第1話 墓の魔女⑤

 セルマは連れられて納屋の前に来た。何だか嫌な予感がした。


「紹介します。」

 管理官はガチャガチャと何重にも巻かれた。鎖付きの錠を外した。

 開けると納屋の中には二人の男がいた。


「ウウゥ」

「ヒヒヒ」

 案の定、二人ともだった。管理官は、さり気なく一歩下がって、説明した。


 まず、のっそりがっしりした大男でウゥと唸った男が1号、そして、1号より一回り小柄で、やや痩せた体つきでヒヒと笑った方が2号だそうだ。


「彼らは、墓守の命令に忠実に従うよう訓練されています。力仕事はお手のもの、かつ文字通り不眠不休で働くこともできますし、頼りになりますよ。」

 二人共、仮面をつけていて、素顔は見えなかった。多分、見ない方が良いのだろう。


「では、ひと通りのことは説明いたしました。後はよろしくお願いします。」

 管理官はぺこりと頭を下げた。

「ちょ、ちょっと……」

 彼は、セルマが次の言葉を告げる間を与えず、早口でまくし立てた。

「セルマさん、感謝します。これで家族の許に帰れます。本当に、ありがとう。では、ご機嫌よう。お体にお気をつけて。」


 引き継ぎの管理官は言い終わると、脱兎のごとく駆け出した。スキップしているようにも見えた。墓地の入口には、いつの間にか、馬車が待機していた。セルマが乗って来たものだ。管理官を乗せると、馬車はあっという間に走り去って行った。


「どうしよう。」

 セルマは頭を抱えた。

「ウウウゥ」

「ヒヒヒヒ」


 背後から声が聞こえた。驚いて振り向くと、セルマのすぐ後ろに1号と2号がいた。二人とも、彼女からの指示を待っているようだった。


「ええと」

 セルマは口を開いた。

「番号で呼ぶのもなんだから、名前をつけるね。あなたは」

 彼女は、のっそりがっしりした大男の方を指して言った。

「ジェイさん。」

 それから、もう一人の一回り小柄で痩身の男の方を指した。

「あなたはフレッド。よろしくね。」

「ウウウゥ」

「ヒヒヒヒ」

 二人は彼女のつけた名が気に入ってくれたようだった。

 こうして、彼女の墓守生活は始まった。

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