自称女神
「やあ、少年。どう? 異世界生活は順調かなあ?」
不意にそんな声が掛けられた。
『この声は…!?』
ハッとなって声の方に振り返った彼の視線の先にいたのは、なんとも言えない妖艶な気配を放っている、はっきり言って『淫猥な』印象の妙齢の女性だった。
胸の大きさだけならあのファミューレという女性の方が明らかに上だったものの、とにかく胸や腰や太腿といった<セクシャルなパーツ>を露骨に強調するような、着物ともドレスともつかない奇妙な服を着た。
「あなたは……?」
なんかもういろいろ意味不明すぎてそうとしか口にできなかった。
そんな彼に女性はニヤアと、ものすごく『いやらしい』笑みを浮かべ、
「私はあなた達人間が言うところの<神>だよ。あなたを転生させチート能力を授けた<女神>というところかな。名は、クォ=ヨ=ムイっていうの」
「コヨミ…? そのコヨミさんが何の用ですか?」
こうして現に<異世界転生>などという有り得ないことが起こってる時点でもう神だとか女神だとかそういう部分にツッコむ気にはなれなかった。
そういうのはどうでもいいので、要点だけはっきりさせてもらえればそれでよかった。
不信感を隠す気もない怪訝そうな表情で自分を見る彼に、コヨミ、いや、クォ=ヨ=ムイと名乗ったその<自称女神>は、
「あらあら、ツレナイのねえ。こんなお色気ムンムンの綺麗なお姉さんを前にして。これがいわゆる<草食系男子>ってことなのかな?」
などと不満そうに唇を尖らせた。
『お色気ムンムン』とか『草食系男子』とか、微妙に古いフレーズを使う彼女に、リセイはますます不機嫌そうな表情になっていく。
「用がないならもういいですか? 僕、忙しいので」
なるべく刺々しくならないようにと気を遣いながらもどうしても冷たい言い方になってしまう。
するとクォ=ヨ=ムイは、
「やれやれ……」
と肩を竦めながら、
「あなたの能力について一つ忠告をしに来てあげたのに、その態度はないかなあ」
そうこぼした。
「! 忠告……?」
もう背中を向けようとしていたリセイがその一言で振り返る。
そんな彼にクォ=ヨ=ムイは言った。
「あなたの要望どおり、用件だけ伝えるわね。ベルフもアムギフも、呼んだのはあなただってこと。
正確には、あなたの能力が呼んだのよ」
「…っ!? それってどういう……?」
クォ=ヨ=ムイの思いがけない言葉にみるみる青ざめていくリセイに、クォ=ヨ=ムイはなお言ったのだった。
「私があなたに授けた能力は、あなたが望んだことが実現するもの。
つまり、良いことも悪いこともあなたが望めば実現するんだよね~。
で、あなたは無意識に望んだのよ。
『こういう時は敵が出現してピンチになるよね』
ってさ」
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