第188話:検証結果

 宇佐から連絡が届いたのは十日後だった。


「随分時間が掛ったな」

「なんでも最下層の気温が低すぎて、長時間活動できなかったのが大きかったようです」

「マイナス45度やけん、仕方なかとよ」

「だよなぁ」


 最下層のボスを探す、1チーム12人。それを2チームでボスを捜索。

 だが一時間もすれば耐えれなくなって帰還の繰り返しだったそうだ。


 んで、今回のボスも徘徊型。

 9日目にボスが階段近くをのっしのっし歩いている時に、休憩していたチームが見つけたらしい。

 すぐに発煙筒で出ていたチームに連絡。

 階段転移のスキル持ちがメンバーにいたので、それを使って合流してから倒したとのこと。


「それで、裏ステージってどんなだったんです?」


 報告をしに俺たちの自宅へとやって来た小畑さんに尋ねた。

 芳樹たちも一緒だから、リビングが狭い……。


「裏はね、表とは対照的だったそうだよ」

「対照的って、まさか火山地帯とか?」

「そ。まぁ火山というか、物凄く広い洞窟みたいなところで、足元は岩と、それよ溶岩溜まりだ」


 うげぇ。それ落ちたら絶対死ぬ奴だろ?


「落ちたら死ぬのか、小畑さん」

「分からない。裏ステージに進んだパーティーの冒険家たちは誰も落ちなかったからね。ただ跳ねた溶岩が手についてしまった者がいて……大火傷だよ。すぐに治療したから大事には至らなかった」

「それ絶対ダメな溶岩じゃん!」

「溶岩対策もしなきゃならないのか」

「溶岩溜まりのない場所にボスをおびき寄せて、そこで戦うかだな」


 実際に見た人から直接聞かなきゃ分からないが、福岡02よりも条件が厳しそうだな。

 8時間というタイムリミットの中、溶岩ぼこぼこを避けてボス探しは難易度が高い。


「あ、そうそう。裏ステージに行く条件だけどね──」


 セリスが入れたアイスコーヒーを一口すすり、小畑さんが話を続けた。

 2チームによる最下層表ボスを倒しての裏ステージへと転移する条件。


「どうやら止めを刺したパーティーが優先されるようだ。最初にAチームが攻撃を開始して瀕死状態まで持ち込み、あとはBリームに止めを任せる。その結果、裏に飛んだのはBチームだった」

「そうですか。ボスが瀕死状態になるのを、しっかり見極めなきゃダメですね」

「もしくわさ。みんなでタコ殴りにして、ちょっとしたらメインパーティー以外、戦うの止めちゃえばいいんじゃない?」

「まぁどちらにしても、ボスの体力の見極めが大事だろうね。君たちは明日、宇佐に向かってくれ。攻略パーティーから直接話を聞くといい。あと──」


 小畑さんが小さなため息を吐く。


「大分攻略パーティーのトップランカーがね、最下層裏ボス討伐に名乗りを上げているんだ」

「え、マジですか」

「まさか報酬のスキルやアイテム狙いなんじゃっ」

「いや、それはない。ただ表ボスを倒せばスキルを獲得できるかもしれないだろう? それが目当てだそうだ。もちろんそのまま裏も倒すつもりでいるらしい。そして大分の英雄になるんだと」


 え、英雄!?

 なんだよそれ、恥ずかしい連中だな。


「だから最下層からヨーイどん……なんだが、あっちはもう攻略に乗り出しているそうだ」

「え、小畑さんそれヤバくね?」


 ヤバい……のか?

 攻略できるなら別に俺は誰でもいいと思っている。

 ただ完全開放はスタンピード問題もあるので、足並みは揃えたいってのはあったけど。


「完全開放に向けて、宇佐周辺のスタンピード対策はしてあるのですか?」

「今日から半径50kmに住む住人の避難を呼びかけている」

「もし大分のパーティーがすぐに表のボスを見つけて倒して、これまた偶然すぐに裏ボス倒したりしたら……間に合わないじゃないですか!」

「あぁ。だから三日間は手出しをするなと言っている。ただな」

「ただ?」


 検証パーティーがボスを倒したのは昨日の夕方のこと。裏ボスは見つからず、8時間後に自動的に26階へと戻ってきている。夜中の事だ。


「表のボス。暫く復活しないだろう」

「「あぁ、なるほど」」


 妙に納得したものの、万が一ということもある。

 だから三日間は絶対に手を出すな。もし手を出したら突然のスタンピードを起こした張本人として吊るし上げる。

 という脅しを行って、相手方も納得したようだ。

 それでも攻略を開始したって、どういうことなんだろう。


「どうしても自分たちで倒したいがために、もし見つけたら手は出さず、ずっと追うそうだ」

「マイナス45度の中をか……マジか」

「その子たちは大分の冒険家の中でも若い子たちでね。全員二十歳なんだ」


 おぉ、若いな。冒険家になって2年ってことか。

 

 小畑さんによると18歳になる大分出身の若者たちがネットを介して集まり、戦闘系スキルを獲得したメンバーだけでグループ結成。

 階層ボスを倒してスキルをゲットした際に、良いスキルだった者だけを選抜していき──


「そして出来あがった最強メンバーって奴さ」

「うわぁー。合理的なんだろうけど、じゃあ途中で落選した連中は?」

「グループを抜けた者もいれば、上位グループの為に階層ボスの出現時間に張り付く者もいる」

「「うわぁー」」

「だからそのパーティーは最大12人プラス、支援メンバー15人いるんだ。ボスを見つけたら交代で追跡するそうだよ」


 でもボスを倒すのはパーティーのみ。だからスキルもパーティーメンバーしか獲得できない。

 なんだか嫌な感じだなぁ。






 翌早朝。

 図鑑転移を利用して、宇佐の地下一階へと移動。

 それから地上に出て、検証パーティーに会った。



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夜20時頃にもう1話更新します。

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