カーク・パック、盾となる

 敵の本館が間近に迫っていた。

 停車場を駆け抜け、中央広場を抜ける。突き当りに本館の入口がある。さらにその本館の左右には、小型の2階屋の建物が張り出すように控えている。従者や衛兵が詰める〝騎士の館〟に、侍女や領主の女性家族が寝起きする〝淑女の館〟だ。

 その2つの小館に挟まれるように中央広場があり、本館の正面には3つに木製の扉があり固く閉じられている。

 それを開けようとダルムさんとプロアさんが手をかける。私を中心として、右にカークさんが、左のパックさんが周囲警戒をしている。

 

「開けるぞ」


 ダルムさんがそうつげながら分厚く荘厳な扉にてをかけ開けていく。

 

――ギィィィッ――


 扉がきしんだ音をたてて開き、私たちがその中へと入っていく。ダルムさんとプロアさんが先に、その次に私が入ろうとする。

 その時――

 

――ドンッ!――


 私の背中が不意に突き飛ばされる。その分厚く力強い手の感触からカークさんが背中を突き飛ばしたのだと悟った。即座に扉が閉められ、向こう側と此方側とで分断されてしまう。私は思わず叫んだ。

 

「カークさん! パックさん!」


 扉越しに叫べばパックさんの声がする。

 

「伏兵です! こちらはおまかせを!」


 カークさんの声も聞こえる。

 

「領主の首はお前に任せた! ここは引き受ける!」


 本館入り口左右の騎士の館と淑女の館、それぞれに伏兵を配置していたのだろう。幾重にも幾重にも待ち伏せを重ねる。そのいやらしいやり方にアルガルド領主のデルカッツと言う男の品性がにじみ出ていた。

 

「ご武運を!」


 月並みだがそう叫ぶしか無かった。

 ダルムさんが言う。


「中には、まだ人の気配はない」


 プロアさんが言う。


「一気に進むぞ」


 私は頷く。

 

「行きましょう」


 これで残りは3人、どれだけの人員が配置されているのか、想像もつかない。だが、進むしか無い。

 全ての禍根を断つためには勝たねばならないのだから。

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