第45話 色々片付ける
貴族諸君を全て一か所に集めて処理するのも可能だけど、
いかにせん多すぎて、俺達の思惑から洩れる奴がいるかもしれない。
そう思い、ターゲットの到着から移動するまでの時を狙う事にした。
詳細はこうだ。
会場の入り口にゲートを仕掛ける。
ここで嘘を付けない様ソウルタイを掛ける。
その後、今の政治または国の状態をどう思うか、
この先国はどう流れるべきかを聞き取りしてもらう。
まあ100%の善人はいないだろうから、許容範囲で判断するつもりだが、
一人づつだから、かなり時間はかかるだろうな。
「何も聞き取りなどせず、テストみたいに書かせればいいんじゃないですか?
どうせ嘘は付けないんですから、
帰宅させた後に答え合わせをすればいいんですよ。」
いつの間にか帰っていたジュリが言う。
まあそうすれば、人を一か所に全員集め、
一気に嘘っこ無しのソウルタイを掛けて、
アンケート用紙に記入させればいいんだ。
なるほどねって思うけど、悔しい。
悔しいから何とか反論しようと、他の方法を探すけれど、
やっぱりジュリの言う事の方が効率的だ。
やっぱり悔しい、だけど潔く負けを認めよう。
「と言う訳で、ジュリの言う通りにしよう。
ジュール、手配とアンケート用紙の準備を頼む。
貴族に聞きたい事は、俺よりお前の方が沢山あるだろう?
で、ジュリはもう用事が済んだのか。」
「まだですよ。
少し時間が掛かりますからね。
渡しそびれた肉を届けに来たんです。」
やったー!
あかぴょんだ~。
今夜のおかずは赤ぴょんに確定!
俺はジュリに向かって両手を差し出した。
ジュリが怪訝そうな顔をしている。
だからー、肉だよ肉。
お肉ちょうだい。
「いえ、重さの方は大丈夫だと思いますけど、
がさはあなたの大きさより大きいんですよ。
受け取って大丈夫ですか?」
俺はまた素直に負けを認め、
調理室までジュリに行ってもらった。
「いいですねお師匠様、
私の分もちゃんと取って置いて下さいね。」
「やだな~分ってるって。
だから無くならないうちに帰ってこいよ。」
無くならないうちにな。
ジュリは、不審感たっぷりの目をしながら帰って行った。
食事の時間、1時間早めてもらおうかな。
ジュールは貴族一斉調査の準備で打ち合わせ中。
だから俺は、空いた時間で兄貴の様子を見に行くことにした。
「お兄様、お加減はいかがですか?」
いきなり目の前に現れた俺に、兄貴はちょっと驚いた様子だが、
すぐに立ち直ったらしい。
「もういい……。」
あ、見捨てられた?
「ヴィー、私はお前の兄だ。
お前の事はとても大切に思っている。
だが今はそれどころではなさそうだ。
私は何をすればいい?」
良かった、取り合えず立ち直ったようだね。
でも、何をすればいいかと言われたって、
兄貴が何をできるかなんて分からないから、
あれしてこれしてなんて言えない。
「分かった。
それではジュール様の所に連れて行ってくれないか。
あの人に使いっ走りぐらいには役に立てると思うから。」
「ええ。」
それから俺は、兄貴を連れてジュールの下に来た。
「良かった。立ち直ったんだな。
君も大変だと思うが、頑張ってくれ。」
大変って……。まぁ、今の状況は大変だろうな。
「早速だが、このアンケート用紙を、印刷屋に持っていって、
大至急三千枚刷るように頼んでくれ。
代金は後ほど王室付で請求してもらって、
領収書も忘れずに持ってくるよう言ってくれ。」
本当に使いっ走りをするようだな。
兄貴はもう少し中心的な仕事をするつもりだったのかもしれない。
がっくりと肩を落としながらも、その書類を受け取り、
扉から出て行く。
兄貴、どんまい。
さて、つまりアンケートは出来上がったんだな。
なら、また仕事をしなきゃなと思ったところで、急に睡魔が……。
そうか、お子様のお昼寝タイムか。
もういい加減卒業しなければと思うけど、
色々忙しかったから、体が疲労しているんだろう。
「ジュール、俺眠い……。」
フラフラしながらジュールに訴えた。
「ヴィクトリア様、もう少し頑張っていただけたらと思いますが、
いえ、そうですね、少しお休みください。」
ジュールは、しょうがないですね、と言う感情を含んだ笑顔。
おじいちゃんが孫を見た慈しみの顔をしていた。
んじゃ、お言葉に甘えて。
俺はこちらの俺の寝室に飛ぶと、すぐさまベッドに倒れ込んだ。
「あらあら、ヴィクトリアさまったら、お布団も掛けずに。」
誰かが優しく俺をふかふかの布団で包んでくれる。
「こうして改めて見ると、ちゃんと7歳の女の子に見えますね。
とてもお可愛らし事。」
だって俺7歳だもの。ダメだ、ね…むい………。
「ごはん!」
腹が減って、眠りから飛び起きた。
今何時だろう。
いつの間にか窓にはカーテンが掛かっていて、
それを予想するに、多分夜になっているんだと思うし、
俺は腹が減った。
つまり飯だ。
「まぁま、ヴィクトリア様。
お起きになられましたか?」
明かりが付いて、一人のメイドさんが入ってきた。
「よく眠っていらっしゃった事。
お腹は空いていらっしゃいませんか?」
「空いた。」
「ちょうど皆様お食事をされていらっしゃいます。
ヴィクトリアちゃん…様は、どうされますか?
こちらにお持ちしましょうか。」
「大丈夫、皆と一緒に食べゆ。」
あ、かんだ。
まあいい、とにかく飯だ。
何たって今日は、赤ぴょんだからな。
楽しみにしていたんだ。
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