第33話 少女達 1

王に呼び出された大臣は、拘束されたサイアスを見て、

様子を察したのか、私のせいでは無いと他の大臣を呼び出した。

その大臣がまたほかの奴を呼び出し、ズルズルと芋蔓式に

ざっと30人ほどの人が集まった。

皆同じように顔色が悪い。

思い当たる事が、かなり有るのだろう。


一人一人言い訳を聞いていては時間を食ってしまうだろう。

だからソウルタイで、嘘は一切なし、

自分の言いたい事を話せと全員に言った。

途端に部屋の中が物凄くうるさくなる。

だがよく見ると、その中には二種類の人間がいた。

まあ多いのは、必死に自分の身の潔白を主張する輩だが、

口数も少なく、ほとんだ喋らない奴もいる。

しかしこれにも二種類いた。

苦虫をかみつぶしたような顔をして、何かを喋ろうとするが、

一向に言葉が出てこない奴。

方や、自分が悪かったのだと言った切り、後は口を開かない人達がいた。

前者は多分、自分に有利な嘘を付きたいが、

ソウルタイによって言う事が出来ないのだろう。

だが、興味深いのはもう一種類の奴ら。

3人ぐらいいるだろうそいつらは、自分を弁護する事も無く、

黙り込んでいる。

俺が聞いたのは、自分の行いを反省する言葉だけだ。


「ジュリ、あの三人は別枠。」


「了解。」


ジュリは瞬時にその三人を別室に移動させた。

しかし残りの奴らは、そんな事は我関せずで、自分の弁護に夢中で

それに気が付いた奴などきっといないだろう。


まあ、残りの奴の話は大体把握した。

みんな他人を貶める事や、自分の手柄を大そうに繰り返し話しているだけだ。

まあ嘘はつけないのだから、真実なんだろうけど、

自分の手柄など、それがどうしたと思うレベルだ。


俺は手を打ち鳴らし、


「大体の事は分かった。口を閉じろ。」


そう宣言した。


サイアスにも思うさま喋らせていたが、

奴も自分が正しいと思っているのだから、色々な事を喋ってくれたよ。

これだけの証言が有れば、大体の予想は付く。

まあ一番悪いのはサイアスだろうが、無関心だった王にもかなり責任が有る。

それ以外の奴らもドングリの背比べだが、特に移動させていない無口だった奴らが

上の方で胡坐をかいていた奴だろう。

此処に居ない奴の名前も出ていたし、

命令通りに動いていた兵だって、責任は無かったとは言わせない。


「いったい何人処罰すればいいんだ?

いっその事、城ごと全部ぶっ潰すか。」


すると、いつの間にか帰っていたジュリがまあまあと俺を宥める。


「中には少しでしょうが、正しい人もいます。

ここは気長に、根気よくやって下さい。」


「やって下さいって、お前も手伝えよ。」


ジュリよ、なぜその言葉で目を反らす。


「俺、あの子達の方に行ってくるから、

こっちのまとめは任せる。」


「ぇ~、私だってあちらの方がいいです。

お師匠様が残って下さいよ。」


「ほら女の子同士、彼女達のケアは私の方が適任でしょ?

それにジュリは名が知れてるから、あいつらはジュリの言う事は聞くと思うの。」


お師匠様だって、十分名が知れていますよ。

ジュリはブツブツとそう言うけど、全然聞こえてないも~ん。

とにかく俺は、そこから彼女達の下に飛んだ。



「ご協力感謝する。」


暖かい部屋で、少女たちの世話をしてくれている彼女達に向かい

俺は頭を下げた。

小さな女の子が声はそのままに、男言葉で大人びた話をする事に

少し驚いているようだけど、あまり関心を示さなかった。

今は俺の話を聞くより、女の子達の世話の方が最優先なのだろう。

するとその中で、年かさの行った人が


「私達は、自分の意志でしているまでです。

感謝の言葉など不要です。

それよりあなたは大丈夫なの?どこか痛い所や辛い所は無くて?」


そうだよなぁ、一見すれば俺も女の子達と変わらないか年だ。

俺の事まで心配してくれるんだ。

俺はふと、町に置いてきた母様を思い出した。

兄貴がちゃんとフォローしてくれると思うけど、一緒になって騒がなきゃいいな…。


「申し訳ないが、彼女達の世話が済み、落ち着いた子から教えてくれないか。

それと俺は、いや、私は魔法が使えます。

もしお手伝いが必要ならば、遠慮なく仰ってください。」


俺も一応女性だったころの記憶も有る。

やろうと思えば女の子の世話ぐらい出来るだろう。

そう思い、洗面器に汲んだお湯を運んだり、

タオルを抱えて行こうとしたが、何せこの体格だ。


「お手伝いしてくれるのは嬉しいけど、大人は沢山いるから大丈夫よ。」


そう言われてしまった。

まあ自分の姿を想像すると、

まるで親鳥の真似をし、一生懸命後を追うひよこの様だろうな…と思った。


「もしお手伝いをしてくれるなら、

ほら、あそこにいる女の子の話し相手になってくれる?」


見ると、世話をされながらも何の表情も無く、話もしない少女がいた。

全てを諦め、自分の自我を捨てる事で、生き永らえて来た気がする。


再びサイアスへの怒りがわき上がってきたが、

でもここはぐっとこらえて、彼女達の事を考えなければ。


俺はトコトコとその子の所に行き、そのすぐ近くにチョコンとしゃがみ込み、

じっと彼女を見上げた。

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