家出した『こども』が海で入水自殺を試み、『ねこ』と出会うお話。怖い話。掴み所のない、なんだか心許ないような不安感が魅力だと思います。最初の章(砂の城)が好きです。例えば「海へと近づいて、」から「私はどこに帰ればいい?」まで。淡々と、シンプルな短文を積み重ねる書き方。内容が少しずつ、事実の描写から主観的な思考へと移っていくところ。ここの流れが読んでいて気持ちよかったです。最後、抽象的で暗示的な幕引きの、でも「いる」と二度も言い切るところが印象的でした。