第7話 彼女との夏休み③ -夏祭り-
僕の名前は恩田智樹。
ごく普通の高校生なわけだが、今僕の目の前では川野辺高校で3年連続彼女にしたい女子1位を獲得した姉貴と今年3位を取った僕の恋人の優子という2人の美女が楽しそうに会話をしている。
何だか贅沢。
「優子ちゃんやっぱり浴衣似合うわねぇ~」
「ありがとうございます。でも智花姉には敵わないですよ」
「え?本当?優子ちゃんって正直だからそう言ってもらえると嬉しいな。
雄一も褒めてくれるかなぁ~」
「小宮先輩ですよね。智花姉に惚れ直しちゃいますよきっと」
「よっし!頑張ろ!じゃ雄一達と待ち合わせしてるから先に行くね。
あ、智樹!優子ちゃんが可愛いからって変なことしたら駄目だからね!」
「し しないって・・・・」
さて、今日は川野辺天神の夏祭りだ。
姉貴は恋人の小宮先輩と友人の小山内先輩、梶先輩と祭りを楽しむらしく浴衣を着て待ち合わせ場所に向かった。
多分小宮先輩に浴衣姿をウザい位にアピールするのだろう。まぁ小宮先輩も姉貴の事大切にはしてくれてるけど・・・姉貴って結構めんどくさいところあるから大変だよな。
そして僕は・・・・
「智樹・・・・どうかな?今年はお母さんに頼んで浴衣新調したんだけど」
「眼福」
「へ?」
「あ、いやこっちの事。凄く似合ってます。はい」
「うん。よろしい。智樹もその浴衣中々似合ってるよ。じゃ私達も行こうか」
ということ事で僕は優子と2人きりで浴衣デート・・・というわけでもなく現地で有坂達と待ち合わせをしているんだけど少し早めに行って合流まで2人で祭りを楽しむってことになってるんだ。
「ちょっと智樹歩くの早いよ!」
「あ、ゴメン。つい・・・」
今日は浴衣ということで歩きにくい上に僕も優子も下駄を履いている。
普段は優子も結構歩くの早いんだけど今日は慣れないからか歩くペースも遅い。
僕が優子に合わせなくちゃな。
「手を・・・」
「お手?」
何?僕は優子の犬なの?
「ち 違う。手を繋ごうって・・・」
「あ、そうだね」
僕はそっと優子の差し出してきた手を握り再び歩き始めた。
僕から手を繋いだことはあったけど、優子から声を掛けられて繋いだのは初めてかもしれないな。ちょっと嬉しい♪
川北のバスターミナルからバスに乗り川野辺天神前の停留所で降りた僕たちは、沢山の人で賑わうお祭り会場へと向かった。
「何だか年々人が増えてる気がするわね」
「雑誌とかテレビでもこの時期結構宣伝してるからね」
「とりあえず・・・折角のお祭りだし何か食べましょ」
「そうだな。じゃとりあえずたこ焼きとかどう?」
「いいね~」
2人で色々と屋台グルメを楽しみながら歩く。
小さい頃から毎年お祭りには来ているけど彼氏彼女の関係になってからは初のお祭りだ。
そう思うと何だか楽しさも倍増する気がするし優子もいつもと違って見える。
でも・・・今日はお祭りを楽しむだけじゃなくもう1つ目的があるんだ。
「ねぇ次は何処行く?」
「優子・・その・・天神様にお参りに行こ」
「え?お参りってあそこは・・・恋愛の神様で・・・」
「あぁ。毎年お祭りに来ても何となく避けてた。
でも・・・いいだろ?僕達付き合うようになったんだし。駄目か?」
「そう・・・だよね。私達付き合ってるんだよね。行こう智樹!」
小さい頃はあまり恋愛とか意識せずにお祭りに来ると天神様にお参りに行っていた。でも・・・優子を異性と意識し始めてからは何だか"一緒に行こう"って声を掛けられなくて避けてたんだよな(むしろ距離を取ろうとしちゃったし)
今日は絶対に誘うつもりだったけど・・・・良かった。
お祭りのメイン会場を出て天神様に向かう参道へ。
参道も綺麗にライトアップされている。
恋愛の神様への参道は沢山の恋人たちであふれている。
正直・・・緊張する。
「ここを優子と一緒に歩けるとは思わなかったよ」
「ふふ 私は智樹以外と歩く予定はなかったけどね」
「優子・・・・」
鳥居をくぐり天神様に到着するとお参りの列が出来ていた。
やっぱり人気あるんだな。
緊張しながら優子と列に並びいよいよお参りの順番が回ってきた。
僕も優子も久しぶりの天神様に真剣にお参りをした。
「優子は何をお祈りしたの?」
「ふふ 秘密♪ 智樹こそ何お祈りしたの?」
「ゆ 優子が秘密なら僕も秘密だよ」
「へぇ~ 何かエッチな事とか頼んだんでしょ!」
「ち 違うよ ずっと優子と居られます様にって・・・・あ・・・」
何故か優子は俯いてしまった。流石に引いちゃったか?
「その・・・私も同じだから・・・」
「え?」
何?同じ・・・?よく聞こえなかったけど少なくとも悪いようにはとらえられなかったみたいだな。
「は 早く待ち合わせ場所行こ!遅れちゃうよ」
「え?あぁそうだな思ったより行列で時間かかっちゃったな」
待ち合わせの時間も近づいてきたため、僕らは歩きにくいながらも少し速足で待ち合わせ場所の社務所前に向かった。
すると
「恩田、富田さん」
「あ、栗田。それに鮎川さんと大室さんも。もしかして遅れたか?」
「大丈夫だよ。僕らも今着たところだ」
「有坂達はもう来てるのか?」
「さっきまでそこらに居たんだけど・・・あっあそこ。誰かと話してるな?」
「あれって栗平さんじゃない?」
「栗平?じゃあ隣は鶴間かな?」
「鶴間?」
「あ、恩田と富田さんは知らないか。鶴間は栗平の彼氏だよ。僕らと同じ川野中出身で今は倉北に通ってるんだ」
「へぇ~っ栗平さんの彼氏か。っていうかこの間のプールの時の人か。
あ、有坂達こっちに戻ってくるぞ」
話が終わったのか浴衣姿の有坂と山下さんが僕らの方に戻ってきた。
2人の浴衣は似たような色味でお揃いの様にも見えていかにも恋人な着こなしだ。
うん。来年は僕も優子と真似させて頂こう。
「あ、恩田達も来たんだな」
「悪ぃ遅れちゃったみたいだな」
「大丈夫だよ。今日はゆる~い待ち合わせだったからね。
あ、2人ともお参りは行ったんだろ?」
「あぁさっき2人で行ってきた」
「了解♪ じゃみんなでこの辺り見て回ろうぜ」
その後、有坂と山下さんを先頭に皆で射的や輪投げなどのゲームを楽しんだり、りんご飴やベビーカステラ、綿あめなどなど屋台の味を楽しんだ。
というか何だか食べ過ぎた。。。そういえば合流前にも結構食べたよな。
ちなみに途中、姉貴たち含め高校の先輩方にも何度か会ったけど何このカップル率。川野辺高校はリア充の集まりなのか?
そんなことを思いながら歩いているとお祭りを締める打ち上げ花火開始のアナウンスが流れてきた。
「智樹・・・花火始まるね」
「そうだな。この花火見ると夏も終わりな気がするよな」
「うん。そうだね。でも今年の夏は何だか楽しかったな・・・智樹と一緒で」
ん?何だかいい雰囲気じゃないかこれ・・・
「僕も・・・・優子と一緒に居られて楽しかったよ。優子[バーーーン]
ってここで花火!!
「わぁ綺麗! あ、何?智樹今何か言った?」
「え あぁ 何でもない。ハナビキレイダナ」
夏も終わる。優子との距離も少しは縮まったんだろうか?
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<補足>
話としては"7年目の約束"の86話,"僕は彼女が嫌いなはずだ"の36話の辺りです。
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