日本人転生者のオークのボンゴさんと日本人転生者のアマゾネスのシャミイさん
夢の始まりは突然だったけど、リアル過ぎて夢に思えない。
目の前を歩く、背が高くて横にも大きい、豚の顔をしたボンゴさんを見てると、ちゃんと生き物に見えるし。
さっき出て行った、シャミイさんと言う女の人は、ボンゴさんより背が高くて、凄い筋肉質だったけど、ちゃんと女の人だったし。
僕の体も健康な物になるって言われた。
どうせなら、父さんと母さんが健康になれたら良いのにな。
そんな事を考えてた。
当時の風間拓斗の心の声を一部抜粋
ボンゴさんに連れられて、階段で1つ下の階に降りる途中に、踊り場に据え付けられた小さいボックスに、ボンゴさんと2人で入った。
「
作り替える?えーと……
「作り替えるっていったい?今のままじゃ無いんですか?」
じわっとして、頭からつま先まで、お風呂に入ってるみたいな感覚になった。
「俺もお前も日本語を喋ってるだろ? まず最初に、現地語に対応出来るように脳を弄られる、次に
ボックスから出て階段を下りながら、ボンゴさんが僕の肩を支えてくれてる。
「お前の場合は転移者だからな、大きく今と変わることは無いさ、転生してもな。」
左足の指が2本しか無いから、階段の昇り降りは苦手なんだ、すごく有難い。
「望めばチート能力だって、ある程度貰えるからな。後で一覧を渡すから明日の朝までに決めておけよ。」
チート能力……。念糸棍(*2)が良いな。
「ここが
階段を降りてすぐの部屋か。
あんまり歩かなくて済むから有難いな。
「1人暮しなんでしょうか?相部屋なんでしょうか?」
「本来なら護衛と一緒に半年過ごすんだけどな、シャミイの奴が下請け見付けて来るまで一人暮らしだと思うぞ。」
ドアを開けながらボンゴさんが教えてくれた事、女の人と二人暮しとか……無理だし。
「シャミイを女と思うなよ、あいつの中身は男だからな。俺と反対で、元は男だったのが女に性転換した口だ。」
なんですと? 確かに筋肉質だったけど、女性にしか見えなかったよ。
「冒険者になって背負う条件を達成した後にな、与えられる特典ってのは、DNAレベルで性転換すら可能なんだよ。だからシャミイは子供も産める、俺は種付け出来る。凄いだろ?」
「凄いです、僕も何か貰えるんでしょうか?」
少しだけ悲しそうな顔をしたボンゴさん。
「俺とシャミイは転生者だからな。お前は転移者だから、日本に帰って、あっちで生活する時に違和感の無い物しか無理かもな。そこは転移者で探索者になった奴が少なくて、俺も初めて担当するから全くわからん。」
靴は脱ぐタイプの部屋だった、靴のまま生活するタイプの方が良かったな……。
「体の欠損部位なんて、明日には元通りになるさ、気にせず靴なんか脱げ。」
「はい! 」
ホントに治るっぽい! でも僕だけ……。
個室って言っても6畳と8畳の2部屋、それぞれに押し入れが1つずつ。
トイレは付いてるけど、お風呂は付いてない。
「ここで一人暮らしなんですか?」
「6畳の部屋が、お前の使える部屋だ。8畳の方は、護衛が使う部屋だな。」
護衛の方が広いのか。
「護衛ってな、依頼されるのは基本的に探索者なんだよ、体がデカい奴が多いからな、俺とかシャミイみたいによ。6畳じゃ寝転んで体を伸ばしたら、つっかえるんだ。」
確かに、ボンゴさんって身長190cmくらいは有りそうだもんな。
「お前の部屋になる方は、色々と家具が揃ってるから説明するぞ。」
「はい! お願いします。」
「ベッドやカーペットですら魔道具だ。常に清潔な状態を保ってくれてると言いたいが、真逆だ。常に、毒や状態異常を付与してくる。」
え?
「電化製品に見える、蛍光灯、掃除機、テレビ、タブレットなんかは、魔力を注がないと動きすらしない。」
魔力?
「そして極めつけは、タンスだ。最低でも握力が80kg無いと、引き出しの取手に付いてる鍵すら外せない。」
「あの〜、それって僕に出来ますか?」
ボンゴさんが、大きく首を横に振りながら。
「今の状態じゃ無理だな。本来ならシャミイが手伝うんだけどな。まっ、今日は俺が対応してやるさ。」
明日からどうすれば良いんだろう?
「とりあえず飯食いに行くか、もう昼を回ってるぞ。
言われてみたらお腹が減った気がする、胃の痛みが無くなったからかな?
「社食ですか?社食って社員食堂?」
「そうだよ、この建物は毎日1万近い奴が働いてるからな。社食も和・洋・中どころか、どこの世界の料理だよ?っての迄揃ってるぜ。」
うわ、なんか楽しみ。でも沢山の人が居るんだろうな。
「今のお前を見て、励ましてくれたり、応援してくれたりする奴は居るが、
そう言って玄関に向かうボンゴさん、オークで
「そう言う場所だ
ここだけって言葉がすごく違和感があった。
食堂まではエレベーターで降りてきた、どうやら2階にあるようだ。
エレベーターを動かす時に、ボンゴさんがボタンを指で押し続けてた。
魔力を指先から流し続けないと止まるんだそうだ。
エレベーターを降りたら、すごく広いフロアで、多種多様な生き物が食事中だったけど……。
「やっと来たボンゴ、ちっこいの! こっちだこっちだ。」
お酒コーナーの近くのテーブルに、シャミイさんが居た。
大きなジョッキでビールを飲んでる……。
「風間、好きな食べ物を貰ってこい、何を食べても栄養の偏りなんか無いからな、そう言う
「はい!」
ボンゴさんの言ってる意味は分からなかったけど、返事はしておいた。
色んなメニューがあって、他にも色んな食べ物がバイキング形式で置いてあったけど、月見うどん小と親子丼の小を注文して来た。
小さい札を渡されて、出来たら席に運んでくれると言われてボンゴさんと、シャミイさんが座ってる4人がけのテーブル席に来た。
「うしゃしゃ、ちびっ子。いい下請け見つけたぜ、明日紹介してやるからな。」
「適任そうだから文句は言わんが、無理矢理じゃ無いだろうな?」
シャミイさんが持ってる、2ℓくらい入りそうなジョッキと同じ大きさのジョッキを持って、ボンゴさんが微笑みながらビールを飲んでる。
ジョッキじゃなくてピッチャーって言う物だって、再注文する時に知った。
下請けってどんな人が来るんだろ?怖くないと良いな……。
「あっ、お金はどうすれば良いんですか?僕は全く持ってないんですけど。」
「
「タダって言っても、現地人にここの飯を食わせたらダメだからな。食わせたらくたばるぞ。」
「「現地人がな。」」
え?食わせたら死ぬ?なにそれ……。
「そこら辺の説明も明日ある、今日は雰囲気を味わうだけだから気負うな。」
「はい。分かりました。」
ん、いい返事だって言いながらビールをがぶがぶ飲んでる2人。
ボンゴさんは、どっから取り出したか分からない、焼いてあるドングリを片手で器用に剥きながら。
シャミイさんは両手にジョッキを持って交互に。
飲む速さが異常だ。スポーツドリンクですか?
うどんと親子丼が運ばれて来て、頂きますと言ってから食べ始めたら。
「少食だな。中三男子なら、もっと米を食え米を。」
「米は飲み物だぞ。と言ってもまだ今は無理だな。明日からは飲めよ。」
米って飲み物なの?違うと思います。
「そのまま食ってて良いから聞け。ちゃんと自己紹介しとく。」
だな、ってシャミイさんも頷いてる。それにしても美味しいな、このうどん。
「俺は、1級探索者でランキング一位の探索者パーティー【神殺しの刃】のリーダーで、タンク兼アタッカーをしているオーク族のボンゴだ。普段は冒険者ギルドの受付で昼から酒を飲んでる。日本人転生者だ。」
探索者とか冒険者とかなんなんだろ?違うのかな?
「アタイは、ボンゴと同じパーティーに所属してる1級探索者で、ヒーラー兼アタッカーのアマゾネスのシャミイだよ。ギルドの受付でボンゴの隣に座って、昼から酒を飲んでるのも同じ。日本人転生者ってのも同じな。」
「探索者と冒険者って違うんですか?」
「明日詳細は聞けるが、先に話しておく。冒険者ってのはな、日本に帰還する条件や、自由を勝ち取れる条件を満たしてない転生者や転移者だ。探索者ってのは満たした奴な。」
「ちびっ子の場合は、帰還条件を達成すれば探索者になれるぞ。まあ殆どの転移者が帰還条件を達成したら日本に帰るんだけどな。」
「風間……、風間拓斗です。ちびっ子じゃありません。」
「ん、そうか。拓斗って呼ぶな、まだ名前を聞いてなかったからよ、嫌だったんなら謝る、すまん。」
顔を上げたらシャミイさんが机に突っ伏してた。
「自己紹介が遅れたのは僕が悪いです。謝らないで欲しいです。ごめんなさい。」
シャミイさんが頭を上げて少しだけさっきより笑顔になってる……。
鋭い目付きとキリッとした口元のせいで怖そうな人に見えるけど、笑顔になったら綺麗な女の人だった。
「なあ拓斗、コイツの中身は男だからな、しかも男が好きな男だからな、気を付けろよ。」
なんですと! めちゃくちゃ危険だ。
「アタイの好みの男は、アタイ並にキレてるマッチョで、だらしなかったり、馬鹿だったり、クズだったりな男だから、拓斗は守備範囲外だよ。」
なんですかその好みの男性像は……。
「コイツな、クズなマッチョのチ〇ポコをイボ付き軍手付けて、しごいてしごいて、しごきまくって流血させるのが趣味なんだ。」
「そんな事言ってるボンゴだって、クズなムキムキマッチョのケツを、破壊力抜群のオークチ〇ポで掘りまくって、括約筋破壊するのが趣味だろ?う〇こが出るのを止められなくしてやるのがな。」
怖いよ、この2人……。と言うかモ〇ハンの部位破壊みたくカッコよく言った!
「「拓斗は、好みじゃ無いから大丈夫。」」
2人同時に好みじゃないって言ってくれたけど、やっぱり怖いです。
3人が食堂で、遅めの昼食を食べている時間、7階にある経営者会議室。
「ニノさん、何を嬉しそうな顔をしてるんですか?」
「マルトさん、嬉しいなんてもんじゃ無いですよ。今日転移してきた少年の詳細を見てください。」
2柱の女神が座るパイプ椅子、その前に据えられた長机の先に、同じくパイプ椅子に座りながら2柱の男神が用意された資料に目を通す。
「ニノさんが好きそうな感じの、成長が望める若い子ですねえ。」
「それだけじゃ無いですよ、性格も好みも大好物です。特に3ページ目を見てください。」
3ページ目は転生者が、どんな武器に適正があり、どんな強者に憧れるかが詳細に書いてある。
「棍や槍に適正があって、鉄拳チ〇ミの主人公のライバルキャラのシーファンや盲目の棍使いリキに憧れるですか、これがなにか?」
読んだ項目の意味が分かってない、マルトと呼ばれた顔が兎で体は人間の神。
「令和2年の3月の時点で15歳ですよ、それなのに、私が小学生の頃から読んでた鉄拳チ〇ミ好きなんて、しかも初期の念糸棍や、盲目の棍使いに憧れてるなんて、渋いじゃないですか。」
日焼けした40過ぎの日本人のおっさんに見える神が、機嫌が良さそうな声で話している。
(お姉ちゃん、なんとか許して貰えそうよ)
(ツクヨミ、今は念話すらダメよ)
念話で会話する2柱の女神、しかし念話すら気付かれている。
「そこの駄女神、次はないからな。下手に出てれば、やりたい放題やりやがって。」
焦り出す2柱の女神。
2柱の女神の目の前に居る2柱の男神は、天照や月詠のような、1つの星に多数存在する星神より数段も格上な、多数の星々を含む、銀河を丸ごとひとつ守護する創造神と主神。
「この子なんて、死ぬ予定じゃ無かっただろ? 雷の余波を受けるが、それで先天性の疾患が何故か回復して、普通に近い生活に戻れてたはずだ。」
「全く、私の目を誤魔化せると思ってらっしゃったみたいですな。見ることに掛けては御二方よりはるか上の能力持ちだと言うのに。」
2柱の女神には辛い沈黙が少しだけ流れた。
「ルミナス様、アマテラス様。先日の集団転生の時のペナルティも、まだ完全に済んでないのですからね、そこだけは、お忘れなく。」
「同じ
後光を消して2柱の男神が会議室を後にする。
「お姉ちゃん、今回選んだ子って死ぬ予定じゃなかったの?」
「うん、でもニノなら好きかな?って思ったから、現に注意だけで済んだしょ?」
ルミナスが首を横に振りながら姉の言葉に答え返す。
「あれは注意じゃなくて最終勧告よ、これだから、バイトすらしない引きこもりは!」
2柱の女神が軽い喧嘩を始めようとした時、会議室のドアが開く。開けたのは兎顔の男神。
「喧嘩とかしないで下さいね、ロキ様のお世話になりたいですか?」
その質問に2柱の女神は答える事が出来なかった。
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