ラメノと少女たちと通信師

 次に私が見かけたのはダルムさんと通信使のラメノさんだった。

 村の通信師資格者たちと一緒に打ち合わせをしていた。


「――通信師が7人も居るのか。これなら全体の連携も楽になるな」

「はい、亡くなられた前領主様が正規軍との連携には必須になるから――と申されましたので。それならばやる気のある子で全員でと資格取得をしたんです」


 村の通信師である女性たちが話している。そこに私たちと行動をともにしていたラメノさんが告げる。


「すごいわね。普通は適性もあるからなかなか難しいのに」

「そこはみんなで助け合って勉強しましたから」


 村の通信師の女性たちは皆若い。下は13、上は17まで、柔軟な頭を持つ若者だからこその頑張りだった。そんな彼女たちにラメノは言う。

 

「私は傭兵から通信師に職業替えで遅かったからなかなか取れなかったのよね」


 ダルムさんが問う。


「何回受けた?」

「2回、1回目落ちて2回目でパス」

「まぁ、結果として取れたんだからいいじゃねえか」

 

 明るい笑い声が出る。


「それはさておき――、多分、一人は別動になると思う」

「え? どうしてですか?」

「それはだな――おっとちょうどいいとこに来てくれた。隊長!」


 ダルムさんが私へと声をかけてくる。その意図を私は察した。


「なんでしょう? 通信師の割り振りですか?」

「あぁ、どういう分け方になるかわかるか?」

「はい――」


 私は彼らに歩み寄ると説明する。


「総勢で8名になりますが、うち1名は物見台のある山頂の方へと行っていただきます。そこで遠方に見えるものを逐次伝えてもらうことになります」

「やっぱりそうなるか――そうなると誰が行くかだな」


 8人居るうちの一人――ラメノさんに視線が集まるが――


「テラメノ通信使は西方平原に同行していただきます。元傭兵ということで戦場対応も期待できますから」


――戦場はピクニックではない。実力と状況に対する適正が物を言う場所なのだ。だからこそだ――


「メルト村の方で一番の年長の方はどなたですか?」

「はい」

 

 私の問いに長身の一人の女性が自ら手を上げた。自分の役割を知っているかのように。


「では、物見台担当の他の方と一緒に先行していただきます。大変な役目ですが活躍期待してます」

「了解しました」


 若い年頃の子たちはどうしても知り合える同士で群れたがる。だが、任務となるとそうは行かない。年長の子はそれをわかっているのだろう。だから自分から手を上げたのだ。

 そして、ラメノさんが言う。


「その代わり、現場では私が一番面倒な場所引き受けるから。それでいいわね? 隊長」

「はい――、それではドルスさんを中心として遊撃部隊を編成する予定なのでそちらに回っていただきます」

「え?」


 ラノメさんの驚きの声が上がる。


「マジ?」

「えぇ、あの人、足が速いから遊撃任務に向いてるんです。それともなにか疑問でも?」


 ラメノさんも自分で言った手前、撤回はできない。笑顔が固まっているのがわかる。

 まぁ、アノ人の第一印象からするとそう言う反応になるのは致し方ないけどね。


「大丈夫ですよ。あの人、普段はああだけど任務についてはしっかりしてますから」


 その言葉にダルムさんが苦笑しながらも頷いていたのが印象的だった。

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