臨深履薄

君主が暖衣飽食できるのは誰のおかげか。もちろん、人民のおかげである。人民がもし耕さず、織らなければ、君主もまた飢えや寒さを逃れることはできない。君主がもし自分で耕して食べ、自分で織って着るならば、その君主はもはや君主ではなくて人民である。君主はその職分によって君主にもなれば人民にもなる。永久に人民であったり君主であったりするのではない。

秦の二世皇帝は天下大乱を招き、漢高(漢の高祖・劉邦)は泗水の亭長から身を起こして秦を亡ぼした。漢高は賤しい人民の一人に過ぎなかったが、一旦登極すれば、秦二世皇帝と同じ高さの位に就いた。この道理をよく弁えて、深淵に陥らず薄氷を踏み抜かぬように(臨深履薄)、注意深く危険を逃れるならば、永く天職を保つことができよう。『書経』に曰く、「庶民が満足しなければ君主は彼らと共に成功することはできない(『書経』「商書 咸有一徳」匹夫匹婦不獲自盡民主罔與成厥功)。

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