第201話:福岡01ダンジョンの解放
「うわぁ」
「すごぉーい」
三カ月ほど宮崎県のダンジョンに通い、向こうの支部の依頼で正確なダンジョンマップを作製。
さらに広島へも出張し、解放予定だという小規模ダンジョンの地図制作も行い、福岡01攻略に戻ったのは宇佐解放から半年近く経っていた。
その間に福岡01ダンジョンの周辺は様変わりしている。
「たった半年でこんななるとはなぁ」
「宇佐の時は即興だったのもあったけど、あれに比べるとずいぶん頑丈な壁やねぇ」
元々あった壁の外側に、さらに壁を作る――というのは宇佐と同じ。
だけど壁は三重。モンスターを迎え撃つための場所もかなり多く作られていた。
まぁ宇佐26階に対し、こっちはおそらく100階層だもんなぁ。
「まぁここは九州でも一番大きなダンジョンだしなぁ。そういややっと80階まで攻略されたらしいよ」
「私たちどこまで行っとったっけ?」
うぅん、どこだっけなぁ。
宮崎にも二つのダンジョンがあり、一つは農地として残し、一つは完全開放するようだ。
解放するダンジョンは、天神と同じく市街地に生成されたもの。
冒険家の育成だの食料だのなんだのとごねてた人たちも多かったが、けっきょくは半々という結論になった。
初期のダンジョンは、ほとんどが人口密集地に生成されている。
各県の交通網を繋げるのに、やっぱり県庁所在地ってのはいろいろと都合がいい。
そういう点でも、解放して元に戻すべきだという結論に至った。
だからこの福岡01ダンジョンも……
「さぁて、三カ月の遅れを取り戻さないとな」
「やね」
『んにゃ~ん』
「そんじゃ、よろしくお願いします」
「あぁ。駆け足で進むから、そのつもりでな」
「そのために四パーティーが、浅蔵くんらを護衛するんやけなぁ」
攻略されている80階までは、福岡でも強豪パーティーが道案内兼護衛してくれる。
81階からの攻略スピードを上げるために、俺の図鑑を活用するためだ。
「宮崎のダンジョンはどうだった?」
「難易度的には福岡の02より気持ち高いぐらいやった」
「そっか」
「やっぱここが一番厄介だったな」
俺のパーティーは、セリス、虎鉄、甲斐斗と上田さんといつものメンバーだ。
芳樹たちは宮崎には同行していないので、あれからもここの攻略を続けている。
あいつらも昨日、80階まで到達したようで、今日は休息日。
「芳樹のやつ、なんか凄くいいスキル貰ったって言ってたな」
「あぁ。10秒と短い時間だが、全身を覆う反射系の防御結界を張れるらしい」
「結界に触れると、モンスターを吹っ飛ばせるそうです。でも、敵味方の判別はできないらしくって」
と上田さんが苦笑いで話す。
つまり、仲間――というか人間もその結界に触れると吹っ飛ぶらしい。
翔太が実演して、肋骨折ったとか。
「芳樹に悪戯するの止めとこう」
後ろから肩叩いて頬を指で突く――なんてことやった日には、スキルで吹っ飛ばされるかもしれない。
「お、モンスターのお出ましだ」
「三体やけん、俺らでサクっとやる」
「任せる」
道案内兼護衛パーティーの面々は、さすがに強い。
そりゃここはまだ34階だもんなぁ。
俺たちが図鑑転移で下りられるのは、地下34階まで。
そこから下はまだ攻略したことがない。
もっと下の方まで行ってた気がしてたんだけどなぁ。
道案内がいるとはいえ、80階に到着するのに一カ月も掛かった。
途中からは俺たちのレベル上げもしながら進んだからってのもあるけど。
「ほんっとお世話になりました」
「あぁ、お世話したよ。ってことで81階からのマッピングは頼むな」
「任せてください」
「足並み揃えての攻略になるだろうし、ダンジョンの送り迎えも時々は頼むけん」
「時間を合わせて貰えれば送り迎えしますよ」
「浅蔵くんが毎日送り迎えしてくれたおかげで、ダンジョン進んでんのに毎晩ベッドで眠れて助かったばい」
そう言って貰えると、送り迎えした甲斐があったというもの。
80階に下りる階段の踊り場には、見覚えのある面々が。
「やぁっと来たか」
「おう、待たせたな芳樹」
「虎鉄ちゃん、久しぶりぃ」
『んにゃぁ~。肉球触るにゃか~?』
「触る触るぅ」
『雄はだめにゃ』
言われて翔太は肩を落とす。
ここからは芳樹のパーティーと合流して攻略を進めていくことになる。
20時には階段に戻って、攻略パーティーも拾って地下一階、そして地上へ。
朝8時に地下一階から、現攻略階層へ。
毎日少しずつ進んでいき、81階、82階……
十カ月後――
【福岡01ダンジョンの真なる最下層ボスモンスター『福岡01ダンジョンイフリート』が討伐されたよ】
【討伐パーティーをこれより裏マップに転送するよ】
一度は時間制限で裏ボスチャレンジに失敗したが、ボスの戦闘データが取れたこともあって最適パーティーを選出。
結果、別のパーティーが裏ステージに行くことになった。
表のボスはイフリート。炎の精霊として、よく物語に登場する。
そして裏はベヒモス。こちらは大地の精霊だ。
表のボスの弱点は水で、炎は無効。対して裏は炎が有効。
表は他のパーティーで体力を削り、止めを裏へ行くパーティーが。
その裏攻略メンバーには、火竜変身なんていうロマンスキルを持った人がいた。
更に『小鳥召喚』スキルで、オープンフィールドであれば、広範囲の索敵が可能というスキル持ちもいて――
俺の分身で索敵するよりよっぽど効率がいい。
結果、一時間半後には――
【あぁあ。福岡01ダンジョンの真なる最下層裏ボスモンスター『福岡01ダンジョンベヒモス』が討伐されたよ】
【60分後にスタンピードが始まるからねー】
という、なんとも投げやりなアナウンスが流れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます