第11話 彼女の気持ちとバスケ部と

3学期が始まった。

早いもので高校入学からもうじき1年が経過する。

後数か月で僕らも2年生だ。


「なぁ恩田頼むよ。バスケが嫌いになったわけじゃないんだろ?」

「う~ん。でも今更なぁ~」

「大丈夫だって途中入部とか全然OKだし、恩田先輩だってもうすぐ卒業じゃん」


放課後の教室。

例の如く僕は栗田と雑談をしていたのだけど・・・雑談がいつのまにやら僕のバスケ部への勧誘に変わっていた。


栗田とは中学時代からお互いライバル校の選手ということで面識があった。

もっとも当時は会話したりするほどの仲じゃなかったんだけど、高校入学後に栗田から声を掛けられよく一緒に話す仲になった。

栗田曰く僕のプレイは印象的で忘れられなかったとの事だけど・・・中学時代はそれ程評価されなかったんだよな。

まぁ中学時代からスタープレイヤーだった姉貴の印象が強すぎでそれと比べられちまったところはあるみたいだけど。


だから高校に入ってからバスケ部に入らなかった。

比べられるのにもうんざりしてたし、優子も部活に入らなかったから一緒に居られる時間も増えると思ったんだ。

入学当初は僕がバスケ部に入ると思っていた栗田や中学で同じバスケ部だった日吉からも散々誘われたけど今一つバスケへの情熱というかやる気が起きなかった・・・


「でもなぁ~」


と渋っていると教室の扉が開いた。

栗田と僕が扉の方を見ると帰り支度をした優子が居た。


「どうしたの?」

「あ、富田さん。富田さんからも恩田のバスケ部復帰を勧めてくださいよ」

「バスケ部?智樹はバスケ辞めたって。まだ勧誘してたの?」

「辞めたは辞めたんだけど・・・勿体ないよ。あんなに才能あるのに。スポーツ大会でも大活躍だったじゃないか」

「そうだけど・・・智樹はどうなの?そんなの本人の気持ち次第でしょ?」

「僕は・・・・」


正直悩んではいる・・・今の生活も悪くはないけど夏の大会見に行っちゃったんだよな。。。

姉貴の事が気になったのもあるけど、栗田達の誘いを散々断っておきながらも何処かバスケに未練はあったんだろうな。

全国大会・・・あの姉貴が試合に負けて悔しそうに泣いていた。

全国には姉貴よりも上手い選手は沢山いる。

それに栗田や日吉の活躍ももちろん見た。中学の時より確実に上手くなってた。

バイトでお世話になっている田辺先輩や川北でお世話になった吉見先輩や由良先輩も凄くカッコよかった。

僕もあのコートに居たならとか思いもした。

でも・・・


「もう!はっきりしないわね。本当はバスケやりたいんじゃないの?」

「い いやでも僕は優子と一緒に居たいし・・・」

「私を理由にしないでよ!私が理由なら今だってバレーボール部の練習に参加して週の半分くらいしか一緒に帰れてないじゃない!」

「あ あの富田さん落ち着いて・・・」


やばい・・・何だか優子のスイッチ入っちゃったか?

随分ヒートアップしてるぞ。

栗田も怯えてるし・・・・目つき怖いって・・・


「あ あのさ優子・・・さん?」

「・・・わかった。じゃあ私は正式にバレーボール部に入るから智樹もバスケ部に入りなさい」

「「え!?」」

「あ あのそれってどういう?」


何でそうなる?話が読めないんだけど・・・・

栗田も今度は何が何だかって顔してるじゃん。

ちょっと見てて面白いけど。


「バスケ部は新体育館、バレーボール部は旧体育館を使って練習してるけど、確か練習日は同じよね栗田君」

「は はい。同じです!」


栗田・・・急に振られたからってビビるなよ・・・

気持ちはわかるけど。


「でしょ。それなら部活終わりに一緒に帰れるよね?」

「あ・・・!」

「わ 私だって智樹と一緒に居たいんだからね!

 それにこれならバスケ部に入っても一緒に帰れるでしょ?」


そう自分で言いながら照れてきたのか段々顔が赤くなってくる優子。

目を逸らすなって・・・何だか可愛すぎるだろ♪

でも・・・そっか優子の言う通りだな。

そう考えていると恐る恐るといった感じで栗田が発言した。


「あ、あの富田さんの案は実践されてるから大丈夫だよ。

 2年に長谷部先輩って人が居るんだけど、バレーボール部の湯川先輩と付き合ってて毎回部活終わりに待ち合わせして帰ってるから」

「ね。これなら智樹も気兼ねなくバスケ部に入れるでしょ。

 それに・・・私はバスケしてる智樹は結構カッコいいと思うけどな・・・」


・・・カッコいい?


「・・・栗田。僕バスケ部入るわ。手続きは顧問の田中先生のところに入部届をだせばいいのか?」

「え!いいのか!入ってくれるのか!」

「そんなの・・・友達の誘いを無下に出来るわけないじゃないか」

「そっか!ありがとな!(って富田さんにカッコイイとか言われたからだろ)」

「優子!僕頑張るからな!」

「よろしい!」


こうして1年の3学期に散々断ってきた割には意外とあっさり僕のバスケ部復帰が決まった。

ただ、それなりに筋トレはしてたけどブランクもあるし少し気合入れないとな。

やるからには・・・ベストは尽くしたい。


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帰宅後、夕飯の時にバスケ部に入ることを家族に告げたら何故か姉貴に抱き着かれてメチャクチャ喜ばれた。

母さん曰く僕がバスケを辞めたのは自分のせいだと気にしていたらしい。

・・・普段そんな素振りとか見せないのにな。

ま、姉貴の為にも頑張りますかね♪

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