これからの話

「それでどんな筋書きでいくんですか?マスター」


リビングのテーブルにはジンとリア。そしてユーシェとセバスが座っていた。


「まずは王侯貴族を中心に奴隷を買い集める。次にそれらに仕える騎士や兵士や国の役職に着くもの。最後に高ランク冒険者、商人、傭兵、他にも優秀な奴隷を買う」


「またかなりの出費ですね?」


「元々あった金も考えると焼け石に水だろその程度」


「まぁ・・・確かにそうですね」


「安心しろ。お前が貯めてくれてた金には手をつけてない。おれが貯めてたやつだ。とりあえず・・・現状魔族以外は喧嘩ですらその3割が奴隷落ちしてくこの大陸だ。リンフに聞いたが今大陸を占めているのは6割が魔族らしい」


「それはまたかなりの数ですね」


「かつては人族や獣人族で7割占めていた大陸だぞ?しかも死んで7割から4割に減ったんじゃない。3割・・・600万人いたとして180万人がディラン大陸に奴隷として引き上げられたんだ」


「ええ。ジンの言う通りよ。言われて調べてみたけど戦争で負ける以外で虐殺とか一気に何十万も人が減るような歴史は特に見当たらないの。その代わりディラン大陸から多くの魔人達がやってきたわ」


「トレードに近い感じだな。つまりこの大陸の国々はリノス帝国に戦争で負ける。奴隷を献上する。リノス帝国と属国で次の国を攻める。これを繰り返してきた。あってるよな?」


「合ってるわ。現に他の国々は人員を差し出す代わりにその運営に魔族が介入することは中々ないわ」


「それは魔族の特性だからな。攻めたいだけで地位を築きたい訳じゃない。自分達の強さを誇示したいんだ」


そんな設定だったからな。事実他の種族に比べて絆とか団結力みたいなものは1番低い。数が少なかったのもそれぞれが争っていたからだ。


「ふむ・・・何故ジン様はそのように考えるのですかな?」


「・・・そのように作ったからだ」


「え?」


きょとんとした顔でジンを見るユーシェとセバス。


「いいんですか?マスター。まぁユーシェちゃんとセバスなら大丈夫そうですけど!」


「ジンどういう意味?」


「この世界を作ったのはおれなんだよ。まぁ雛形だけだけど」


「ま、またジン様ご冗談を」


「んー・・・本当の事なんだがな・・・それとおれはこの世界の人間じゃない」


「・・・それは異世界から?」


「ああ」


「もしかしたらとは思ってたわ。魔法にアイテムに知識に・・・1番驚いたのはジンとリアのレベルだったけど」


異世界から来たという言葉はどこか納得したようなユーシェだ。


「ユーシェ様の言う通り。桁外れな強さを持ってるのはわかります。恐らく2人なら私たちなどいなくても大陸を支配できるはずだ」


「それをしない理由は簡単!この世界が好きだからだよ!最初奴隷商館に行った時思ったの。マスター達が作ってくれた世界。私の大好きな世界でそんなことが起きてるのは・・・許せないって」


「リア・・・」


そうか。商館に行った時のリアの顔はそんな意味があったのか・・・。


「別に信じろとは言わん。セバスの言う通りリノス帝国を滅ぼすだけならリア1人でも恐らく可能だろう。だがその先は?おれやリアが国を治めるのか?それを選択しなかったのはお前たちの手で取り返して欲しいと思ったからだ」


「それは・・・やはりジンがこの世界の人間ではないから?」


「それもあるけどリアと約束したんだよ。おれと仲間で作ったこの世界を一緒に旅しようってな。政なんて関わりたくもない」


「マスター・・・」


「では・・・本当にこの世界を?」


「物語と遊戯としての世界・・・といえばいいか。リアはパートナーだが元々の役割はこちらの世界で言う所の魔道具だ」


「・・・ジンが本当に作ったの?」


「おれとその仲間だけどな。そうだな・・・分かりやすく言えば・・・ユーシェが何か物語を書くとしよう。神やそこに住む種族や魔物を」


「ええ」


「その物語をある日・・・その物語に登場するキャラクターが誰かに願うんだ。この物語を現実にしてくれと」


「・・・・・・」


「そして現実になる。これで物語だった世界は現実の世界としての雛形ができた。だが現実になった事で弊害も起きた。その物語にはストーリーがあるよな?誰と誰が結婚してとか」


「・・・ええ」


「そこには描かれたはずの未来が無かったんだ。ユーシェが書いた人々はユーシェのシナリオを離れてそれぞれが道を歩き始める」


「そ、その・・・リアが誰かに願ったってこと?」


「うん。私が願った」


「信じなくても別に構わない。おれに・・・おれとリアに理由を求めるならそんなところだって話だ」


ユーシェとセバスは顔を見合わせる。信じたいが信じられない。そんな表情だった。


「リア様が願ったのは誰なんですか?」


セバスがリアに問うがリアは首を横に振る。


「その時の私は・・・今より自我も感情も薄かったからアレが何者かとかわからない。それこそこの世界の神様じゃない別の何か・・・かな?ごめんねよくわかんないんだ」


「それもいずれ突き止めないとな・・・それで、だ。その他にも目的がある」


「目的って?旅以外に?」


「そう。たまにいるんだろ?異世界人が」


「・・・ええ」


「その異世界人達はおれとリアの・・・いや。おれのせいでこの世界に来たってことだ」


「それは・・・そうなるのでしょうな。ジン様は何が言いたいのですか?」


「おれがいた世界には魔法やスキルや魔物なんていなかったんだよ。種族も人だけの平和な・・・まぁこちらの世界よりは平和な世界だった」


「魔法も?人だけって・・・そしたら私みたいなエルフは?」


「創作物の中にしかない」


「そんな・・・」


「で、だ。そんな世界で生きて来た人間がこの世界にいきなり訳もわからず飛ばされてくる。言葉も常識も通じないんだぞ?身を守る術すらどれが食えてどれが毒なのかもわからない。おれがこの世界を作ったから・・・関係ない人たちを巻き込んでしまったんだ」


「それは・・・ジン様・・・心中お察ししますぞ」


セバスもユーシェもジンの想いが伝わったようだ。


「だから異世界人を探している。過去に飛ばされて歴史に登場してる人もいる。この手で殺めることになった人もいる。他にいないとは限らない。だから見つけて・・・その責任くらいは負いたい」


「そういう事でしたか・・・」


「何も気づかないでお嫁さんになりたいとか・・・ごめんなさい」


セバスは神妙な顔で、ユーシェは浅はかだったと自分を諌めた。


「気にするな。だから2人にもナンバーズにもいずれ異世界人に関する情報を集めてもらいたいし、力を貸してほしい」


「もちろんです。ジン様の思いを聞いて・・・これまで以上に尽力させてください」


「私も力になると約束するよ。王族じゃなくなったけど家族達の絆が切れたわけじゃないし、それにこの大陸を解放出来れば・・・奴隷落ちしてる人達も力を取り戻せる」


「ありがとう2人とも」


「ならナンバーズも増やしていく?」


「いいですね!増やしていきましょうよマスター!」


「増やすってな・・・いずれ奴隷から解放して身分を取り戻したら解散するつもりなんだけどな・・・その上で協力してくれって話だよ」


「ええーーー!そんなー・・・せっかくみんなと打ち解けて楽しいのに」


「リアの言う通りよ。もしも私が第2王女の身分を取り戻したとしても統括隊長を辞任する気持ちはないからね?」


「私もです。久しぶりに教官に戻ったら楽しいものですな」


はははと笑い会うのを見ているとそれはそれで解散しなくてもいいのかな?と思うジンだった。


「まぁ屋敷の手配も済んでるし、そろそろ奴隷落ちした人達を確認しに商館にも顔を出さないとな・・・」


「それなんですけどマスターがわざわざ行かなくてもいいんじゃないですか?」


「そうだよ。ナンバーズの誰かに担当させるよ」


「でしたら情報部隊から人を出しますよ。ジン様は指示だけしてくれれば」


「なら一緒に連れてって面通ししとくか」


この後ナンバーズの中からリンフとの交渉役を選び連れていくジン。その場で各国王族達が3人と騎士や兵士達をさらに150人。学者や商人や先生といった様々な職業の人達が30人を買った。


ホームの部屋はさらに増えていく。

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