第17話
秋穂は私がシングルマザーであることに驚いていた。そして働きながら子を育てていることを真剣に褒めてくれた。離婚してから下に見られたり同情されることはあっても褒められたことは身内からでも一度もない。
結婚に失敗した憐れで先見の明がなかった馬鹿な女としか思われることは無いと思っていた私にとって秋穂の言葉は響いた。そして桃香のために歯を食いしばって必死に生きてきた毎日が報われたように気分になった。
私は秋穂を知ることで自分を知り、秋穂の傷を見ることで自分の傷の深さに気付いた。私は傷ついていたのだ。日々の忙しさに自分の傷口にまでは目が届いていなかったが、私は世間からの冷たい目に怯え、普通に母や主婦をしている女性たちとの差から生み出される劣等感に苛まれていた。いや、他の何よりも自分が自信のない自分を認めてやれていなかった部分が一番大きな病巣であった気がした。その傷口から滲み出てくる苦いものが私の心を腐らせているような画が頭に浮かんだ。
普通という高いハードルを越えられなかった私の人生を言葉にして認めてくれる人が現れたことが嬉しくてたまらなかった。
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