最終話 まだまだ彼女にはかないません。

「ほら 恩田休まず走れ!!」

「はい!」


「フェイントがバレバレだぞ!」

「はい!」


3学期も終わりが近づいた体育館。

変な時期だったけど僕は優子との約束通りバスケ部に途中入部し、鈍った体に鞭打って練習に参加していた。

今は皆とは別メニューで先輩の指導を受けている。

フィジカル面もだけどチームの戦術も色々覚える必要があるからね。

指導してくれているのはバイト先の先輩でもある田辺先輩と川北時代の先輩の吉見先輩。2人とも普段は優しいけど流石に部活の指導は厳しい。


「じゃ今日はここまでな。お疲れさん」

「ありがとうございました!!」


そんな厳しい練習も何とか今日の分は終了。

僕が壁にもたれ掛かって休んでいると見知った男が話しかけてきた。


「随分しごかれてるな。まぁブランクもあるんだからあんまり無理すんなよ」

「日吉か・・・でもさ、僕だけみんなより出遅れてるんだブランクとか言ってられないだろ」

「・・・お前って普段ふざけてるのにそういうところは真面目だよな。

 でも、そこが良いところか。僕もまた恩田と一緒にバスケ出来て嬉しいぜ」

「マ マジか・・・僕はそっちの趣味は・・・って言うか優子一筋だし」

「き 気持ち悪いこと言うなよ!僕だってそんな趣味ないぞ!」

「冗談だよ。まぁ元チームメイトってことでこれからもよろしくな!」


川北中時代のチームメイトの日吉。

それに同じクラスの栗田。

2人は僕の実力を認め、入学以来ずっとバスケ部に勧誘してくれていたからな。

入部したからには期待に応えてやりたいし・・・優子を惚れ直させるくらいのプレイをしてみたい。


「あ、そういえばさっき富田が見に来てたぜ。バレーボール部の練習が終わったんじゃないかな」

「何!それを早く言えよ!」


と慌てて2階の観覧席を見ると先輩と思われる女性と楽しそうに話をしている優子が居た。あの先輩は確か長谷部先輩の彼女さんだったかな?

と、僕が見ていることに気が付くと可愛らしく手を振ってくれた。

ヤバ!可愛い!思わず顔がにやけてしまう。


「ほんと・・・お前富田にベタ惚れだよな。まぁ確かに可愛いけど(僕は怖くて無理っす)」

「いいだろ別に。じゃ僕は優子と帰るから!またな!」

「お おぅ・・・」


日吉に別れを告げ、練習の疲れをものともせず部室にダッシュ。

着替えて部室を出ると優子が部室の前で僕を待っていてくれた。


「悪い!遅くなった」

「部活なんだから仕方ないよ。一緒に帰るって約束もしたしね。

 それに・・・真剣にバスケしてる智樹も見れたし・・・・カッコよかったよ」

「ほ ほんとカッコよかった?もしかして惚れ直した?」

「ちょ 調子にのらないの。早く帰るよ!」

「ちょ 待ってよ」


少し頬を赤らめながら走り出す優子。

勉強もスポーツもいつでも僕の先を歩いていた自慢の幼馴染。


でも・・・バスケでなら少し近づくことが出来るのかな。


まだまだ優子にはかなわないけど、いつかは自信を持って隣に立てる男に・・・なれるんだろうか?


まだまだ彼女にはかないません。


****************

あとがき


これにて「彼女にはかないません!」終了となります。

元々2000文字程度の短編で書いていた作品ですが、7年目の約束アフターストーリーでバスケ部に復帰した恩田君の話をもう少し書けたらと思い連載化しました。

ストーリー的に無理やりな部分も多いですし、深堀せずに詰め込んでる部分も多々あるので少し改稿したい気もしているので時間取れれば改稿も考えてはいますが、いったんバスケ部入部までは繋げることも出来たので完結にしたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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彼女にはかないません! ひろきち @hiro_1974

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