第32話 囚われの少女
とてもむかつく部分満載の回です。
(少女誘拐、監禁など)
苦手な方は、お避け下さい。
※※※※※※※※※※
王子に連れて行かれたある部屋の前。
鍵を外し、扉を開ければ、そこはとても豪華で、且つとても可愛い部屋だった。
あちらこちらにぬいぐるみや綺麗な置物が置かれ、花も豪勢に飾ってある。
真ん中に、白くて金色の装飾がほどこされたテーブルセットが鎮座し、
籐で編んだ半円形の椅子が、まるでブランコの様に吊るされている。
止めは俺の大きな肖像画が壁の中央に飾られていた。
おまけに壁際には、ピンクを基調としたゴブラン織りの寝椅子。
でも子供の部屋には似つかわしく無い、とても大きな寝椅子だよ。
こ・の・やろー!お前の考えは見え見えなんだよ!
続けて案内された続き部屋は、寝室のようだ。
クローゼットの中には、贅を凝らした少女用のドレスなどがたんまり。
天蓋付きのベッドには、やはりピンクと白のレースたっぷりの
フワフワの寝具がかけられている。
こんなのに寝たら、腰が痛くなるわ。バーロー!
でも子供用の寝室の筈なのに、こんなに大きなベッドが有ると言う事は、
言わずもがなだろうな。
この変態が!
そしてテラスには自由に出入り出来るようだが、
そこにはまるで、鳥籠の様な柵が覆っていた。
「気に入ってもらえただろうか、君の新しい部屋だ。」
誰が気に入るか。
頭がおかしいんじゃねーの。
よっぽどそう言ってやりたかったけれど、
取り合えず今は無視するだけにしておこう。
「そう言えば、もっと可愛いものが有るんだよ。
君は動物は好きかい?
ペットにうってつけなんだ。」
ペット?動物でも飼い始めたのか?
まあ、俺も動物は好きだから、
サイアスに受けた気持ち悪さを癒せるのであれば、ぜひ抱っこしたい。
そう簡単に思い、奴の後に付いて行ったが、
俺はそこで目にしたものに驚愕した。
「何なんだこれは!」
思わず俺は叫んだ。
そんな言葉が思わず出てしまうような光景だった。
その部屋は、金色の檻が並び、人が入れるような美しい籠が吊るされている。
いや、入れるようなでは無かった。
実際に少女が入れられていたのだから。
しかし見れば、各檻にも子供が入れられている。
それも、ただの人ではない。
頭に大きな耳が有ったり、尾が有ったり、
羽を有している者までいる。
「貴様…、どういうつもりだ………。」
怒りを何とか抑え、俺は静かにこいつを問い詰める。
「ヴィクトリア…?」
「その名を呼ぶな。お前などに呼ばれたくはない…。」
腹が立つ、むかつく、いらいらする。なんて表現すればいいのだろう。
「想像は付くが、一体どういうつもりだ。」
俺の怒りを買っていると分かっても、
それでも俺に問われればごまかす事など出来ない。
正直に話す事しかできないだろう。
「ヴィクトリアがいない間の暇つぶしだ。
色々な所から集めた子供達だ。
金もかなり掛かったが、なかなかのコレクションだろう。」
そうかそうか、コレクションか。よーく分かった。
覚悟しておけよ。
「ジュリ、来てくれ。」
俺は何もない空間に向かってそう言う。
「ようやく呼んでくれましたか。
待ちくたびれましたよ。」
そこに現れたジュリは、何故かローブ姿。
いつの間にドレスから着替えたんだ。
だが現れた途端、ジュリの表情が一変した。
途端にサイアスの体が吹っ飛んだ。
「貴様!どういうつもりだ!」
それ、俺がさっき言ったセリフと同じだ。
さすが弟子。
ジュリが腕を振り上げた途端、檻が全て粉々に砕けた。
さすがに吊ってある籠はそのままだから、
それについては俺がそっと下ろし、瞬時に籠を煙の様に消し去った。
「ヴィクトリア、一体…。
それにそちらは………。」
「その名を呼ぶなと言ったよな。」
そう言った俺も、腹立ちまぎれに奴をぶっ飛ばした。
サイアスは壁に叩きついて、口の端から血を流している。
「暇つぶしで集めたみたいだよ。
金と人をかけて、無理やり連れて来たらしい。
多分拒否した親を殺してから連れてきた子もいるようだ。」
この中の一人から洩れた感情から読み取った情報だ。
「ほほぉ…。
止める人はいなかったのでしょうか。」
ジュリの笑顔が怖い。
「こいつの母親は死亡、
父親である王は引きこもり、
第一王子で有る本人は好き勝手な事をしている。
政治自体、誰がしているのか認知していない。
ただ権威をかさに着ているだけだ。」
「ヴィ……。そいつは何者だ!
俺をこんな目に遭わせてただで済むと思っているのか!」
「思っているさ。
お前こそただでは済まない事は決定済みだがな。」
「まあ、お師匠様がこの状態を、穏便に済ませる筈が有りませんね。」
俺にだけ責任をかぶせるなよ。
別にいいけどさ。
奴は俺達の言葉を理解できない様子だが、そんな事はどうでもいい。
今はこの子達の事を優先しなければ。
俺は一人の兵士を睨みつけ、サイアスを拘束するよう命じた。
それから国のお偉いさんを、すぐにここに呼ぶように言う。
「それからこの子達の世話のできる女性を頼む。
出来れば子育ての経験のある人物が好ましいな。」
そう申し付けた。
可哀そうに、檻から解放された少女達は、部屋の隅に固まって震えている。
やがて慌しい足音と共に現れたのは、お仕着せにエプロンを掛けた女性陣だった。
俺達をチラッと見ただけで、少女達に駆け寄っていく。
そう、俺達の事なんてどうでもいいよ、この子達の事頼んだね。
震えたまま動かない子、女性に抱きしめられ大声で泣き出す子、
何の感情も示さずされるがままの子。
その子達を世話しながら、抱きかかえる様に部屋から連れ出していく。
「よろしくお願いします。」
俺はそう言い、頭を下げた。
だけど、呼び出した筈のお偉いさん達は一向に姿を現さない。
一体どうしたんだ。
使いに出した兵士すら戻らないんだ。
「一体どうなっているんだ?
確かに伝えたんだろうな。」
兵士を問い詰めても、その筈ですと言うだけ。
もしかして、得体のしれない子供が呼んでいると、侮っているのか?
それなら呼び出しするのが偉い人なら来るのか?
そう思った俺は、王と、第二王子に呼び出しをかけた。
魔法で急に呼び出された王達は、驚き周りをキョロキョロと見回している。
なるほどね、第二王子はあどけなさが残った少年だった。
年は俺とそう変わらないだろう。
と言う事で、今の俺のターゲットは王一択だな。
しかし王は元居た部屋に戻るつもりか、いきなり部屋を飛び出していこうとする。
「ちょっと待った。
お前にはいろいろ言いたい事が有るが、今はやってもらいたい事が有る。
現在この国を動かしている大臣達を呼び出してもらおうか。」
サイアスの血筋を辿り、王達を呼び出す事は出来ても、
お偉いさんが誰なのか知らない俺は、魔法で呼び出すことが出来無いんだ。
騙そうとしたり抵抗しても無駄だぞ、後悔するのはお前達の方だからな。
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