日常
「マスター!朝ですよ!朝が来ましたよ!初夜だと思って私待ってたけどもう朝がきましたよ!!!」
「リア・・・うるさい」
薄らと目を開けると目の下に軽くクマを作ったリアがそこにいた。寝とけよ。なんだよ初夜って。
「もう~でもマスターの寝顔に癒されたんでいいです。何時間見ても飽きません」
「寝ろ」
「だーかーらー朝ですよ?朝ごはんも作ったんで温かいうちに食べて欲しいです!」
「ん。後でな」
「マスター!」
「わかったわかった。顔洗ったら行くから・・・」
「はーい!」
寝てないのに朝からあそこまで元気になれるとは。それだけ待っていたということか。しょうがない。
ーーーーーーーーーー
「朝飯うまかったよ。ありがとう」
「良かったです。カイザードラゴンで作ったベーコンとフェニックスの卵焼きは美味しいですよね!頑張ったんですよ!」
「え?それって」
「はい!見果てぬダンジョンのボスです!最下層帯の!」
「ちょっと待てそんな強いのか?リアは」
「あ、ステータス見ますか?多分鑑定で見れますよ?」
鑑定。情報を知りたいと思いながら念じるとリアのステータスが脳裏に浮かんだ。
名前/リア
年齢/永遠の17歳
種族/人族
職業/AI(愛)魔法戦士
レベル3112
HP95415
MP59654
攻撃力9112
防御力10102
魔攻6321
なるほど・・・これだけレベルがあればそりゃレベル850のカイザードラゴンやレベル700のフェニックスなんてただの食材だわな。HPだって1万あるか無いかだしあいつら。
ちなみにゲームでの一般人のレベルは10。冒険者のAクラスで100前後。Sクラスで150。SSクラスで200。SSSはそれ以上になるが、確か500を超えたプレイヤーはゲーム終了時点で片手居たかどうかなのだ。
お分かりいただけるだろうか?40年で500である。最初は上がりやすいものの200を超えると途端に上がらなくなるのがリアルフェイス。1年で10上がればレベリングのプロと呼ばれる程度にはキツかったはずなのだが・・・どうやって?
改めてリアを見ると褒めて!と顔面に書いてあったのでスルーした。それよりも、だ。
「この永遠の17歳ってなんだこれ。バグか?」
「褒めてくださいよ!・・・それは私がAIに起因するからだと思いますよ?言ったじゃないですか?姿や形は変えられないけどサポートとしての機能はちゃんとありますよって」
「それで歳もそうなのか。というかサポートはゲームと同じことができるのか?」
「そうですね。マスターの代わりに習得したものはマスターも使えますし、バフ系もアイテム生成も鍛冶もなんでもサポートとしてお役に立てますよ?あとは・・・基本なんでも出来るんですけどその・・・命令して欲しいというか」
「指示をくれと?」
「はい。そこはサポートAIの性というか」
「そうか・・・なら指示は基本的には自分で判断して行動しろ、かな?あとはいのちだいじに、ってとこか」
「わかりました!回復だろうが蘇生だろうが浄化だろうがばっちこいです!」
「そか。その意気だ」
「マスター冷たいです!」
「それで・・・出発は今日でいいか?確かキーラの町までならそう遠くないはずだが」
「シカトですか!?キーラまではゲートを作れば1秒ってとこですかね」
「それどこでも1秒だから。歩いてだから」
「歩くとだいたい1時間くらいですかね?でもマスターと一緒なら嬉しくてスキップになると思うんで5分ですね」
どうやったら1時間が5分になるんだよ!それスキップじゃなくて縮地だわボケ!と、ツッコミたい気持ちを飲み込むマスターであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キーラの町。人口約1000人の小さな町。主な産業は農業しかない廃れた町である。リアルフェイスでは最初の町として登場する。
「ほんとに5分で着いたな」
「ルンルンだと時間過ぎるのあっという間ですよねー!」
「一般人からしたらあれ縮地の奥義かなんかだったけどな」
「あ、マスター!あそこのケーキ屋さん美味しいんですよ!」
聞いていない。心做しか目がいちごになっているリアをシカトして町を見渡した。確かにNPCではない。活気があり、笑いや怒鳴り声や子供たちの走り回るその様はまさにリアルだ。中には獣人族や亜人族と言った人とは違う種族等も複数見かけることができた。
「さて、ケーキもいいが宿を先に確保するぞ?キーラの町は確か宿が・・・あったあった。おーい置いてくぞー」
「マスターのおに!」
ーーーーーーーーーー
「いらっしゃい。とまり木の宿へようこそ。お二人かな?」
「ええ。とりあえず3日おねがいしたいんだが」
「3日ですね?部屋はお一つで?」
「あー・・・まぁ一つで」
「マスター!」
横で目をキラキラさせている擬人化されたAIは置いておこう。
「なら前払いで銀貨3枚。飯は一食銅貨5枚からで、風呂も銅貨5枚だ。その都度言ってくれ」
「わかった。なら銀貨3枚。飯は・・・部屋を確認したら外でなんか食べるから今日はいらないかな」
「はい。毎度あり」
部屋はベッドが二つにテーブル一つと椅子が二つにタンスが一つの簡素な作りだ。
「今夜はマスターと一緒・・・今夜はマスターと一緒・・・うぷぷぷ」
「気味の悪い呪文はやめろ」
「酷いですー!それよりどうしますか?ご飯はストレージか外で食べるとしても何か見て回りますか?冒険者ギルドとか」
「あーそうだな・・・ちなみに今のランクはどうなってる?」
「今は私もマスターも黒ですね」
「黒?黒金じゃなくて?」
「あーできたんですよ新しく!F~Aは青、黄、緑、赤、銀、金で、Sは白銀、SSは白金、SSSは黒金、そしてそれ以上のEXが漆黒の黒です」
「そんな制度出来てたのか」
「一応1年に一度ギルドが出してるSSSランククエストを一つクリアするのがノルマになってますけど、ギルド加盟店なら魔人族や獣人族等そこは種族関係なくどこに行っても公爵クラスの待遇は受けられます」
「ふーん。便利だな」
「そうですね。船とか蒸気船とかもこれがあればほぼフリーパスで乗り放題ですし、閲覧制限のかけられている書物を読めたり一部の禁足地に行けたり国外へ出る時の税関などもスルーできたりしちゃいます」
「便利すぎるな。ならキーラの町を出たら王都か帝都に行ってみようか?」
「いいですね!なら帝都に行きましょう!あそこは最新のケーキが並ぶらしいんです!」
こいつ・・・。
「なら三日ほどここに滞在してから・・・行くか」
結果昨日寝てなかったのに今日も寝なかったリアさんは二日目を丸々寝て過ごしていた。
こうして三日間滞在した訳だが・・・さすがキーラの町、もとい最初の町である。それでもシナリオが崩れたせいかそこそこレアな武器や魔法薬なんかも見受けられたがその程度だった。ギルドに行ってみてもストレージ内でカンストを数回しているであろう素材集めや今倒したところで経験値が1来るかすら怪しい低級モンスターの討伐。やる気が起きるわけが無いのだった。
そして出発の朝。今回帝都までの移動は馬車にした。乗る訳ではなく護衛だが。しかもケーキ屋の。なんでも帝都まで材料を卸しに行くそうだ。もちろんリアが満面の笑顔でケーキ貰っちゃったんですよー!お手柄ですねー!と勝手に契約してきた訳だが。
はぁ・・・先が思いやられる。
「どうもこんにちは。私はジーナってんだけど、リアちゃんにはよく買って貰っててね。そのご主人様だろ?まさか黒ランクとは思わなかったけどこれで帝都まで安心だね!がはは」
豪快に笑う体格のいい中年のおば様が護衛対象だ。報酬はケーキ3ホール。顔面ケーキ用におれも3つほど買おうかな。きっとリアも喜ぶだろう。
はしゃいでるリアを横目に森の中へと入っていく。脳内マップを開くと半日で5分の1ほど来たようだ。これならあと二日あれば十分着くだろう。
「マスター敵影です」
「ふむ・・・なんだと思う?」
「モンスターですかね?数は全部で15体・・・あと5分くらいで遭遇しますがどうしますか?」
「おれも確認した。陣形を組んでるあたりモンスターではない・・・か?」
「盗賊ですかね?」
「恐らく」
「なんだい?リアちゃんどうしたんだい?」
「恐らくこの先に盗賊かモンスターがいます。先行してやっつけてしまいますね!」
「本当かい?あらヤダ・・・無理はしないでおくれよ」
「大丈夫リア1人でカタがつくだろう。リア」
「はい。では行ってきます」
ーーーーーーーーーー
「大丈夫かねぇ・・・私はいいからあんたも行ってやりなよ」
「大丈夫」
脳内マップで確認したところどうやら瞬殺か?一箇所に纏めてるあたりやはり盗賊か。それとでかいのが一つ・・・なんだこれは?
「マスター!あなたのリアがやりましたよ!」
先行していたリアが駆け足で戻ってきた・・・間違ってないがその言い回しは何なんだ。
「そうか。やはり盗賊か?」
「そうです!ダークバインドで影ごと全員縛って一箇所に纏めてから逃げないように召喚獣に見張らせています!」
「よくやった」
「えへへー」
「た、助けてくれーーーーっ」
「なんだ?なんか聞こえたが」
「あー多分盗賊さん達じゃないですか?ちゃんと待てしてきたんで大丈夫だと思いますけど」
なんだよ待てって。
「頼むから助けてくれっ!誰か!」
盗賊が見えてきたが・・・あれは犬か?違うな。
「ケルベロスか」
「ほらちゃんと待てしてます!いい子ですねー!」
なんだろう頭が痛くなってきた。どこにたかが盗賊の見張りにSSランクのケルベロスを召喚するアホがいるのだ。ここにいるのだが。
「まぁ!おっきいわんちゃんねぇ・・・」
ジーナ・・・ケルベロスだから。わんちゃんかと聞かれたらワンチャンイヌ科なんだろうけど体長15mもある犬なんていねぇから。魔獣だから。地獄の門番だから。わかるかな。
最近ツッコミが多くなってきた気がする。
「んで・・・こいつらどうするんだ?」
「盗賊は帝都に持ってくとお金に変わるんです!」
「アホな子がいる」
「え?なんですか?」
しまった。心の声が漏れてしまったか。盗賊を福引の引換券か何かと勘違いしてないかコイツ。
「まぁいい。アースケージかロックジェイルの中に入れてケルベロスに担がせるか」
「そうしましょう!不死王の鳥籠っ!」
「・・・絶対わざとだよな」
「え?なんですか?」
「いや・・・なんでその魔法にしたのかなって」
「あーなんかカッコイイじゃないですか!それにこれだったらどんなに暴れても夜でも安心です!安心して寝れますよ!」
うん。どこの生理用品かな?とりあえずそれ閉じ込めるのは閉じ込めるんだけどどちらかと言うと封印魔法だから。ケルベロスが自分にかけられたと勘違いして漏らすレベルのやつだから。見えないかな?鳥籠の中めっちゃ怨念?幽霊?埋め尽くされてるの見えないかな?ほら、盗賊達がみんな静かなのわかる?あれ全員鳥籠のデバフ食らう前に恐怖で気絶してるから。
不死王の鳥籠。最上級封印魔法の一つ。指定範囲内の対象者を任意で怨霊や悪霊の閉じ込められた鳥籠に封印する。状態異常を任意でかけることが可能。
「とりあえず・・・帝都に向かうか」
結果、なんとか疲労感を覚えながらも無事帝都まで送り届けたジン達一行であった。尚、盗賊達は全員の懇願で帝都前で鳥籠のから解放し、ケルベロスにも帰ってもらった。盗賊達は引き渡しの際に兵士にすがり付いて助かったと号泣していた。そして盗賊15人は金貨15枚へと変わった。
「それじゃここで大丈夫だから。またお店おいで。サービスするからさ」
ジーナと別れ、報酬のケーキと顔面ケーキを購入したジンとリア。ジンは宿を取り、リアはそのまま帝都でも人気だというケーキ屋へ直行していた。
「顔面ケーキに爆裂魔法でも付与しとくかな」
イラッとしていたジンであった。
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