32.ゴットハルト鉄道

 多和田葉子の短編集『ゴットハルト鉄道』。講談社文芸文庫なので、かなりお高いのですけれど、作品から感じられる文章の力はすごいものがある。不思議な雰囲気の、詩のような文体で、語りえぬ凄みがある。

 表題作の『ゴッドハルト鉄道』は、「わたし」の一人称で語られるが、その「わたし」がそもそも不思議な人間である。もちあわせている感性が普通ではなく、その視点で語られるヨーロッパの風景は、ふしぎに幻想的だ。そして、どことなくおどろおどろしい。

 全体として、女性の神秘にふれる作品であると感じた。あらゆる意味で。

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