第39話 あれこれ 3

取り合えずもう一つ片付いた。

と思ったけれど、ジュールが、ではその事を国民に知ら示す方法は……。

何て言ってくる。

どんだけ俺に面倒をかけるつもりだ。

そんなもの自分達で考えろよ。

と言う訳で、政治広報に強そうな数人が指名され、

その対策する事になったらしい。


それじゃあ次ね。


「各地の放置されている、各工事に付いて………。」


俺はジュールをじろりと睨み付けてやった。

そんなのは俺が決める事じゃないだろう。

王となった者、それを補佐するやつらが決めなければいけない事だろ。

そう思った事を感じ取ったのか、ジュールはすぐさまその言葉を引っ込め、

一人の男に耳打ちし、イライザの下に行かせた。


それからは、自分達で解決しなければいけない事と、

俺でなければならない事を、判断するようになったようだ。

時々俺が雷を落とすことも有ったが、

7歳の少女に怒鳴られて、一体こいつらがどう思うのか、よく分からない。


それから一体どれぐらい時間が経ったんだろう。

知ってる?

子供の集中力って、そんなに長く続かないんだよ。

言い訳に聞こえるかもしれないけど、事実だもん。


「ねぇ、いい加減休もうよ。」


俺がそう言ったら、ジュールはそこで初めて気が付いたような顔をした。

大体にして、何で俺だけこんなに働かされているんだよぉ。

まあ、ジュールもそうだろうけど、他の偉い奴らはどうしたんだよ。


「別室にて、ヴィクトリア様に頼れない数々の問題を検討中です。」


「数々?」


「はい、数々です。」


数々か………。


「その数々って、どれぐらい?」


「現在、21ぐらい解決しておりまして、63程順番待ちでございます。」


ごめん、俺も頑張るよ。出来るだけ…。

でも、頼むから少し寝かせてもらえないかな。

子供はよく寝なくちゃいけないんだよ。

背だって伸びなくなっちゃうかもしれないし、

とにかく子供に睡眠不足は大敵なんだ。

俺は椅子の背もたれに体を預け、目を瞑った。


「こ、これは大変失礼をしました。

リラ、リラ!ヴィクトリア様のお世話を。」


どうやら一人の女性が、俺の世話係に任命されていたようだ。


「ジュール様、いい加減になさって下さい!

いくらリュート様だった方とはいえ、今は7歳のヴィクトリアさまです。

国を救いたいと言う考えは立派だと思いますが、

ヴィクトリア様のお体の事も、もう少し気を使って下さい。

皆様もですよ‼」


その口調では、皆ににらみを利かせたんだろうけど、

俺は目を開く事も出来ず、その顔を見ることが出来なかった。

そのリラ?の顔を見たかったなぁ。


その後ふわっと、抱き上げられた感じがする。


「いい……、すぐ起きるから…その辺のソファにでも…寝かせて………。」


うん、なるべく早く起きて、色々な問題を片付けなくちゃ…。


「いけません。

ここは取り合えず大人に任せて、あなたはゆっくりとお眠り下さい。」


しかし、でも、だけど。

それを断ろうと思ったけど、既に俺の意識は、ギブアップしていた。



再び俺が目を覚ましたのは、

俺サイズの、可愛い刺繍のされた白いふかふかの寝具の中だった。

一瞬恐怖が走った。

サイアスに見せられた部屋を思い出したからだ。

でも、ベッドのサイズは俺に合わされたものだし、

部屋の中も全然違っていたから安心した。


「お目覚めになりましたか?」


一人の女性が声を掛ける。

その声は多分リラかな?


「昨日はありがとう。

助かった。」


「いいえ、あなたの事を考えない人達が悪いのです。

あなたを、外見、いえ実年齢は7歳と言う事をすっかり忘れて、

扱使おうとなさる方が悪いのです。」


笑いながらそう言ってくれる。

どことなく母様に似ている。

そう言えば、お母様はどうしたかなぁ、

心配しているだろうな。

ちょっと行って来るか。


「リラ、ちょっと母様の所に行ってくる。

凄く心配していると思うんだ。

30分ぐらいで帰るから、ジュールに言っておいてくれないか。」


「そうですね、行ってお母様を安心させてあげて下さい。」


どうやらリラは、一部始終をご存じの様だ。


「ありがと、行ってくるね。」


そう言って俺は母様のいる家に転移する事にした。

そう言えば、昨日からろくに飯も食っていなかったな。

母様の美味しいご飯が食べたいぞ。

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