2人の女神と風間少年と寮生活の始まりの日
サヨウナラ。
半年以上も、僕に夢を与え続けてくれた
この春から僕は、県内有数の進学校に通う事になるんだ。
勉強以外の事を考えてたら、僕みたいな凡人なんか簡単に置いて行かれてしまう世界だから、
いつか誰かの手に渡り、僕じゃ無い誰かに夢を与えてくれる事を祈りながら。
当時の風間拓斗の心の声から一部抜粋
何かが光った気がした、そしたら目の前に巨乳の美人さんが2人。
まるで
「お姉ちゃん、
よく見たら美人ハーフタレントのような見た目で、少しだけキツそうな感じの喋り方だけど、スケスケの服を着ている女の人がエロ本とか言ってる。
「ツクヨミの事を美人だってさ、私達って人じゃ無いのにね。それに、思春期なんだもん許してあげたら?」
目元の紅いアイシャドウ?って感じのお化粧が、すごく色っぽくて、滑らかな黒髪を後ろで1つに纏めてるのが和装とマッチして、すごく綺麗な人が、自分達を人じゃ無いとか言ってる。
ああ夢か……。
「夢じゃないわよ、さっさと起き上がりなさい。」
え?
「アナタは選ばれました。なので立ち上がって下さい。」
立てと言われて気付いた、僕って地面に寝転んでる。
なのに2人の女の人は目の前に立ってる……
何コレ?って思いながら立ち上がったら、2人の女の人も同じ目線に立ってる……。
「私は、夜と月の女神・ルミナス。」
「私は、日輪の女神・天照大御神。」
「「風間 拓斗さん、貴方は選ばれました。」」
2人とも美人だけど芸人さん? すごく息がピッタリで、どっちがボケでどっちがツッコミなんだろう?
「めんどくさいな、とりあえず思考停止。」
「ちょっとお姉ちゃん、面倒臭いとか言っちゃダメだよ、ちゃんと返答出来る状態じゃなきゃ、また
…………………………。
「とりあえず聞きなさい、考えたり言葉にする事は全てを聞いた後ね。さあツクヨミ、説明お願い。」
………………………………。
「アナタは、さっき雷に撃たれて死んじゃったの、覚えてる? なにかが光った事を。」
………………!
「でも私達は、アナタのような少年の死を望まないわ、だから条件付きで生き返らせてあげる。」
…………………………!
「アナタはこれから異世界に転移、もしくは転生して貰います。」
………………!!
「そしてそこで、ネット配信中の動画に出演してもらいます、冒険者としてね。日本人なら好きでしょ?冒険者って。」
………………!?
「最初の半年間で、異世界の常識と法律を覚えて貰うわ、その間に色々な実地研修も受けて貰う事になるの。」
………………!!
「転移するなら今の人間の体のままだけど、転生するなら多種多様な人種に転生出来るわ。」
…………!?
「転生した場合は、異世界に永住して貰うけど、転移だったら日本に帰って生き返れます、死んだ直後の時間にね。どっちにする?」
「解除。」
え?馬鹿なのこの2人。
何? この、二流のファンタジー小説並のドッキリ……。
そんな事を考えたら、2人に同時におでこを爪で突つかれた。
「痛いです……。」
「そりゃ痛いわよ、魂を直接傷付けられてるんだもの。」
「早く答えて、こっちも暇じゃないんだから。」
転生だと永住で、転移だと日本に帰って来れる……。
それなら……
「転移でお願いします。まだ死ぬ訳にはいかないので。」
夢だと思ってたこの時は。
『この子が新しい転生者か……。大丈夫なのか?ちゃんと
『履歴書には15歳と書いてあるな。10月10日が誕生日で、中学を卒業しているようだから、間違い無いだろう。』
誰だろ? 女の人と男の人が話してる……
色々話してるけど、所々しか聞こえないや。
『それなら良いけど、こんな体格で冒険者候補なんて大丈夫か?』
『女神達に選ばれたんだ、何か意味があるんだろ、とりあえず起こさないとな。』
聞いた事の無い声だな……。
『とりあえず、気持ちよくして起こそうか?しごいていいか?』
『シャミイ、それをしたらペナルティだぞ。さすがに同意なくやれば、お前でも……。』
しごいていい?ってなんの事だろ?
『あいよ、仕方ねえなあ普通に起こすか。』
ドゴッ…………。
「うぅえぇぇぇ…………。」
「お前の起こし方は、
涙目で朧気に見えた豚のような顔……。
「めんどくさいんだよ、こうしたらさっさと起きるだろうに。」
大きい女の人……。
「痛いです。苦しいです。」
1分くらいもがいていたけど、やっと落ち着いて来て、出た言葉が痛いと苦しいだった。
「俺はオーク族のボンゴだ。お前の見届け人に指名された。よろしく。」
「あたしゃシャミイ、アマゾネスだよ。アンタの護衛に指名されちまった、よろしくな。」
背の高い女の人に持ち上げられて、無理矢理に近い感じで、椅子に座らされて2人から挨拶された。
「か……かざ……かざ……。」
「あ? ハッキリ喋れよ。」
背の高い女の人が、怒って僕の襟首を掴んで持ち上げようとしてる……。
スチャって音がして、女の人の首元に刃物が当たって、豚みたいな顔をした人が……。
「シャミイ、いくらお前でも、それ以上やったら
「はいはい、たくよぉ。こんなチビで細モヤシの相手なんかしなきゃなんて、貧乏くじ引いちまったな……。」
刃の付いたトンファー! ガゼル(*1)みたいだ、凄い……カッコイイ……。
「どうせお前は何もする気が無いだろ? 護衛も誰かに下請けに出すつもりなんだろうし。」
刃の付いたトンファーを
「正解! こんなのの護衛なんて低級冒険者にやらせりゃ良いんだよ、あたしゃ行くよ。」
酒でも飲もって言いながらドアを豪快に開け閉めして背の高い女の人がいなくなった。
「風間……拓斗です。よろしくお願いします。」
精一杯挨拶した。
「おっ、 少しは落ち着いたみたいだな。ポーション使った甲斐があったか。どうしたんだ? 身体中が痣だらけだったが。」
痣だらけ! バレた! と思った。
「首から下だけに痣があったって事は、イジメか? 答えなくていい、イジメだな。もしくは虐待だが、虐待は無さそうだな。」
何かのプリントを見ながら豚の顔のボンゴって人が考え込んでる。
「昨日の卒業式の後で、卒業して違う高校になったら、サンドバッグが居なくなるからって言われて、同級生からいつもより沢山殴られたり蹴られたりしました。」
正直に答えてみた、そしたら。
「
そう言われたら、何時も痛かった胃が痛くない……。
さっきの背の高い女の人が、シャミイって名前だったな。
「アイツな、お前みたいなのを見ると、ほっとけ無いんだよ。さっきも、お前の身体検査中に泣き出しそうだったんだぞ。口は悪いが良い奴だ、口の悪さは許してやれ。」
首を縦に振って応えようとしたら。
「ちゃんと声に出す。ここでは、お前が喋っても、誰も暴力は使わない。誰もお前の事を傷付けない。安心しろ。」
そう言われた。だから。
「はい! よろしくお願いします。」
久しぶりに大きな声を出せた気がする。
「うん、その調子だ。着替えは、そこに用意してある。着替えたら寮に案内するから出てこい。」
そこと言われて、見てみたら。
机の上に、今着ているのと同じような、休みの日に良く着てる、綿のズボンと灰色のパーカーと白のTシャツ、靴と靴下が置いてあった。
「はい! 」
家族や親友以外に、久しぶりに大きな声で返事が出来た気がする。
着てみたら、やっぱり何時も着てる服と同じで、さっきまで着てた服と同じ物みたいだ、ヨレヨレだったのが、新品を着てるみたくなった。
さっきのボンゴって人、上半身に毛皮のチョッキを着てて、下半身はハーフパンツだったけど、見た感じ太ってると言うよりも、お相撲さんみたいに筋肉の
顔は豚が少しだけ人間ぽくなってただけだったよな。オーク族か……。
「夢じゃないのかな? 本当に異世界だったりして……。」
小さく呟いただけだったのに、ドアの外から。
「夢じゃ無いぞ、これは現実だ。しっかり認識しろ。お前は死んで、異世界に来た。ここで暮らすんだ、日本に帰る為にな。」
転移だったら日本に帰れる、日本で死んだ直後に生き返って……。だったよな。
ドアを開けて部屋から出たら、病院の廊下みたいな所に出た。
「今日こっちに来た転移タイプの冒険者候補は、お前1人だ。だから同期は居ない、1人で何もかも出来る訳が無いからな、何かあったら俺に聞け。」
前を歩くボンゴさんが、僕の歩幅に合わせて歩いてくれる。
「普通は、大勢来るような所なんですか?」
「俺やシャミイが来た時は、確か同期が100人は居たと思うぞ。まあ50年以上前の話だけどな。」
50年……いくつなんだろこの人。
「いくつなんだろ?って思っただろ?女に年齢は聞くな。俺は元日本人の女だ。条件達成して雄に性転換して貰っただけでな。」
条件って……。
「僕の条件ってなんですか?日本に帰る条件って。」
廊下の曲がり角を曲がったら、なんかマンションの廊下みたいな所に出た。
「それはお前の部屋で話そう。研修中は個室が与えられるんだ。日本と色々違うから設備の説明しながら教えてやるよ。」
「はい!よろしくお願いします。」
「ん、いい返事だ。風間、こっちこそ、よろしくな。」
父さん、母さん、妹、いつか必ず日本に帰るから、悲しまないで待ってて下さい。
突然色々あり過ぎたけど、冷静に考えられてるというか、楽しそうだって思える。
物語の主人公になった気分だな。
廊下の中央くらいに階段があって、階段の真正面にエレベーターがある。
「エレベーターが付いてますけど、ホントにここは異世界なんですか?」
ボンゴさんが振り向きながら、教えてくれた。
「今のお前の魔力じゃ1cmも動かせ無いさ、体力作りの為に、階段で昇り降りするんだな。貧弱すぎるぞ、その体は。」
やっぱりか。
「持病は全部治して貰えるから、運動しても大丈夫だ。それと部位欠損も先天性の継続系の状態異常も治して貰えるからな。」
え?ホントに?
「治るんですか?僕の肺って。」
「欠損してる足の指と左手の指、欠損してる右の肺と、死にかけてる左の肺の半分も、綺麗さっぱり元通りになるさ、骨の成長異常もな。」
「運動しても大丈夫なくらいにですか?」
ボンゴさんが、手を大きく広げた。
「半年後にモンスターと戦えるようになるくらいに、健康な体になるさ。」
唖然とした、これが異世界転移で貰えるチートでも構わないってくらいに。
僕がずっと欲しかった健康な体が、死んでから手に入るなんて。
やっぱり
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