こちらが気になったのか、ランドルフが近づいて来た。

「ああ、ランラン。こっちはレイ。私の友だちよ。」

「我が名はランドルフだ。ところで、そなたは」

 彼はレイの衿に留めてあるゴルゴン商会の徽章きしょうに気づいた。

「ゴルゴンの者か?」

「そうだよ、ねばもー。」

「ゾーラを知っているか。」

 ランドルフが尋ねた。


「知ってる。外商部がいしょうぶの大先輩だよ。」

 レイが答えた。

「これを届けて貰いたい。」

 ランドルフはレイに手紙と、そして指輪を渡した。

「困ったことがあれば、ゾーラに注文を出せと伯父上に言われている。」

 取りあえず良かった。身内と連絡がつきそうだ。後はその伯父様とやらが迎えに来るなりしてくれるだろう。

「ゾーラ先輩に渡せばいいんだね。わかったよ。ねばもー。」

 そう言うと、レイは一回転して大鴉になった。

「じゃあ、レイ私の用事もお願いね。」

「ねばもー。」

 レイは了解の意味で一声鳴くと飛去って行った。


「ところで、伯父様って誰?」

 気になったので、セルマはランドルフに訊ねてみた。

「アンブローズ公グラハムだ。」

 ランドルフの答えに、セルマは思わず額に手を当てた。だめだ、どうやら、王子病はまだ続いているようだった。

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