第2話 モンスターが現れた

ワシはこの村の村長。

いつか勇者が現れて、魔王を倒すためにこの聖剣を抜いていく日を待っている。


「村長、村長!」

「どうしたんじゃ、村人A」

「あ、現れました!」

「…なんじゃと!とうとう勇者が現れたか!」

「いえ、モンスターが!」

「…なんじゃと?」

「だから!モンスターが現れました」

「紛らわしいっ!」


確かに聖剣を勇者が手にすれば、それは魔王軍にとっては驚異でしかない。

かといって、簡単には勇者を倒せない。

ならば、聖剣の方を…ときたか!

しかし、そこは聖剣の刺さる地である村。

モンスターにも多少なりとも襲われてきた。

自警団くらいなら、この村にもある。


「自警団に連絡じゃ」

「了解しましたっ」


と、そこに宿屋の娘がやってきた。

大きな袋を抱えていた。


『久しぶりにいい稼ぎでしたっ』


中身はかなりの額のゴールド。


「団体客でも宿泊していたかのぅ?」

『何言ってんですか(笑)そんな客が来るような観光地ないじゃないですか』

「じゃあそのゴールドは…」

『そりゃモンスターから』

「!?」


シレッと放つには物騒なワード。

村長と村人Aは固まる。


『買い出しに出たらモンスターが来たって聞いたから久しぶりにスキル活かせるなって』

「え?あのモンスター倒したのか?」

『ダメでした?』

「どうやって!?」

『だからスキルで』

「どんなスキルなんじゃ?」

『暗殺』

「!?」


まさかのカミングアウトに空気が凍る。

宿屋の前の経歴には触れないでおこう。


勇者はいつ来てくれるのだろうか。

暗殺スキル持ちの宿屋に泊まるんだろうか。

村長は、遠い目で夕日を眺めていた。


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