第5話 勇者、やっちまうか?

八方塞がりな会議が続いていた。

勇者の耳には届かないように、聖剣引き抜き大会を開催する噂を広めるのは難しい。

いやー、本当にムズい。


「村長、どうしたらいいんですか?」

「それを話し合っているんじゃろぅ」

『噂を広めるのやめます?』

「でもそれじゃ、大会の参加者が増えないんじゃないですか?」

「やらないよりはマシじゃない?」

「参加者少ないと、大会運営の採算取れないんじゃないかな?」

『そうよ、そうよ』

「そもそも噂を広める相手を限定して外すなんて、できるのか?」

『いっそ私のスキルの出番じゃない?』

「!?」



何かと宿屋の娘は暗殺スキルを使いたがる。

物騒な話だ。

だが、村のためになるなら…と薄っすら考えるワシは村長失格なんじゃないだろうか。


いやいやいや、そもそも勇者暗殺しちゃアカン。

暗殺される勇者もどうかと思うが、暗殺はアカン。

勇者暗殺できるやつなら、そいつが魔王も暗殺できちゃうような…。

つまり、簡単な話ではないのだ。


聖剣を使って魔王を倒して欲しい。

だが、その聖剣が村から無くなったら村は存続出来ない…。魔王が滅ぶか、村が滅ぶか…。


「村が魔王と互角な感じがしますね(笑)」


なんて若者は気楽なんじゃろう?

村長、ストレスで胃が痛いですよっ。

ワシが先に滅びそうじゃよっ。


会議は進まない。

どうする大会、どうする村。

どうなる聖剣!!


『やっぱり私のスキルで…』


勇者暗殺は…ダメ、絶対!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る