第37話 あれこれ 1

「じゃあ、この問題はジュリに任せて次の事を片づけようか。」


そう言ったらジュリに異議あり!と言われた。


「まずは調査でしょう?

私はその調査にも立ち会うんですか?」


「だって調査ってさ、その荒れ地に入るんだろ?

調査中に魔物に襲われたらどうするんだよ。

それにあそこまでかなり距離があるだろうし、

何日もかけて移動して、仕事をしている最中に魔物に襲われて、

仕事が終わったら、帰ってくるまでにまた時間かかるし、

だったらお前が一緒に行った方がいいに決まってるだろう?」


そんなにむっとした顔したって、仕方ないじゃないか。

誰かがやらなきゃならないんだから。

もちろんお前がやるって決まってるけどさ。


しばらく膨れていたジュリだけど、

突然


「この中で一番、魔物や動物の種類や生態に詳しい人って誰ですか。」


と言い出した。

みんなは驚いた顔をしていたが、すぐにひそひそと話し出し、

中の一人を指さした。


「クーデルか、確かにそうかもしれんな。」


ジュールがそう言い頷いた。


「分りました。

では彼をしばらくお借りします。」


ジュリはそう言うとすぐさま転移魔法を発動し、クーデルと二人で消えた。

まあ、奴の事だ、

危険な目に遭う筈もないだろうし………?

いや、多分大丈夫だ。

多分だけど、大丈夫だと思うよ。


まああの様子じゃ、本気になって手っ取り早く片付けてくれそうだから、

こっちは他の事をやろう。


「他に片づける事って有る?」


するとすぐさまジュールが、まず一つ目はと言い出した。

1が有ると言う事は、つまり2とか3とか、他にもあると言う事か。

順番にやるしかなさそうだな。


「今現在柱となる物がいない状態です。

すぐさま解決しないと国が成り立ちません。」


「柱と言うと、主になる人物の事だな。

王と第一王子は除外だな。

あとは第2王子がいたが、まだ国政など取れぬ年だな。

今無理やり王に立たせたら、傀儡になりかねないだろう。

確か、王家の筋の者がいたな。」


ジュールがはいと言い、あの黒髪の青年を前に出した。


「先ほども紹介しましたが、彼はエヴァン・グリフィスと申します。

現王の姉君、イライザ様の息子に当たります。

前王が身罷られた時、ある理由で王によりイライザ様は城を出されました。

エヴァン様は、人望も厚く、庶民の中で育ったせいか、情けもとても深い。

王や王子など比べようも……、いえ、出過ぎた発言でした。」


「いや、教えて貰った方がいい情報だ。

で、その母親のイライザさんはどうしたんだ?」


「自分は既に王家を出された身、

エヴァンさまが国を何とかしようとして立っている以上、

自分が口を出すと、ややこしくなってしまうと言い、

表には一切出ないと仰っています。」


「表には出ないと言うのは、裏で操ると言う事か?

いや、すまない冗談だ。」


エヴァンがすごい目で睨み付けている。

誰だって、自分の母親を馬鹿にされたら怒るよね。


「だが、人望も大事だが、政はそれだけではやっていけない。

それは分かっているな。」


「はい、重々に。」


「ならば、エヴァンを押すお前達は、

それ以外にも必要な物を彼は持っていると思うか?」


「お恐れながら。」


だからさ、俺は王でもないし、

単なるアドバイザーなんだからそんなに畏まらなくてもいいんだよ。


「先ほども言いましたが、私はまだ勉強中の身。表に立つなどまだまだ力不足です。ただ王家の血が入っていると言う理由だけでは、政の中心になどなれません。

私などより、ジュール様や、ニコラス様の方がよっぽどふさわしいと思います。」


ふーん、分かってるんだな。


「確かに、お前ではまだ青すぎる。

だが、皆の力を借り、学び、努力をし、経験を積めば、

いずれ相応しい器になるだろう。

だが今はまだ早い。さて、どうした物かな。」


そうは言ったものの、

もしエヴァンが途中で努力を怠り、中途半端な事をしないとも限らない。

そうなった時、エヴァンは王の器にはならないだろう。

今だってギリギリっぽいものな。う~~ん…。


「いっその事、民主主義にでもするか?

庶民が中心になる国。庶民の庶民による庶民の為の国。

つまり貴族は蔑ろ、絶対に反発出るよな。国が荒れるよなぁ。

この世界で、そんな国なかったものなぁ、無謀だよなぁ。」


俺の独り言を聞いたのか、

近くの奴らが目を見開き驚いている。

何かまずい事を言っちゃったかな。

と、一つひらめいた。


「エヴァンの母親、確かイライザさんって言ったっけ。

彼女に会ってみたい。」


ちょっと彼女に興味が有るんだ。


城を出されるまで王族だったんだよな。それも王の姉だ。

城を出される迄は、国政も見守って来たに違いない。

それに出された後は、市井に紛れ込んでいるとはいえ王族だったんだ。

きっと国の動きも気になり、彼女なりに見守っていた筈だ。


彼女はこれだけの人がエヴァンを見守っていると言う事は知っている、

なのにこの状態でも動かなかったのは、

臆病なのか、国を乱さない為の思慮が働いたのか…。

いや、此処に居る奴らは動くつもりだったな。

主になるのはエヴァン一人では心もとない状況だ。

ならばやはり、裏での彼女の力もかなり有る筈だ。


ふーん、なかなかの食わせ者って訳か。

これは絶対に会った方がいいって気がしてきた。

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