第189話:冷暖対策
26階表。ここは見たまんま、とにかくずーっと氷だったということだ。
ボスは雪男イエティ。ただ5メートルほどある。でかい。
「とにかく寒いんだよ。だから寒さ対策は必須だな」
「そうそう。防寒着だけじゃダメだ。第一厚着してたら動きも阻害されるしな」
寒さ対策なぁ。
で、検証パーティーから出たのは、ボス見つけたらとにかく周りでストーブを焚いたらどうかってこと。
「氷が解けないか?」
「いや、溶けない。うちには火魔法使うメンバーがいるが、スキルでも溶けなかったし、途中で七輪とかも用意したけど平気だ」
「じゃあアイテムポケットに石油ストーブをがんがん入れて持って行くか」
「僕の鞄だといっぱい入るよ」
なら翔太に任せよう。
問題は裏ステージだ。
よくよく聞くと、地面は岩で歩きにくいというほど凸凹はしていないらしい。
「けどな、んー。6畳の部屋に一カ所、足がすっぽり入るぐらいの穴が開いてるんだ。その穴の中は溶岩が煮えたぎっている」
「うえぇー」
「んで、たまに池ぐらいの大きさのもある」
「ぐえぇー」
「翔太、黙ってろ」
そんな感じで、常に足元を気にしながら歩かなきゃならないらしい。
「裏ってやっぱり暑いんですか?」
上田さんが遠慮がちに尋ねる。
検証パーティーの面子は頷いたが、あっさりした顔だ。
「暑いけど、火口の中という設定なら全然平気かな」
「表があれだったから温度計持って行ってたけど、42度だったよ」
いや、十分暑いでしょ。
「だから水分多めに持って行くといい。冷感スプレーとかさ」
「ああ、あと着替えね。表からそのままだと死ぬよ。うん、あれは死にそうだった。脱げばまぁなんとかなるさーって感じで」
極限の寒さ対策のあとは暑さ対策か。
準備が大変そうだ。
「じゃあ俺たちは石油ストーブと灯油を買って来る」
「こっちはひんやり系を探してくるよ。この時期に売ってるのかなぁ」
まだ五月だもんなぁ。在庫をバックヤードに置いてある店とかなら、店員に頼めば出して──
そういや福岡02に落ちたのって、夏……だったよな。
そうだよっ。プールとか置いてたんだし、冷感スプレーだってあるはずだろう!
『あさくにゃー。あさくにゃー』
「ん、なんだ虎鉄」
『スキルポイント貯まってるにゃー』
「そうか? それで、何を取るんだ?」
『何がいいにゃー?』
いや、聞かれてもお前が取れるスキルに何があるのか知らないし。
『ぼこぼこ溶岩に蓋が出来そうなのあるにゃよー』
「蓋?」
「虎鉄、それってなんなん?」
『んにゃー。ロックブロックにゃー。敵に落としてダメージを与えたり、穴を塞いで道を作ったりもできるにゃー』
うぅん、よく分からん。
詳しく聞いてみると、ブロックの最大面積はスキルレベルに依存。
ただし縦横高さは自在に操れる。
『効果時間はレベルい1で3分にゃ』
「短いなぁ」
「虎鉄、レベルが上がると時間はどのくらい伸びるんだ?」
『30秒にゃ。けど最大で60分にゃよ』
そんなに長くなるのか。消えそうになれば途中でかけ直しをすればいい。
ただ短いとその頻度も多くなるし、そのたびにブロックの上から退去しなきゃならなくなる。
それが面倒だ。
「ボス攻略開始が許されるにはあと二日だが……表のボスがもう出ていたら大分の奴らに先を越されてしまうな」
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