第3話 村の知名度をあげよう

「足りないです…」

『足りないわね…』

「足りんのぅ…」


村人らが集まる集会所では、みんな口癖のようにそう呟いていた。


「今年のこの観光客の数では、村が維持できませんよ…」


そう、足りないのはズバリ観光客。

村人からしてみたら余所者よそものである。

商店街の武器屋、防具屋はもちろんのこと、

道具屋や飲食店は余所者が来ないことにはなかなかどうして厳しい。

まだ道具屋、飲食店は村人も使うが宿屋なんかはモロに煽りを食らう。


「困ったのぅ」

「いや、まだ村長やシスターは聖剣を抜きに来た冒険者から挑戦料貰えてるじゃないですか」

「挑戦料は全て村の共有財産にしとるよ!?」

「そうです!冤罪をかける汝にホーリーライトを食らわせますよ?」

『シスター、止めて』

「暗殺スキル持ちがよく言うよ」

『今言ったの誰?スキルの熟練度あげさせてもらおうかしら?』


いかん、殺伐としてきた。

村人同士がバトルになる日も近い。

…ちょっと待てよ?バトル?バトルか!


「聖剣があることをもっと広めてみんか?」


村人らはキョトンとしている。

そうでしょうとも、そうでしょうとも。


「聖剣を抜く挑戦を大会にしてみんか?」


あっ!という顔をする者もいるがまだまだ。


「伝説なんか知る者も信じる者も少ないじゃろ?だから挑戦者自体が少ないのじゃ」

「だから話題性を高めて挑戦者を増やして、挑戦料を稼ごう、と?」

「うむ」

『村長様までまさかホーリーライトを食らいたいのですか?そんなバチの当たるようなことを』

「シスター!だからホーリーライトは止めて」

「村長なんか消し飛んじまうよ」

「人をアンデッドみたいに言わんでくれ」

「そうよそうよ、どうせ寿命で近いうちにアンデッドだけどまだギリギリセーフなんだから」

「………」


ヘコむ村長と凍りつく会議の空気


「…でももしそれが勇者の耳に入れば勇者が来てくれるかもしれない」

『確かにそうね、いつ来るかわからないなら呼んじゃえばいいんだわ』


そして、合意の空気になっていき…


初の『聖剣引き抜き大会』が開催されることになるのだった。








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