第3話◇仔犬とおばあさん

「おや?まだあの子はあそこにいる」

 気になってエサをおいたはずだったけど少しも減っていないことに気づいた

「どうしたのかい?」

 小さなその身体はやせ細っていた。

「可哀想に捨てられちゃったんだね、それにしてもどうしてこの場所に…」

 優しく抱えて家に連れて帰った。

 しばらくすると仔犬は目覚めて部屋を回り出した。

「大丈夫だよ、ここは安全だからね」

 そっと撫でてあげると、仔犬は落ち着いたみたいだった。


 台所に行きお椀にお水と犬のエサを入れた皿を持って来て仔犬の前に置いてみた。


「また食べてくれないのかね」


 じっと見ていたら

 やっと少しだけ水を舐めたみたいだった。


「大丈夫だよ~食べても大丈夫なんだよ~」


 優しく優しく話しかけていくうちに仔犬は少しづつエサを食べ始めた。


「ほら、美味しいだろ、もっとたくさんあるからね、落ち着いて食べるんだよ…」


 すっかり食べ終えた仔犬がそろりそろりと近づいてきてペロリと手を舐めてきた


「もう少し食べるんだね」


 お皿に足したエサをすべて平らげて満足そうに初めてしっぽを振った仔犬をみて、去年まで飼っていた柴犬のことをおもいだしていた。

 老衰で天国へ行ってしまったラッキーを見送ってからは1人でこの家に住んでいる。


「私は、年寄りであと何年生きられるかわからないけど、ウチの子になるかい?」


洗濯物を取り込もうと庭に出たら


仔犬は一緒に出てきて


またあの場所に行ってまあるくなった


あの場所は1週間まえに子グマが猟友会によって射殺されたところだった。

「あのクマと何か関わりがあったのかね」


来る日も来る日もその場所を離れない仔犬はやがて大きくなった。


朝から夜まで毎日その場所でまあるくなって誰かを待っているようだった。


「気が済むまでいたらいいよ」

そう思いながら毎日エサを与えた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る