第11話

 母は一般企業での仕事を見つけろと、最後まで私を説得したが、母自身も家計のことは気になっていたのだろう、最後は体だけは売らないと私に約束をさせた上で夜の仕事を始めることを認めてくれた。そして母親以上に反対するであろう父親には今まで通り、スーパーで働いているということにしておいてもらった。その方が下手に説明して反対されるよりも面倒がなくていいと思った。


 今は身内同士で揉めている場合ではない。恥も外聞もない、とにかく生き抜くことだけを考えなければならなかった。


 予期せぬサバイバルな人生を生き抜くにはまだまだ私は若かった。しかし若いからこそできる生き方もある。夜の世界はどんなジャンルの仕事であっても若さと容姿が一番物を言う。その世界でのマナーや営業方法は後からいくらでも勉強できるが、人生で一番綺麗な時期は一瞬で過ぎ去って二度とやっては来ないのだ。

 

 その世界で稼ぐなら今しかなかった。他に生きる術を持たない自分を情けなく思う反面、腹を括った自分の逞しさが少し誇らしく思えた。


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