第3話 緑の騎士②

 夜も更けてきた。見回りに行くので、長椅子で休むように伝えると、ランドルフはあからさまに不快な顔をした。

「何故、この私が長椅子で眠らねばならんのだ。」

「仕方ないでしょ、あなたのベッドはないもの。」

「そなたの物があるではないか。」

セルマはむっとして口をへの字にした。

「厚かましい子ね。居候いそうろうのくせに。なんなら納屋でジェイさんたちと一緒に休む?」

 まあ、明日になったら二人に頼んで余っている棺材か何かで、簡単なベッドでも作って貰おう。


「ところで」

 ランドルフが尋ねた。

「あの者どもは、何なのだ。この私に挨拶すらしないとは、礼儀知らずにもほどがある。」

「ああ、あの二人なら」

 セルマは答えた。

しかばねよ。」

 それを聞いて、ランドルフは鼻で笑った。


「あの者たちがしかばねだと?ばかばかしい。私がそんなことを信じるとでも思っているのか?」

 セルマにからかわれたと思い込んだのか、ランドルフは口をとがらせた。


「死体が昼間からあのように動き回るものか。」

「あの二人は特別なのよ。」

 それを聞いて、少年は余計むきになった。

「ふん、そんな話をすれば、私が怖がるとでも思っているのか?この愚か者が。もっとましな嘘をつけ。」


「そうね。」

 ランドルフの居丈高な口調が、少々セルマの気に障った。

「夜動きまわる死体が見たいなら、ここには山ほどいるけど。」


 しまった、つい、余計なことを口にしてしまった。セルマは後悔した。

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